地球防衛軍 (映画)

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地球防衛軍 』(ちきゅうぼうえいぐん、英題:The Mysterians)は、1957年に公開された、東宝制作の特撮SF映画。同時上映は『サザエさんの青春』。

概要

特撮ものとしては初めてワイドスクリーン版東宝スコープ[1]を採用した作品。

テンプレート:要出典範囲[2]、巨大ロボットが登場する日本初の映画[3]テンプレート:要出典範囲

1978年3月18日公開の「東宝チャンピオンまつり」でリバイバル上映されたほか、2008年7月キネカ大森の円谷英二特集で複数回リバイバル上映された。1959年にはMGM系で全米公開もされた[3]

あらすじ

のどかな富士山麓の村祭りの夜、地中から炎が噴出するという奇怪な山火事騒ぎが起こる。騒ぎの中、天体物理学者の白石亮一が失踪した。白石の同僚で親しい友人であった渥美譲治は残された白石の論文「ミステロイドの研究」を安達賢治郎博士に届けるが、その内容は途中で終わっていた。その後、白石が住んでいた村に山崩れが起こる。報告を受け、調査に向かった渥美の前に巨大な怪ロボット(モゲラ)が出現した。火炎放射器機関銃ロケット砲の攻撃すらものともせず、村落を次々に破壊する怪ロボットを、出動した防衛隊は鉄橋ごと爆破するという手段で、ようやくその進行を止めるのだった。

ここに至り、怪ロボットが白石報告書にある異星文明の仕業と推測した安達博士は白石報告書を公表。富士五湖で円盤状の飛行物体が頻繁に目撃されていたことから富士山麓に調査団が派遣された。そこへ突如として巨大なドーム状の物体が出現した。巨大ドームの主は、自らをミステリアンと名乗り、調査団の代表5名をドーム内に招き入れた。ミステリアンは調査団に対し、ドームを中心に半径3キロの土地の割譲と地球人の女性との結婚の自由を要求してきた。5千年前、自らの星ミステロイドを核戦争で失ったミステリアンは、宇宙を放浪の末、地球にやってきたのだ。

すでに数人の女性を拉致し、地球側の出方次第では攻撃も辞さないというミステリアンの要求に疑惑を感じ、これを拒否した防衛隊は通常兵器を中核とした戦力、野戦砲・戦車隊・ジェット戦闘機で、雨あられのごとき攻撃を浴びせるが、いまや要塞と化したミステリアンドームは全く痛手を受けた様子を見せず、逆にドームから発せられた熱光線の反撃で防衛軍は壊滅的な打撃を受け、撃退された。

通常兵器の攻撃では歯が立たないミステリアンに対し、防衛隊本部は頭を痛めていた。新兵器電子砲の開発が急がれるものの、実戦配備には程遠い段階であった。

緒戦の勝利を誇るものか、ミステリアンの活動は日に日に目立つようになっていた。ミステリアンは東京の空に円盤を飛ばし自分達を攻撃しないよう政府へ働きかけるよう市民に呼びかける。そのころ渥美の見ていたテレビ画面に行方不明になっていた白石亮一が突如現れる。彼はミステリアンに寝返っていたのだ。対話を試みたリチャードソン博士、インメルマン博士に対し、白石は「勝つのは、地球人でもミステリアンでもなく科学だ」と言い放つ。それを受けてリチャードソン博士は「それでも我々は戦わなければならない」と発言。諸外国の政治家および軍人は、東京でミステリアン対策会議を開催し侵略者との決戦を富士山麓にて行うことを決意する。

通常兵器ではまったく歯が立たないミステリアンに対し、諸外国からの援助で、空中戦艦α号、β号、そして長距離からのオネストジョンによる攻撃が決定される。後方のα号の指揮下、前線に出て攻撃を行うβ号はナパーム弾による高熱攻撃をミステリアンドームに対し試みるが、やはりドームからの熱光線攻撃でβ号は木っ端微塵にされてしまった。

地球側に有効な兵器なしと見て取ったか、ミステリアンは要求を半径120キロの土地に拡大してきた。もともとミステリアンは地球侵略が目的だったのだ。焦燥に満ちた危機の中、地球側にもようやく、対抗手段が登場した。ミステリアンの熱光線に耐えるマーカライト、それを応用した超巨大パラボラ戦車・マーカライトファープとマーカライト塗装を施したα号で決戦に挑もうというのだ。機動力に欠けるマーカライトファープの欠点を補うため、専用輸送ロケットマーカライトジャイロが投入配備され、決戦の準備が着々と整えられる。しかし、マーカライトの効力は75分までと限界がある上、ミステリアンドームへ決定的な打撃を与えられる性能を持つ電子砲は未だ完成しないままであった。

