教養課程と専門課程
教養課程(きょうようかてい)とは、大学(学部)で専攻にとらわれず、広く深く学術の基礎を学び人間性を涵養する課程であり、専門課程(せんもんかてい)とは、大学(学部または大学院)で特定の専門分野を学ぶ課程である。
日本
概要
従前の大学設置基準には、一般教育科目、外国語科目、保健体育科目、基礎教育科目、専門科目の5種が設定されており(基礎教育科目は必ずしも必修ではない)、大学はこの5種に属する授業科目を設定すればよかった。
専門課程とは専門科目の課程であり、教養課程とは専門科目以外の課程のことである。
また1960年代後半になると、大学によっては専門科目以外の教育を担当する教養部という組織を設置し、ここに入学後の学生を所属させ、必要単位を充足すると学部へ進む、という形をとったが、この形式をとった場合の、教養部在籍の段階のことも教養課程と呼ぶことがある。
教養課程には、多くの場合、前期の1〜2年間が充てられる。豊かかつ柔軟な人間性の涵養と、学問の世界に踏み込むにあたり広く深い見識を身に付けることで、専門課程や大学院等で学ぶための基本的素養・能力を養うことを目的とする。内容は主に語学(主に外国語、場合によって国語 / 日本語も含む)、論文の書き方やディスカッション手法、自然科学・人文科学・社会科学の各分野の概論や他分野との学際も兼ねた啓蒙的な導入、体育科目、大学での教育研究に必要な知識・技能の基礎演習など、多岐に渡っている。自然科学系統の科目では各種の実験が、人文科学と社会科学ではフィールドワークなどが課せられるケースも多い。また、最近では学部を問わずコンピュータの使い方を学ぶカリキュラムが組まれていることが多い。
専門課程には、多くの場合、後期の2〜3年間(6年制の学部では4〜5年間)が充てられる。学部や学科における専攻分野を学び、ほとんどの授業が専門教育科目に充てられる。ゼミナール、卒業研究、卒業論文といった大学における専門教育の基幹となる科目も専門課程に設けられている。
歴史
戦前の日本においては主として、旧制高等学校または大学予科が教養課程にあたり、旧制大学が専門課程に該当する教育研究を行っていた。
1974年に広島大学が教養部を総合科学部へ改組したのを皮切りに、大学設置基準が大綱化した1991年(平成3年)以降、教養部所属や教養課程担当の教員を他の学部へ移動したり、独立した教養部を4年制の学部へ改組したりする事例が増加した。これによって昨今では、教養課程と専門課程をはっきりと区分している大学が減る傾向にある。代わって、一般教育科目と専門教育科目を在学中にいつでも履修できるようにした、いわゆるくさび形教育課程(四年一貫もしくは六年一貫教育課程とも言う)が増えつつある[1]。
脚注
- ↑ 1991年以前でも、島根大学、高知大学、1973年に開学した筑波大学やその後に開学した新設医科大学等、教養課程を廃して、当初からくさび型教育課程を採用した大学もあった。なお教養部のない大学では、旧制高校の流れを汲む学部や教育学部が教養課程の授業を担当していた。
関連項目
- 教養部から転換した学部