審判員 (サッカー)
サッカーにおける審判員(しんぱんいん)はサッカー競技の審判を行う者である。
通常のゲームにおいては主審1人、副審2人で行われる。これ以外に競技会規定に基づいて任命される第4の審判員を1人配置する場合がある(追加副審(第5の審判員)を置く場合もある)。民間資格として日本サッカー協会の「サッカー公認審判員」がある。
目次
概要
- 主審
- 競技規則を施行し、競技規則の範囲におけるすべての権限を有する。ルールの原文である英語表記ではReferee (レフェリー)となる。フィールド内を原則的には仮想対角線上付近を移動する。8人制サッカー競技では、主審のみで行われる場合もある。(ただし交代要員兼記録員の予備審判員は設定可能)。
- 副審
- フィールドのタッチライン外側(主審が原則的には移動しない側の仮想対角)半分(ゴールラインからハーフウェーライン)のサイドに各1名配置され、主審を援助する。ルールの原文である英語表記ではAssistant referee(アシスタント・レフェリー)となる。8人制サッカー競技では、副審は置かれない事もある。かつては線審と呼ばれていた[1]。
- 追加副審
- 現行の2名体制で進行する以外に大会によっては副審4人制(または審判5人制という)を導入していることがある。2012年7月5日にスイス・チューリッヒのFIFA本部で行われたサッカーのルールを決める唯一の機関である国際サッカー評議会(IFAB)特別会議で、世界で初めてゴール機械判定技術(ゴールライン・テクノロジー。略称GLT)採用が決定されたが(GLTは設置費用だけでも1600万程度~2548万円程度の費用が必要であり、その費用は大会主催者が負担することになる為、GLTを採用するかどうかは大会主催者が決定する)、同時に、2011-12シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ及びUEFAヨーロッパリーグ、2012年欧州選手権で試験導入されたゴール脇に1人ずつ置く追加審判採用も決定した[2]。追加審判に関しては、2013/2014年版サッカー競技規則から記載される[3]。テンプレート:Mainタッチライン外側でジャッジする従来の副審2名と違い、追加審判は両ゴール裏に配置されペナルティエリアでの反則を重点的にジャッジする。以前から世代別の大会では試験的に導入していたこともあるが、2009年に新たに始まったUEFAヨーロッパリーグ(旧・UEFAカップ)で初めて年代を問わない大会で導入された。一部ではGoal Referee(ゴール・レフェリー)と呼ばれ、各国のサッカーファンの間でGoalferee(s)(ゴルフェリー)という俗称がある。「追加副審」という呼称はヨーロッパリーグ中継での呼称であり、この審判員制度が導入されていない日本では明確な名称が定着していない。倉敷保雄アナはこの呼び名としてAdditional Assistant Referee(アディッショナル・アシスタント・レフェリー)という言葉をよく使用する。
- 第4の審判員
- 3名の審判(主審1、副審2)が職務続行不可能な場合にその代わりを務める。このうち第4の審判員がどの役割を務めるかは事前の協議、大会規則に依る。また、選手交代時にボードを掲げたりロスタイム(アディッショナルタイム)の時間をボードで掲げる。ルールの原文である英語表記ではFourth official(フォース・オフィシャル)となる。副審4人制においては第6の審判員と呼ばれる。
- 第5の審判員
- ワールドカップ・ドイツ大会の大会規則で採用された。同大会では、第4の審判員を補佐するほか、副審が職務続行不可能な場合にその代わりを務めるとされた。ルールの原文である英語表記ではFifth official(フィフス・オフィシャル)となる。上記同様に副審4人制においては第7の審判員と呼ばれる。
ルール上の規定
サッカーのルールであるLaws of the Game(日本サッカー協会では「サッカー競技規則」では第5条に主審の、第6条に副審の規定がある。これ以外に条項外の規定として第4の審判員の規定と、主審および副審の合図についての規定がある。さらにこれ以外にFIFAからの追加指示として「主審、副審ならびに第4の審判員への追加指示」が存在する。
