岡部元信
テンプレート:基礎情報 武士 岡部 元信（おかべ もとのぶ）は、戦国時代の武将。今川家の家臣。後に甲斐武田家の家臣。
岡部久綱の子。岡部正綱の弟（親子説もあり、同族だが親子兄弟ではないとする説もある）。通称は五郎兵衛、官位は丹波守。名（諱）は元信のほか、長教（ながのり）、元綱（もとつな）、真幸（さねゆき）とも。このうち、元信・元綱の「元」の字は、今川氏の家臣だった間に主君の今川義元から偏諱を与えられたものであり、真幸も、義元の子・氏真から重ねて偏諱（｢真｣の字）を賜う形で名乗ったものである[1]。
岡部家の本貫は駿河志太郡岡部（現在の静岡県岡部町）で、朝比奈信置や孕石元泰と並ぶ駿河先方衆の1人である[2]。
生涯
今川家の時代
祖父の岡部親綱は今川氏の重臣であり、今川義元の家督相続に重要な役割を果たした。元信自身も遠江および三河の平定に大きく貢献した武将の1人。天文17年（1548年）の第2次小豆坂の戦いでは筋馬鎧に猪の立物をつけて力戦し、今川軍の勝利に貢献した[2]。天文18年（1549年）の安祥城の戦いでも戦功を挙げ[2]、今川義元の命令で尾張の鳴海城在番となる。
永禄3年（1560年）、桶狭間の戦いでは鳴海城を拠点に織田勢と戦いを繰り広げた。主君・今川義元が織田信長に討たれた後も抵抗し続け、信長が差し向けた織田軍を悉く撃退し、主君・義元の首と引き換えに開城を申し入れ[3]、信長はその忠義に感動して義元の首級を丁重に棺に納めた上で送り届けたと伝わる[2]。元信は義元の棺を輿に乗せて先頭に立て、ゆうゆうと鳴海城を引き払った[2]。
駿府へ帰還する途次、戦功の無いまま帰るを良しとせず刈谷城を100余の手勢で攻撃し、水野信近を討ち取り、城を焼き払った[2]。この元信の奮戦を氏真は喜び、6月8日付で元信に所領の加増と「忠功比類なし」と褒め称えた感状を与えている[2]。
義元の没後は氏真に仕えたが、永禄11年（1568年）12月、武田信玄の駿河侵攻によって氏真が駿府を追われると降伏して武田信玄に仕えた[1]。
甲斐武田家の時代
元亀4年（1573年）4月に武田信玄が死去した後は、嗣子の勝頼に仕えた。天正2年（1574年）6月に勝頼が遠江高天神城を落とすと（高天神城の戦い）、その城将に任命された[1]。
天正3年（1575年）5月、織田信長・徳川家康連合軍の前に武田勝頼が長篠の戦いで大敗すると、家康の遠江侵攻が活発になるが、元信は家康の侵攻を何度も阻み、勝頼はその戦功に報いるために元信に対して所領の加増を行なった[4]。
家康は正攻法で元信を倒すのは難しいと考え、天正8年（1580年）10月から高天神城の周囲に多くの付城や砦を築き、刈田を行なって兵糧攻めに持ち込んだ（第二次高天神城の戦い）[4]。元信は勝頼に後詰を求めたが、勝頼は北条氏政と対峙していて後詰を送れなかった[4]。そのため天正9年（1581年）3月になると高天神城の兵糧は底を尽き、城兵は草木をかじって飢えを凌いだ[4]。元信は覚悟を決めて残った諸将を集めて軍議を開き、「この城に入った時から生きて帰ろうとは考えていない。信玄公・勝頼公の恩義に報いるために打って出る」と叫んで覚悟を表明した[4][5]。そしてその日の夜、元信は城兵に酒を与えて最後の訣別の宴を開いた[5]。
3月22日、元信は残った城兵を率いて徳川軍の大久保忠世の陣に斬り込みを駆けた[5]。迎撃したのは忠世の実弟の忠教で、忠教はまさか元信が先頭に立って突撃して来たとは思っていなかったため、最初の太刀をつけると後は家臣の本多主水に任せて他の敵の追討に向かった[5]。主水は元信に組討ち勝負を挑み、元信は果敢に応戦したが急坂を転げ落ちたところを討ち取られた[5]。享年に関しては70歳に近かったと推測されている[5]。
主水は討ち取った時はまさか敵の総大将とは思っておらず、首実検で元信と分かって驚愕したという[5]。また大久保忠教は「城の大将にて有ける岡部丹波をば、平助が太刀づけて、寄子の本多主水に打たせけり。丹波と名のりたらば、寄り子に打たせましけれども、名のらぬうへなり」と『三河物語』で大敵を逸した悔しさを述べている[5]。
元信と共に玉砕した城兵は730余に及んだ[5]。家康は自らを何度も苦しめた元信を討ち取った事を喜び、その首級を安土城の信長の許に送り届けたという[5][6]。
脚注
註釈
出典
参考文献
- 書籍
- 史料
- 『三河物語』