地球軍の3度目の総攻撃が始まった。ジャイロから投下された新兵器マーカライトファープは期待通りの性能を発揮し、ミステリアンドームの光線に耐えながらじりじりと距離を詰め、ドームにダメージを与えていく。ミステリアン統領は攻撃を中止しなければ報復手段を執ると地球側に警告し、湖から濁流を発生させマーカライトの一部や付近の町を飲み込むという反撃に出た。

その戦いの中、渥美は1人ミステリアンドームに潜入する。渥美はミステリアンの銃でドームの装置を破壊し、すぐさまミステリアンに取り押さえられるが、その中の1人に脱出路へと誘導される。脱出路にはミステリアンに連行された女性達が待っていたが、そこで仮面を外したミステリアンの正体は白石亮一であった。彼は渥美に安達博士宛の報告書の続きを渡すよう告げると、再びドーム内へ消えて行った。

マーカライトの効力切れが迫るなか、完成となった電子砲を搭載した第二β号が発進する。ミステリアンは反撃のため地中からモゲラを出動させるが、倒れてきたマーカライトに押し潰されて撃破された。戦場に到着した第二β号の電子砲攻撃が始まり、遂にドームは大爆発を起こした。その寸前に脱出した渥美達の上空で、第二β号の砲撃はまだ続いていた。

電子砲の熱線が、逃げるミステリアンの円盤を次々とらえて撃墜していく。それを見た安達博士はつぶやいた。「彼等は、永遠に宇宙の放浪者です。我々は決して彼等の轍を踏んではならない……」

登場キャラクター

怪遊星人 ミステリアン

かつて火星木星の間にあったといわれる第5惑星ミステロイド[4]からやって来た異星人。マントとヘルメットで身を覆っているのが特徴。その色は最高指揮官が赤、中級指揮官が黄、一般戦闘員が青。冷涼な環境でないと生きていけないため、高温が弱点である。

5万年前、母星を核兵器で滅ぼしてしまい、わずかに生き残った一団が火星へ移住して細々と生活してきたが、元の文明を復興・繁栄させることは困難で、恵まれた環境と豊富な資源を有する地球への移住を決意した。その方法はもちろん「実力行使による侵略」である。核戦争の後遺症で肉体は異常を来たしており[5]、生殖行動もままならず、素顔はケロイドが浮き出している。また、重力の軽い火星で幾世代にもわたって生活してきたせいで、地球上では人類よりもやや動きが鈍い。

地底ロボット・モゲラ

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登場メカニック

α号
地球防衛軍の空中戦艦。主翼がない航空機のような形状をした超大型ロケット機。富士山麓のミステリアンドームに対する攻撃を行った。また劇中では防衛軍の杉本空将や科学者を乗せ、旗艦の役割を果たしていた。動力は原子炉で、上昇には2基の上昇ペラを使用する。武装は機首先端の速射砲、ミサイル等。劇中での改装で機体にマーカライトを塗布、一時的にドームからの破壊光線を跳ね返すことが可能になった。
デザインはβ号と同様に小松崎茂によるもので、小松崎が書いた絵物語『地球SOS』に登場する空中戦艦にデザインの元をたどることができる。
  • 全長:200メートル
  • 武装
    • 速射砲
    • 超高熱ナパーム弾
  • ミニチュアは大型と小型2種類あり、一番大きなものは遠近法を強調するためパースがついている。
β号
地球防衛軍の空中戦艦。α号に類似しているが、機体上面が緑色であり(α号は青)、機首先端の速射砲が単なるピトー管になっているのが識別点である。初代は富士山麓のミステリアンドームの第二次攻撃に参加するも光線により撃墜。第二β号はサイクロトロンを使用した電子砲を装備。ミステリアンドームへの第三次攻撃に参加し、ミステリアンドーム撃破に成功した。
マーカライトファープ
英語表記はMarker-light FAHP(FAHP は Flying Attack Heat Projector の頭字語)。直径200メートルの巨大なパラボラを付けた装置とキャタピラ付の高さ140mの4脚(設定では輸送時には折り畳まれている)によって構成されている。ミステリアンドームの破壊光線を反射して相手に撃ち返せるだけでなく、同等の光線を照射することが可能。射程は1.5キロメートルで、作動時間が75分間のみに限られているのが欠点。目標地点までは専用のロケット、マーカライトジャイロによって輸送され、空中で投下された後に下部のロケットエンジン4基を用いて降下する。無人兵器であり、α号からの電波で遠隔操作される。劇中では同時に3台登場している。
  • ミニチュアは大型と小型の2種類と、脚部だけの大型のものがある。
マーカライトジャイロ
対ミステリアン光線兵器マーカライトファープを、ミステリアンドーム近くまで空輸する超巨大輸送用ロケット
劇中では単に地上から垂直に発進していたが、小松崎茂によるデザイン画には「スキージャンプ式のカタパルトから発進」「ラムジェットエンジンを翼に装備して空中で花びらのように投棄」などのアイデアが書き込まれている[6]
  • 全長:1,000メートル
  • ミニチュアは大型と小型の2種類あり、『ウルトラマン』第4話で惑星開発用原子爆弾を輸送するロケットとして登場した(冒頭の発射シーンは『地球防衛軍』の流用映像、海へ墜落するシーンは小型のミニチュアを使った新撮)[7]