主審
- 競技規則を施行。
- 副審、第4の審判員と協力して試合をコントロールする。
- 試合で使用する全てのボールがその規定を満たしている事を確認する。
- 競技者の用具がその規定に合致している事を確認する。
- タイムキーパーを務め試合の記録をとる。
- 競技規則のあらゆる違反に対して、主審の判断により試合を停止、中断、中止する権限を持つ。
- 外部から妨害があった場合、主審の判断により試合を停止、中断、中止する権限を持つ。
- 競技者が負傷した際に、これを重傷と判断した場合は、試合を中断して競技者をフィールドの外に運び出させる。負傷した競技者は試合が再開された後に試合に復帰できる。
- 競技者が負傷した場合に、これを軽症と判断した場合は、適当と判断されるまで試合を継続させる。
- 出血した競技者をフィールドの外に運び出させる。出血した競技者は、止血が主審に確認された後、主審の合図で試合に復帰できる。
- アドバンテージをとる。アドバンテージが消失した後のファールを判断する。
- 競技者の反則行為に対して警告、退場処分を施行する。これらは直ちに施行しなくてはいけないものではなく、適当と判断された時期に行われる。
- チームスタッフに対して、警告、退席処分を施行する。(チームスタッフにカードを出すことは出来ない)
- 主審が見ていなかった出来事に関して副審から助言を受ける。
- 無認可者のフィールド進入を阻止する。
- 試合の中断、再開、終了の権限。
- 関係機関に試合報告書を提出する。
- その他の決定事項。
- 主審は最終決定者である。
- 主審、副審、第4の審判員は法的責任を問われない。
- 得点の判断、試合の結果の判断もゆだねられる。
副審
- タッチライン付近のフィールドに入ることができる。
- 以下の事項に対して旗で合図を行う。ただし、判定の最終決定者は主審である。
- その他の規定
- 副審は主審が職務続行不可能な場合、主審を務める。副審は2人存在するため、事前にどちらが主審を務めるのか決めておく必要がある。(ただし、第4の審判員がいる場合は競技会規定に則る。)
シグナル
以下、主なシグナル[4](ただし、以下のは一例であり、慣例で成り立っているシグナルもあるので、それらについては試合前に事前に主審と協議する必要がある)
- ファール判定
- 主審が見えない位置でプレイヤーによるファールがあった場合、旗を上に出し旗を左右に振り、主審が笛を吹いた後にファールを行ったチームの陣を旗で指す。
- ゴール判定
- 得点を確認後、そのままインプレーのように見える場合、旗を上にあげて主審に合図をする。主審が笛を吹いた後にタッチラインに沿ってハーフウェーラインに向かって走る。(他には走らずにセンターサークルを旗で指すなどもあるが協会発行の規則には掲載されていない)
- 壁コントロール
- 主審よりも副審の方が近い位置で攻撃側のフリーキックがあった場合、守備側の壁に対して9.15m離れるように旗を使わずに指示する。
- コーナキック時
- 守備側選手がボールがインプレーになる前にコーナーアークから9.15m以内にいる場合[5]、壁コントロールと同じように9.15m以上離れるように指示する。
第4の審判員
- この審判を配置するかどうかは競技会ごとの規定による。配置されない場合もある。
- 常に主審を支援する。
- 主審が職務続行不可能な場合、副審か第4の審判員のいずれかが主審を務める。この点については、事前に明確に決定しておく事が求められる。
- 試合中の競技者の交代に対応する。
- 試合中のボールの交換を管理する。
- 交代要員の用具をフィールドに進入する以前に確認する。
- その他、ピッチ外の問題に対応し、主審および副審が試合に集中できる環境を作る。
- アディショナルタイムをフィールドに向けて提示する。
資格
