暖簾
暖簾(のれん)とは、店先あるいは部屋の境界に日よけや目隠しなどのために吊り下げる布のことである[1]。
概要
暖簾は商店の入り口などに掲げられ、屋号・商号や家紋などが染め抜かれていることも多い。元々は直接風や光が入るのを防いだり「寒さよけ」として取り付けられたのが始まりと考えられている。内部が外から露骨に見えにくくする目的も持ち合わせている。
戦前戦後の屋台・飯屋などの店では、客が出て行く時に食事をつまんで汚れた手先を暖簾で拭いていくという事もあり、「暖簾が汚れているほど繁盛している店」という目安にもなっていた。
また、派生的意味合いもある。暖簾は営業中の目安とされることもあり、閉店になるとまず暖簾を仕舞う(片付ける)。上記の意味から転じて屋号を暖簾名(または単に暖簾)と呼び、商店の信用・格式も表すようになった。暖簾には凡そ4.5cm位の棒に通し掛けておくが、複数の掛け穴があるチチ仕立てと一つの掛け穴がある袋仕立ての2種類が存在する。
銭湯・旅館など、入浴・温泉施設がある建物においては、「ゆ」などと書いた「湯のれん(ゆのれん)」を掛ける事がある。また、女湯と男湯の区別をわかりやすくするために「女湯」「男湯」などの暖簾を下げる事もある。
特殊な暖簾
派生的な意味
派生的な意味での暖簾の使用例としては以下の例がある。スキャンダル等が原因で信用・名声等を損なう事を「暖簾に傷が付く」という。奉公人や家人に同じ屋号の店を出させる(出すことを許可する)ことを暖簾分けと言う。
会計学での用法
日本の会計学の用語では、企業結合・企業買収の際に買収会社の投資額が被買収会社の受入純資産の額を上回った場合、その差額をのれんと呼ぶ。連結会計では、親会社の投資と子会社の資本を相殺消去した場合の消去差額を指す。無形固定資産であり、営業権とも言われる。日本の連結財務諸表原則では原則としてその計上後20年以内に、定額法その他合理的な方法により償却しなければならない(第四、三、2)。
法学での用法
法令上の文字として現れる暖簾については、会社法成立以前のかつての商法典では条文中に明文で「暖簾」の文字があった。この商法典上の「暖簾」は得意先関係、仕入先関係、営業の名声、営業上の秘訣などの事実上の関係を総合したもののことで一種の無形固定資産とされる[2]。これは営業権とほぼ同様に理解されている。現行法では会社法にも商法典にも「暖簾」又は「のれん」の文字は存在しないが、会社計算規則(2006年2月7日法務省令第13号、会社法施行日に施行)はひらがなののれんの文字がある(第二編 会計帳簿 第二章 資産及び負債 第二節 のれん など多数)。これは会計学の「のれん」と同義である。
脚注
- ↑ 意匠分類定義カード(C1) 特許庁
- ↑ 会社法 鈴木竹雄 株式会社弘文堂