広河隆一
テンプレート:出典の明記 テンプレート:Infobox journalist 広河 隆一(ひろかわ りゅういち、1943年9月5日 - ) は、日本のフォトジャーナリスト。イスラエル、パレスチナの双方に多くの人脈と知人を持ち、パレスチナ問題を取材し続けている。チェルノブイリを事故以来25年以上に渡って取材し、救援活動を行っている。福島第一原発事故の後は、主に日本の原発や放射能に関する諸問題を取材するかたわら、福島の子どもの救援活動を開始している。
経歴
大阪府立生野高等学校、1967年早稲田大学教育学部卒業後イスラエルへ渡航した。イスラエル北部のキブツ・ダリヤに滞在し、そこでヘブライ語を学習した。 イスラエル渡航当初の広河は共産主義に対して親和的な政治的態度をとり、「共産主義的な」キブツに対してアタッチメントを有していたが、広河がイスラエルへ渡航した1967年には第三次中東戦争が勃発してイスラエルがその戦争に大勝利を収めたことにより、イスラエルによるパレスチナ人に対する過酷な人権侵害を知るようになり、親パレスチナ的な態度をとるようになった。広河はイスラエルにおいて「マツペン」という反シオニスト的な政治団体で活動を行っていた。また、1982年に勃発した南レバノン軍によるパレスチナ難民の虐殺であるサブラー・シャーティーラーの虐殺を含めた第一次レバノン戦争に関する取材を行い、よみうり写真大賞を受賞した[2]。
広河は日本帰国後にフォトジャーナリスト、作家及びイスラエルや原発に対して批判的な市民活動家として活動を開始した。立教大学において非常勤講師を務める。講談社の「DAYS JAPAN」に、イスラエルのビジネスマンシャウル・アイゼンバーグに関する記事や、ダイヤモンド取引の裏側の取材、チェルノブイリの現状、731部隊などに関する報道、ルポ写真などを掲載。再創刊した「DAYS JAPAN」発行・編集長、「チェルノブイリ子ども基金」代表、パレスチナの子供の里親運動顧問、日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)世話人代表等を歴任。全国各地で講演を行う。
広河は日本における中東ジャーナリストとして先駆的な役割を果たすとともに、次世代のジャーナリストや市民活動家の養成においても極めて重要な役割を果たしている。具体的には、中東ジャーナリストの土井敏邦は広島大学においてパレスチナ問題に関する卒業論文を執筆する際に、広河は事実上の指導教官としての役割を果たすとともに、広河は広島大学卒業後に経済的に困窮していた土井をPLO駐日代表部による中東関連に関する「フィラスティン・びらーでぃ」[3]という月刊誌の記者として雇用することにより、土井を中東ジャーナリストとして成長させるきっかけをもたらした[4]。また、関節リウマチという重度の病気から奇跡的に回復した古居みずえは広河の写真展を見たことがきっかけとなって、パレスチナにおける女性を対象として精力的に取材するフォトジャーナリストとして活動を行っている[5]。そして、広河はパレスチナに渡航したことがきっかけでイスラエルに批判的な市民活動家になった森沢典子の活動を森沢の著書を推薦し、広河によるナクバに関する映画の制作に森沢を参加させ、森沢に活動する機会を提供することによって支援している。特に注目すべきこととして、2004年にイラク人質事件が発生した際に、広河は自作自演も疑われている同事件を引き起こして国民的に激しい批判を受けた高遠菜穂子らを擁護し[6]、広河は高遠とともに講演活動を行うことにより、高遠をイラクを支援する市民活動家として成長させる重要な役割を果たしている。
「九条の会」傘下の「マスコミ九条の会」呼びかけ人を務めている[7]。
2012年、かつて代表を務めた「チェルノブイリ子ども基金」の経験を活かし、福島県の子どもたちを福島第一原子力発電所事故の影響の少ない沖縄県の久米島において保養させるプロジェクト「NPO法人沖縄・球美の里」を発足させた。
受賞歴
- 第一次レバノン戦争とそれに伴う西ベイルートのサブラー・シャーティーラー虐殺事件に関するフォトジャーナリストとしての報道で、1982年よみうり写真大賞、1983年IOJ国際報道写真大賞を受賞。
- チェルノブイリ原発事故についての取材で1989年講談社出版文化賞、1993年産経児童出版文化賞を受賞。
- パレスチナ問題、チェルノブイリ原発事故問題の報道活動に対して、2003年土門拳賞を授与された。
著書・編著
- 『ユダヤ国家とアラブゲリラ』 草思社、1971年
- 『パレスチナ幻の国境』 草思社、1976年
- (パレスチナ・ユダヤ人問題研究会と共編)『ユダヤ人〈1〉ユダヤ人とは何か』『ユダヤ人〈2〉ダイヤモンドと死の商人』 三友社出版、1985年
- 『破断層』 講談社、1987年。 - レバノンのパレスチナ人を題材とした小説
- 『核の大地』 講談社、1990年。
- 『パレスチナ/瓦礫の中のこどもたち』 徳間書店、1991年。
- 『ニーナ先生と子どもたち』 小学館、1992年。
- 『中東共存への道』 岩波書店、1994年。
- 『チェルノブイリと地球』 講談社、1996年。
- 『ナターシャ チェルノブイリの歌姫』 岩崎書店、2001年。 - ナターシャ・グジーについての取材本
- 『パレスチナ 新版』 岩波新書、2002年。
- 『暴走する原発』 小学館、2011年。
- 『新・人間の戦場』デイズジャパン 2012年
ほか多数
共著
- 『ダイヤモンドと死の商人』 三友社出版、1988年。
- 『子どもに伝えるイラク戦争』 小学館、2004年。 - 石井竜也との共著
映画作品
- 『パレスチナ1948・NAKBA』2008年3月22日公開 (監督・撮影・写真)