資格には大きく分けると二種類あり、各国・地域のサッカー協会・連盟管轄の「サッカー公認審判員」(更新制)とFIFA(国際サッカー連盟)管轄の「国際サッカー審判員」(更新制)がある。FIFAおよびその傘下加盟国協会が主催する試合の審判を行うには、公認審判員の資格が必要となる。日本サッカー協会および都道府県協会が主管となる試合においては、日本サッカー協会審判委員会が策定したカリキュラムに則った「審判員資格認定講習会」を各所管協会で受講し認定してもらう。この公認審判員は1〜4級のランクがあり下位の資格を取得していることが昇格の前提となる。また、加盟国協会の審判資格を保有していようと、FIFA(国際サッカー連盟)が主管となる国際試合などにおいては、加盟国協会が選抜し国際審判員へ資格登録をしている者の中から、FIFAが指名した者のみが国際試合の笛を吹くことが出来る。
北海道、東北、北信越、関東、東海、関西、中国、四国、九州の9ブロックに各地域サッカー協会があり、その傘下に各都道府県別に各都道府県サッカー協会がある。日本サッカー協会も含め協会内には審判委員会が設けられ、それぞれ管轄する審判員の上級審判員への推薦を審議する。
なお、2007年に日本サッカー協会の規約から審判員の『定年による引退』条項は削除された。
4級審判員
- 各都道府県サッカー協会が認定(年に数回の講習会にて)。
- 受検資格 : 満12歳以上で心身ともに、健康な者。
- 検定内容 : 講習のみ
- 担当可能大会
都道府県サッカー協会傘下団体の主審・副審。
認められた場合、都道府県サッカー協会の副審。
- 定年規定 : なし
3級審判員
- 各都道府県サッカー協会が認定(年に数回の講習会にて)。
- 受検資格
4級取得者で一定の実績を積んだ者。
(2011年に審判員および審判指導者資格取得の年齢制限の撤廃が承認され、満15歳以上条件が撤廃)
4級で19試合以上(主審を半数以上)経験した者
- 検定内容 : 筆記テスト、体力テスト、実技テスト(任意)。(実技テストは4級審判員としての実績により免除あり)
- 担当可能大会
都道府県サッカー協会および協会傘下団体の主審・副審。
(第2種年齢以下(18歳以下)に該当するユース審判員は原則として、18才以下の試合の主審をする)
認められた場合、地域サッカー協会の副審。
- 定年規定 : なし
2級審判員
- 各地域サッカー協会が認定(年に数回の講習会にて)。
- 受検資格
- 3級取得後2年以上で、一定の実績を積んだ者。
- 各都道府県サッカー協会の推薦が必要。
- 検定内容 : 筆記テスト、体力テスト、実技テスト。
- 担当可能大会
- 地域サッカー協会、都道府県サッカー協会および協会傘下団体の主審・副審。
- 認められた場合、日本サッカー協会の副審。
- 定年規定 : なし
女子1級審判員
- 日本サッカー協会が認定(年に数回の講習会にて)。
- 受検資格
- 2級取得後2年以上で、実績のある39歳以下の女性(受検年の4月1日現在)。
- 各地域サッカー協会の推薦が必要。
- 検定内容 : 筆記テスト、体力テスト、実技テスト。
- 担当可能大会
- 日本サッカー協会(女子の大会)の主審・副審、日本サッカー協会(2〜4種)の副審。地域サッカー協会、都道府県サッカー協会および協会傘下団体の主審・副審。
- 認められた場合、日本サッカー協会(1種)の副審。
- 定年規定 : なし
1級審判員
- 日本サッカー協会が認定(年に数回の講習会にて)。
- 受検資格
- 各地域サッカー協会の推薦が必要。
- 検定内容 : 筆記テスト、体力テスト、実技テスト。
- 定年規定 : なし
Jリーグ担当審判員(主審・副審)
- 選考資格 : 1級審判員の中より実績により推薦(毎年)。協会承認による例外もある。
- J1の主審、J2の主審、Jリーグ(J1、J2)の副審が決定される。
- 第四の審判員については2級以上の審判員が担当する。
- Jリーグ及びJFLの審判報酬はプロ、アマ審判に関係なく、J1主審が12万円、J1副審が6万円、J2主審が6万円、J2副審が3万円、JFL主審が2万円、JFL副審が1万円である。
国際審判員(主審・副審)
- 選考資格 : 1級審判員の中より実績により推薦(毎年)。または女子1級審判員の中より実績により推薦(毎年)。英語必須
- 定年規定 : 定年45歳。
用具・用品
