南極条約
南極条約(なんきょくじょうやく)は、南極地域の平和的利用を定めた条約。
概要
南極は気象条件が厳しいため人の定住が困難であり、長い間未踏の地であった。しかし1908年にイギリスが南緯50度以南、西経20度から80度に至る範囲の諸島の領有を主張したのを切っ掛けに、他の国も南極の一定区画の地域の領有を主張するに至った。国際法における国家領域取得根拠としては先占 (occupation) があるが、南極はその気象などのため実効的支配が困難であり先占の法理をそのまま適用するのは無理があるとして、先占がなくても一定の範囲で領域の取得を認めるとするセクター主義が主張された。
セクター主義には反対する国家も多く国際法として確立しているわけではなかったが、科学技術の進歩によって実効的支配の可能性も否定できなくなり、領土の獲得競争が展開されるのは必至となった。それを阻止し、南極地域(すべての氷棚を含む南緯60度以南の地域)の継続的な平和的利用のために締結されたのが、本条約である。
南極が、もっぱら平和的目的にのみ利用されるべきと定め、一切の軍事利用を禁止するとともに、その実施を確保するため、地上および空中の自由な査察制度を設けることとした。平和利用では、将来、国際協定で認められない限り、すべての核爆発と放射性廃棄物の処分を禁止している。この平和利用のための核爆発をどうするか最後までもめたが、結局日本のあっせんにより、将来一般協定ができれば、南極にも適用するが、それまで一切禁止するという線でまとまった[1]。
1957年から1958年の国際地球観測年で南極における調査研究に協力体制を築いていた日本、アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ソビエト連邦(現ロシア)、アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、チリ、ニュージーランド、ノルウェー、南アフリカの12か国が1959年12月1日に南極条約を採択した[1]。条約の概要は下記のとおり。
- 南極地域の平和的利用(軍事的利用の禁止)
- 科学的調査の自由と国際協力
- 南極地域における領土主権、請求権の凍結
- 核爆発、放射性廃棄物の処分の禁止
- 条約の遵守を確保するための監視員の設置
- 南極地域に関する共通の利害関係のある事項についての協議の実施
- 条約の原則および目的を促進するための措置を立案する会合の開催
条約締結国は、2013年10月時点で50か国である[2]。
なお、条約成立前のセクター主義に基づく領域の主張は、条約上は、否定も肯定もされているわけではない。
南極条約締約国一覧(2013年2月現在)
- 南極条約協議国(28か国)[3]
- 南極において観測基地の設営などを学術調査を継続的に実施している国
- アメリカ合衆国、アルゼンチン、イギリス、イタリア、インド、ウクライナ、ウルグアイ、エクアドル、オーストラリア、オランダ、スウェーデン、スペイン、大韓民国、中華人民共和国、チリ、ドイツ、日本、 ニュージーランド、ノルウェー、フィンランド、ブラジル、フランス、ブルガリア、ペルー、ベルギー、ポーランド、南アフリカ共和国、ロシア
- その他の条約締約国(22か国)[3]
- エストニア、オーストリア、カナダ、キューバ、ギリシア、グアテマラ、コロンビア、スイス、スロバキア、チェコ、朝鮮民主主義人民共和国、デンマーク、トルコ、パキスタン、パプアニューギニア、ハンガリー、ベネズエラ、ベラルーシ、ポルトガル、マレーシア、モナコ、ルーマニア
脚注
関連項目
- 南極地域の環境の保護に関する法律 - 環境保護に関する南極条約議定書の実施を確保するための日本国内法
- 南極における領有権主張の一覧
- 宇宙条約 - 条約の作成過程で南極条約が参照された
- スヴァールバル条約 - 同じく極域にあるスヴァールバル諸島の取り扱いに関する多国間の条約
外部リンク
- 地球環境-南極条約(外務省)
- 南極条約(データベース『世界と日本』)
- 「南極条約(原子力百科事典 ATOMIKA」
- ↑ 1.0 1.1 1959年(昭和34年)12月21日官報第9900号付録資料版14ページ「南極条約」
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 3.0 3.1 テンプレート:Cite web