夢から醒めた夢

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夢から醒めた夢』(ゆめからさめたゆめ)は、劇団四季により1987年に初演されたミュージカル作品。

原作は赤川次郎による、角川文庫から出版された同名の子供向け絵本である。

概要

当初はニッセイ名作劇場『夢からさめた夢』として製作された子供ミュージカルであったが、演出の一部及び振付の変更が行なわれ、1988年にファミリーミュージカル『夢から醒めた夢』となる。その後もリニューアルを重ね、現在は一般作品として扱われている。2000年の福岡公演より衣装や美術も大幅に変更され、ロビー・パフォーマンスも誕生した。現在も断続的に繰り返し上演されている。2006年11月1日に通算公演回数が1000回に達した。

元は『ユタと不思議な仲間たち』と『ミュージカル李香蘭』の2作品と併せて「オリジナル三部作」と呼ばれていた。しかし、『―李香蘭』は『ミュージカル南十字星』初演に伴い2005年以後「昭和三部作」へ組み入れられたことにより、「オリジナル三部作」という枠組みはほとんど利用されていない。2006年公演から「劇団四季(の)オリジナルミュージカル」とキャプションされている。

ストーリー

不思議な事が大好きで、好奇心旺盛な女の子「ピコ」は遊園地のお化け屋敷で、本物の幽霊の女の子「マコ」と出会う。交通事故で亡くなったマコは、一人で悲しみから抜け出せずにいる母親をなぐさめたいと思い、一日だけピコと入れ替わって欲しいと頼む。マコの願いを受け入れたピコはマコと入れ替わり、霊界空港へと旅立つ。

霊界空港では、「光の国」に旅立つための定期便ロケットを待つ人々と、そこで働く職員たちがいた。ただ、「光の国」に行けるのは、白いパスポートを持つ者のみ。生前に悪事を働いたり周りを不幸にしてきた人たちはグレーのパスポートを持ち、恩赦の日が来るまでこの霊界空港でボランティア。そんな中、ピコがマコから預かっていた白いパスポートがいつの間にか黒に。黒いパスポートを持つ者は地獄行きとなるため、ピコは気を失ってしまう。

ピコのパスポートをすり替えていたのはメソだった。他人の白いパスポートで光の国へ行こうとしていたところをロケット搭乗寸前に取り押さえられるメソ。他人のパスポートを盗んだ罪でグレーから黒いパスポートに変わってしまっていたのだが、エンジェルとデビルの機転でメソは白いパスポートを拾ったことにされ、ピコはパスポートをなくしたということで新しいパスポートが発行されることになった。ところがマコの本名がわからない。職員総出で日本中の「マコ」から「赤川マコ」の名前を探し当て、白いパスポートを持ってようやくマコの元へ向かうピコ。

マコはお母さんとふたり公園で、マコは光の国へ旅立つこと、ずっとお母さんを見守っていくこと、だからもう悲しまないで欲しいことを話していた。そこへ現れたピコ。マコのお母さんはマコを連れて行かないで欲しいと懇願する。しかしここでマコと入れ替わらなければ今度はピコが死んでしまう。心の葛藤で揺れるピコ。マコは自分の母と同じ悲しみをピコの母に与えてはならないと説得し、ふたりは元に戻る。マコは光の国に行き、ピコはまた普通の生活に戻る。

