回収戦車
回収戦車(かいしゅうせんしゃ)は、故障した戦車の回収を目的として、戦車用シャーシを利用し製造・改修された車輌であり、「装甲回収車(ARV:Armoured Recovery Vehicle)」、「戦車回収車(TRV:Tank Recovery Vehicle)」とも呼ばれる。
装甲回収車との区別・区分には特に明確な基準があるわけではないが、基体に戦車の車体を利用しているもの、もしくは既存の戦車の砲塔を外して回収用機材を増設するなどの改造を施されたものが、特に「回収戦車」と呼ばれる事が多い。また、ドイツ語のBergePanzerを直訳すると、「回収戦車」となる。 テンプレート:-
歴史
戦車の回収作業に同種の戦車を使用することは第一次世界大戦の際に「戦車」というものが実戦投入された際にすでに行われていた。当初からその重量と複雑かつ過重気味の機構を持つ「戦車」は戦闘損傷以前に機械故障や軟弱な地盤にはまり込んで行動不能になることも多く、第一次大戦後、「戦車(機甲)部隊」というものが各国で整備されるようになると、様々な理由により行動不能になった戦車を回収・修理して戦線に復帰させることは戦線の維持には重要なことであると考えられ、戦車を回収するための装備もまた重要である、として戦車を運用する部隊には回収用の牽引車両を配属させることが通例となった。
やがて戦車の進歩に伴って車体重量が増加し、従来の車両回収用に使用されてきた半装軌車・トラックなどでは回収作業が困難となり、複数の車両を使用しての重連牽引でかろうじて1両の戦車を回収できる、という状況が多く見られるようになった。そのため、より重い車両でも牽引可能な車輌として戦車を改造した「回収戦車」が製造されることとなった。第二次世界大戦では、砲塔を損傷した戦車から砲塔を取り外し、牽引用ワイヤーやジャッキを追加搭載しただけの現地急造の回収車両が多数製作されている。
この点において第二次大戦におけるドイツ軍の戦車修復能力は他国を圧倒しており、ドイツ軍は当初から戦車回収用に多数の半装軌車を戦車部隊に装備し、各種の回収戦車を開発している。
V号戦車パンターの派生型の一つであるPanzer-Bergegerät(Panther I)Sd.kfz.179.戦車回収用器材(パンターI)通称「ベルゲパンツァー」は、砲塔を撤去して開放型の戦闘室を設け、車内には強力な巻き上げ機が設置されている。フェルディナンド駆逐戦車改造のBergepanzer Tiger(P).ティーガー(P)戦車回収車の場合は戦闘室を撤去した(正確には、フェルディナンドの原型であるティーガー(P)重戦車の砲塔を撤去してエンジンを後部から中央部に移設している)。後に小型の機関銃塔を設置し、クレーンなどの整備機材を搭載している。
従来は戦闘損傷や故障によって生じた余剰車両や旧式化した戦車の再生して製作されることが多かった車種であるが、近年は回収対象となる新型戦車とセットで当初から開発されることが多く、基体となる戦車の砲塔を廃して車体に一体型の密閉型戦闘室を設置し、起重機や巻上げ機などの吊上・索引設備を備えていることが通常である。大型の車両には回収作業時の安定性を増すための駐鋤(ちゅうじょ、英語ではSpade)が装備されていることが多い。 テンプレート:-
イラク戦争では、首都バグダードにアメリカ軍が侵攻した際にM88A2回収戦車がサッダーム・フセインの立像を引き倒した場面が、アメリカの勝利を象徴する映像として報道で多用された。
軍において運用されているほかにも、退役した後に民間に払い下げられて重量物牽引車や装軌式クレーン車として使われた車両も数多く存在する。 テンプレート:-
現代の主な回収戦車
※は基体となった戦車 テンプレート:Col
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