御物
御物
- 御物(ぎょぶつ。「ごもつ」とも)皇室に伝来した所蔵品のこと。(本項で詳述)
- 御物(ごもつ。「ぎょぶつ」とも)室町幕府8代将軍足利義政が集めた唐物名物(絵画、工芸品)を東山御物(ひがしやまごもつ)、徳川家に伝えられた名物茶道具を柳営御物(りゅうえいごもつ、柳営は幕府または将軍の意味)と呼ぶ。
- 御物(おもの):天皇や貴人の食事のこと。
御物(ぎょぶつ)は、日本の皇室の私有品である絵画、書跡、刀剣などを指す用語。 「御物」の用例としては、室町幕府8代将軍足利義政の所蔵品を指して東山御物(ひがしやまごもつ)、徳川家伝来の名物茶道具を指して柳営御物(りゅうえいごもつ)などと言う場合があるが、単に「御物」と言えば皇室の私有物を指し、「ぎょぶつ」と読むのが通例である。
概要
第二次世界大戦以前には、東京・京都・奈良の帝室博物館(現・国立博物館)の所蔵品や奈良・正倉院の宝物なども「御物」であった。同大戦後は、日本国憲法第88条の規定に基づき、皇室の資産は原則として国有財産となり、皇居をはじめ御用地、御用邸、修学院離宮、桂離宮、埼玉鴨場などの土地建物、正倉院の宝物などはすべて国有財産(皇室用財産)となった。ただし、日本国憲法下においても、皇室伝来の美術品などは引き続き「御物」と呼ばれ、宮内庁侍従職が管理していた。
1988年の昭和天皇の崩御に伴い、翌1989年、「御物」の大部分は相続にともなって天皇から国庫に物納され、宮内庁管轄の三の丸尚蔵館に収蔵されている。三の丸尚蔵館所蔵品には狩野永徳筆の「唐獅子図屏風」、絵巻の名品として知られる「春日権現験記絵巻」「蒙古襲来絵詞」、伊藤若冲の代表作「動植綵絵」などが含まれる。これらの作品は、1989年以降は「御物」ではなく国有財産という位置付けになっている。
ただし、「三種の神器」をはじめとする、皇室にゆかりの深い品々や、歴代天皇・皇族の肖像、遺筆、儀式に用いる刀剣類などの皇室経済法7条にいう、「皇位とともに伝わるべき由緒ある物(『御由緒物』)」については国庫の帰属から除かれ、1989年以降も「御物」と呼ばれている。これらの御物は宮内庁侍従職の管理下にあり、おもに皇居内の山里御文庫と京都御所内の東山御文庫に保管されている[1]。
なお、御物は慣例的に文化財保護法による指定の対象外となっており、国宝や重要文化財などには指定されていない。
御物の例
昭和天皇没後も引き続き御物となっている美術品としては下記のようなものがある。
- 聖徳太子及び二王子像 法隆寺献納御物、1878年法隆寺から献納された。
- 後鳥羽天皇像 - 鎌倉時代
- 法華義疏 法隆寺献納御物
- 伊都内親王願文(いと ないしんのう がんもん)(伝橘逸勢筆)
- 桂宮本万葉集
- 太刀 無銘(小烏丸)
- 太刀 銘備前国友成(鶯丸)
- 太刀 銘国永(鶴丸)
- 短刀 銘吉光(名物平野藤四郎)
- 刀 無銘正宗(名物会津正宗)
- 太刀 銘一(名物道誉一文字)
他に、歴代天皇の肖像、筆跡(宸翰)などがある。
脚注
- ↑ 森暢平『天皇家の財布』(新潮社、2003)によると、天皇家所有の美術品のうち、3,180件が「国有財産」、580件が「御由緒物」に仕分けされ、残りの800件が引き続き「御物」にとどまったという(同書pp119 - 126)
参考文献
- 『週刊朝日百科』「皇室の名宝11・12」、朝日新聞社、1999
- 森暢平『天皇家の財布』、新潮社、2003