テンプレート:Double image 試合に臨むにあたり、以下の物を主審・副審を問わず準備する。
- 警告・退場カード(イエローカード、レッドカード)
- 異なるポケットに入れる。予備を持って望むのが望ましい。
- グリーンカード(グリーンカード制度導入大会時)
- 教育的側面からポジティブな指摘をし、奨励されるプレーへの提示に使用される(主審が使用)。
- 時計
- ストップウォッチ機能のついたもの。左右両腕にそれぞれ着用するのが望ましい。
- ホイッスル
- 音が出なくなったときのために同じ音色の物を2つ持つ。複数ピッチのフィールドに備えて2種類以上の音色が準備できるとなお良い。
- トスコイン、記録用紙、筆記具
- 副審であっても、スライドして主審を務める場合に必要となるため、準備しておく。延長戦になるとコイントスも行う。雨天時に備え、筆記具は鉛筆が望ましい。
- 試合では使わないが、常に携帯するもの。
- 審判証
- サッカー競技規則(ルールブック)
- 以下、副審のみが持って試合に臨む。
- アシスタントフラッグ
- 日本においては以下の物が支給される。
- ワッペン (各級別)
- サッカービデオ
審判を務める際は、上記(のうち審判証、サッカー競技規則、 サッカービデオを除く)と下着のほか、大会等で規定された審判服上下、ソックス、シューズ以外は身に付けることはできない(選手と同じく、帽子、眼鏡、指輪等のアクセサリーも不可。ただし大会や試合によっては、選手に危害を及ぼさないと認められれば、帽子やある程度の保護具が着用できる場合もある)。
主な審判員
日本
カッコ内はJ1主審での通算100試合の到達年。
- 岡田正義(1999)
- モットラム(2000)
- 梅本博之(2000)
- 太田潔(2001)
- 下村昌昭
- 布瀬直次(2003)
- 上川徹(2003)
- 砂川恵一(2003)
- 片山義継(2003)
- 松村和彦(2005)
- 前島和彦
- 柏原丈二(2006)
- 奥谷彰男(2006)
- 松尾一(2010)
- 高山啓義(2010)
- 西村雄一
国際
特記事項
- サッカーのルールは、実は国際サッカー連盟(FIFA)ではなく、国際サッカー評議会(IFAB)が決めている。 サッカーのルールは、毎年2月か3月、通常では2月末ごろ開催されるIFAB年次総会で毎年細かく変更されており、近年では更に6月か7月にIFAB特別会議が開かれ、2月か3月の年次総会でも結論が出なかった内容などについて検討され、指示や方向性(通達)を改めて示すようになっている。改正後、「新競技規則(新ルール)」は5月末までにFIFAからFIFA加盟各国のサッカー協会に通達され、7月1日から全世界で施行される(国際試合は7月1日から有効。但し、7月1日までにその年のシーズンが終了していない大陸連盟及び加盟協会は、その施行を次のシーズン開始まで延期できる。日本では例年7月1日以降のしかるべき日、遅くとも8月中には施行している)。 そのため、サッカー審判員は毎年、更新講習会を受ける必要がある(受けなかった場合は審判資格を失効する)。
- サッカーの審判中などでの保険として審判員傷害保険がある。
- Jリーグでは副審が持つフラッグにボタンが付いている。このボタンを押すと、主審が腕に巻いているバイブレータが振動して、フラッグが上げられたことが分かるしくみになっている。日本の審判員がオフサイドに敏感なのはこのためである。また、第4審判用の送信機もあり、副審と同じように主審にコンタクトを取りやすくなっている。
関連項目
脚注
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ FIFA、GLT導入を正式決定 クラブ・ワールドカップから本格導入-goal.com日本語版2012/7/6
- ↑ 2013 年競技規則追加改正について(13.06.25)-日本サッカー協会公式HP2013/6/25
- ↑ サッカー規則 2011/2012 日本サッカー協会発行
- ↑ サッカー規則第17条に「相手競技者は、ボールインプレーになるまで、コーナーアークから9.15m(10ヤード)以上離れなければならない」という記述がある。