スタッフ

本編

※映画クレジット順

特殊技術


キャスト

※映画クレジット順

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ロケ地

その他

  • 本作に登場するロボット怪獣は今日では「モゲラ」と呼ばれているが、作中では名称に関する言及はない。なお、1994年に製作された『ゴジラvsスペースゴジラ』で、対ゴジラ用兵器MOGERAとして復活している。アメリカではモゲラのシルエットは鳥のように見えるらしく、「バード・ロボット」と呼ばれている。
  • 土屋嘉男によると、ミステリアンのマスクはアイスクリームの容器の改造だという。また、マントは当時最新技術を導入したガラス繊維製で、皮膚に繊維が刺さってとても痛かったという。撮影時のストレスも大きく、ミステリアン役の俳優が1人過労で亡くなったという。
  • クランク・アップ直前に、ソ連人工衛星スプートニクの打ち上げに成功。急遽、ラストシーンにスプートニクとよく似た人工衛星打ち上げのシーンが付け加えられ、その撮影に使用された人工衛星のミニチュアがスピードポスターにも印刷された[3]
  • アメリカ合衆国のバンド? & the Mysteriansは欧米でのタイトル(The Mysterians)に由来する。

映像ソフト

  • 1980年代前半にビデオソフトが発売。[10]
  • DVDは2001年6月21日にジュエルケース版が[11]、2007年2月23日に公開50周年を記念しトールケース版が発売。
  • Blu-ray ディスクは2010年3月19日に発売された。

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参考文献

  • 『キングコング対ゴジラ/地球防衛軍 (東宝SF特撮映画シリーズ5)』 ISBN 4924609161

関連項目

  • 宇宙大戦争』 - 本作の姉妹編。安達博士、リチャードソン博士、インメルマン博士が同役で再登場している(ただし安達、リチャードソンを演じたのは別の俳優である)。また、本作の円盤のミニチュアがナタール円盤に流用された。
  • 川北紘一 - 平成ゴジラシリーズの特技監督。中学生の折に本作品を観て感激し、東宝入社を決意した。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

外部リンク

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  1. 一般に「シネマスコープ(通称・シネスコ版)」と呼ばれる画面だが、そもそもシネマスコープは米国で開発されたもので登録商標となっており、当時の日本の映画界では全く同じものを作ることが出来なかった。そのため、日本の各社は米国のシネスコ版とは微妙に縦横比の違うワイド画面を独自開発し、社名を冠して「××スコープ」とした。「東宝スコープ」の場合、画面の縦横比は1対2.35である(参考文献『大特撮〜日本特撮映画史〜』1980年・朝日ソノラマ)。
  2. ただし前年侵略もの『空飛ぶ円盤恐怖の襲撃』が公開されており、等身大ロボットと円盤が出てくる。あくまでも「宇宙人が出てくる」という意味での日本初である。
  3. 3.0 3.1 3.2 テンプレート:Cite
  4. これは「ミステリー(謎・神秘)」と「アステロイド(小惑星帯)」の合成語によるネーミングだが、劇中の安達博士の台詞ではなぜか「火星と土星の間に星屑の群がある」と、小惑星帯の位置を間違って説明している。
  5. 最初の地球側科学者5名との対談時、ミステリアン統領は「産まれてくる子供の80%は異常児なので捨ててしまう」という発言をしている。
  6. それらのアイデアスケッチや設定資料は、DVDの特典映像に収録されている。
  7. テンプレート:Cite book
  8. DVDの特典である「東宝俳優ギャラリー」では、白川由と誤記。
  9. 坪野之と誤記。
  10. 『宇宙船』 VOL.12 朝日ソノラマ、1982年、80p
  11. テンプレート:Cite journal