キャラクター

  • ピコ
好奇心旺盛で元気な女の子。お化けや、生前・死後の世界などにも興味がある。マコと入れ替わり霊界空港へ行く。
  • マコ
幼いときに父親をなくして以来、母親と姉妹のように楽しく過ごしていたが、突然交通事故で亡くなってしまう。悲しみに沈んだ母親を勇気付けたいと思い、自分と入れ替わってくれる人を探してさまよっていた。母親思いの優しい女の子。本名は、赤川マコ。
  • マコの母
マコを失い、悲しみにくれているお母さん。
  • メソ
以前は「大学受験に失敗した事を苦に自殺した男の子」という設定だったが、2007年7月7日に行われた福井公演からは「いじめを苦に自殺した男の子」と現代向けに改められた。「自殺なんて贅沢」ということで、グレーのパスポートを貰い霊界空港で働いている。
  • デビル
霊界空港の新しく入った役人で、オカマ口調。性悪説の思想を唱えるが、反対に優しい面も持っている。
  • エンジェル
霊界空港の役人。デビルとは対照的に性善説の思想を持っている。
  • 部長
上演初期は「高度経済成長の波に乗りひたすら仕事に懸命で過労死した」という設定だったが、現在は日本の労働状況の変化などに伴い、「不景気でリストラに遭い力尽きて死んだ」という設定になっており、テーマ曲も全く違う歌となっている。家族を省みなかったせいで、グレーのパスポートを貰い霊界空港で働いている。
  • 暴走族
バイク事故で亡くなった。グレーのパスポートを貰い霊界空港で働いている。
  • ヤクザ
他のヤクザと争って殺された。グレーのパスポートを貰い霊界空港で働いている。
  • 老人
医者だったが風邪をこじらせて亡くなる。死ぬ間際まで、自分の身よりも患者達の身を優先し、人の為に尽くしていた。白いパスポートを受け取ったが、妻が霊界空港に来るのを待ち、光の国に行かないでいる。
  • 老婦人
旦那さんを先に亡くしたおばあさん。霊界空港で旦那さんと再会。
  • 職員たち
霊界空港の職員たち。デビルとエンジェルの部下。
  • 子供たち
さまざまな地域で戦争・紛争・飢餓・コレラなどで亡くなった子供たち。上演当初から殆ど変わっていない設定は、世界の情勢の進歩の無さを表している。皆、白いパスポートを受け取る。
  • 夢の配達人
人々に“夢”を配って歩いている男。ピコ、そして観客を物語へ導く。

スタッフ

歴代主要キャスト(キャスティングのみも含む)

ミュージカル・ナンバー

  1. 夢を配る
  2. いつも夢見て
  3. 遊園地のパレード
  4. 冷たい手
  5. マコの物語
  6. 神様お願い
  7. お願いピコ
  8. 二人の世界
  9. ここは霊界空港
  10. ぼくのいきさつ
  11. メソの悲しみ
  12. メソの過ち
  13. 夢を配る(リプライズ)
  14. ぼくのいきさつ(リプライズ)
  15. 煉獄のおいらたち~部長
  16. 煉獄のおいらたち~暴走族
  17. 煉獄のおいらたち~ヤクザ
  18. 誰でもないあたし
  19. あなたのために
  20. マコを捜せ
  21. 愛をありがとう
  22. 素晴らしい一日
  23. 行かないで
  24. 二人の世界(リプライズ)

上演記録

その他

演出変更

  1. 旧演出では「お化け屋敷」のシーンでガイコツダンスと呼ばれる場面とピコが歌う歌が1曲あった。新演出変更に伴い、場面削除。
  2. 運動器具であるラートが利用されるようになった。
  3. 書類検索シーンで、かつては図書検索方式だったものがパソコン検索が併用されている。
  4. 霊界空港の職員は男性のみだったが、女性も加わった。
  5. 部長に関する設定やテーマ曲が大きく変わっている。

ロビー・パフォーマンス

2000年の福岡公演の時より、「劇場に入った時から夢の世界を楽しむことが出来るように」との意図から、一幕開始前に劇場前及びロビーにおいて、役者によるパフォーマンスが行われている。通常、劇団四季の公演では客席内の写真撮影は、上演中はもちろん上演時間外においても禁止されているが、パフォーマンス中は写真・ビデオ撮影が許される。各パフォーマンスは以下の通りである(公演地により変更あり)。

  • 足長ピエロ - 劇場前に竹馬を利用したピエロが登場する。
  • ハンドベル演奏 - 小人三人組によるハンドベル演奏。
  • タップダンス - オモチャの兵隊によるタップダンスの披露と、客に対するタップ指導。 
  • 輪投げコーナー - 輪投げに成功すると粗品がもらえる。
  • 手回しオルガン - 手回しオルガン奏者が劇場内を回遊する。
  • 謎の人物
  • マリオネット

など

原作との相違点

  • ピコは原作ではピコタンという名前だったが、ミュージカルとして上演するにあたり、ピコに変更になった。また、マコには名前はなく、ミュージカル用に名前が付けられた。
  • マコの死因が原作では病死となっているが、ミュージカルでは交通事故死となっている。

CD

これまでに2枚のCDが発売されている。

  • 夢から醒めた夢
  • 夢から醒めた夢 2002年版

外部リンク