公衆無線LAN
公衆無線LAN(こうしゅうむせんラン)とは、無線LANを利用したインターネットへの接続を提供するサービスを指す。そのアクセスポイントから受信できる場所を、無線LANスポット、Wi-Fiスポット、フリースポット、ホットスポットテンプレート:Refnestなどと呼ぶ。一つのアクセスポイントから受信できる範囲は半径20m程度。
目次
概要
ノートパソコン・スマートフォン・タブレットコンピュータといったモバイル機器の所有者が、主に外出先や旅行先で、誰でも無線LANを利用してインターネットに接続できるサービスである。
このサービスには有料で利用できる場合と無料の場合がある。有料の場合は電気通信事業者が専らサービスを提供する。自ら伝送路を有する電気通信事業者(旧第1種電気通信事業者、以下、キャリアという。)がサービスを提供する場合は、全国的に大規模にアクセスポイントを設置する事が多い。これには、急激なスマートフォンの普及で、回線容量が不足する状況となった移動体キャリアが、トラフィックを公衆無線LANにオフロードする目的で、積極的にアクセスポイント拡大に走った事が背景にある。 上記に派生して、アクセスポイントを設置した施設に対し、アクセスポイントを共用する形で、無料の公衆無線LANサービスを提供する事が可能になり、これにより無料のアクセスポイントも拡大した。更に、日本においては移動体キャリアの1社であるソフトバンクモバイルが、個人客を中心とした自社の顧客に宅内でのトラフィックのオフロードを目的に、FON無線ルータを無償提供し、顧客宅をFONのアクセスポイントとした事で、住宅地域にも無料のアクセスポイントが拡大している。
無料の場合であっても、専用のWi-Fi無線ルーターの購入設置と他の会員への開放が条件であったり、登録メールアドレス宛に広告が送られてくるなど、利用者に幾分かの負担が生じる場合がある。またこれら以外に、会場などで一時的に利用できる形態もある。
なお、日本においては、電気通信事業者と利用契約が必要な無線LANサービスが多いため、外国人旅行者から『契約をしていない外国人旅行者は公衆無線LANが使用できない』との声が多く寄せられ[1]、2020年の東京オリンピック開催を控え、テンプレート:要出典範囲
歴史
一般開放された無線LANを使ったインターネット接続サービスの構想は、ネットワーク研究者のブレット・スチュワートによって、1993年8月にNetWorld+Interopカンファレンスで発表された[2][3]。ただし、スチュワートは“ホットスポット”という用語を使用していなかった。1994年に、スチュワートは公衆無線LANアクセスを提供するPLANCOM社を設立した(PLANCOMは後にT-モバイルの無線LANサービス部門となった)。
2000年前後に起こったアメリカ合衆国のドットコムバブル期間中、米国では数多くの無線インターネット接続業者が設立された。米国外でも、2000年過ぎごろから公衆無線LAN接続の実証実験が始まり、その数年後からサービスが開始されている。例えば、日本では2002年中にNTTグループやソフトバンクによって無線接続サービスの提供が始まった[4]。
有料・無料を問わず、公衆無線LANアクセスポイントの数は増加し続けている。2006年には、全米300以上の都市で無線インターネット接続が可能となった[5]。
場所
無線LANのアクセスポイントは、主に人の多く集まる商業施設、公共交通機関、公共施設、宿泊施設、学校等に設置される事が多い。公共交通機関では駅構内・空港施設内・バス停だけでなく、列車内(つくばエクスプレスや東海道新幹線のN700系車両など)、高速バスの車両内、国際線の航空機内でもアクセスできる場合がある。屋外でのアクセス向上のため電力柱や電信柱にアクセスポイントが設置される例もある。多くは不特定多数の人にサービスを提供しているが、主として施設の利用者の為にサービスを提供する場合もある。FONのように、自宅をアクセスポイントとして提供する形態の登場により、住宅地域でも公衆無線LANのサービスが提供されつつある。
- BBmobilepoint.JPG
BBモバイルポイントのエリア表示
- DocomoWi-Fi-FLET’S-SPOT-HOTSPOT-Area.JPG
docomo Wi-Fi、フレッツ・スポット、ホットスポットのエリア表示
- SoftBank WiFi.jpg
ソフトバンクWi-Fiスポットのエリア表示
- Au wifi.jpg
au Wi-Fi SPOTのエリア表示
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docomo Wi-Fi、Xiのエリア表示
- FREESPOT.JPG
FREESPOTのエリア表示
- Keelung City free Wi-Fi service zone billboard.jpg
台湾基隆市のWiFiスポット表示
- HotSpot pay phone at Hafenbahnhof Friedrichshafen.JPG
ドイツの公衆電話に設置されたアクセスポイント
- DaeguBus-Twifizone.jpg
韓国のバス内のWiFiルーター
- NYC Subway - Wi-Fi Available in Stations.jpeg
ニューヨーク地下鉄ホームのWiFiスポット
技術
セキュリティ
- 802.1x認証、WPA-EAP
2013年12月現在、日本の公衆無線LANで802.1x認証、WPA/WPA2-EAPに対応しているものは少数であるが、au Wi-Fi SPOT (SSID: au_Wi-Fi2)、docomo Wi-Fi (SSID: 0001docomoおよびdocomoの一部)、ソフトバンクWi-Fiスポット (SSID: 0002softbank)といった移動体キャリアによるサービスでは対応が広がっている。しかし、端末を問わず利用できるのはdocomo Wi-Fiのみであり[6]、au Wi-Fi SPOTおよびソフトバンクWi-Fiスポットでは自キャリアの携帯電話端末によるUIMカードの情報を用いた認証(EAP-SIM/AKA)のみである。
- 暗号化方式
WPA/WPA2-PSKでTKIPもしくはCCMPによる暗号化が提供されているものが多い。しかし、無料サービスのものや一時的に設置されるものでは暗号化をしていない場合が多く、有料サービスでも脆弱性が指摘されているWEPのみを採用している場合や[7]、暗号化されていない場合もある[8]。
WISPr
公衆無線LANスポットを設置・提供するにあたっての技術的な指標として、テンプレート:仮リンク が存在する。
提供形態
有料で提供される場合は、提供者は電気通信事業者に限定される。サービスの利用には電気通信事業者との会員契約が必要な場合がほとんどである(そのことが、来日旅行者が日本国内の公衆無線LANを利用できない原因となっている)。
公衆無線LANの開始からしばらくの間は、料金形態は従量制と定額制であったが、移動体キャリア(携帯電話会社)のスマートフォンの普及による回線容量の逼迫を契機とした公衆無線LANへのオフロード促進の為、自社の契約顧客に対する付加サービスとして、主契約の包括料金(実質的に無料)で提供される場合や、廉価の付加料金で提供する場合が多くなっている。この為、従前よりの公衆無線LAN事業者は、料金的にも、アクセスポイントの面でも対抗が困難な状況となり撤退する業者も現れている。
これらのアクセスポイントは、電気通信事業者が自ら設置する形態の他に、施設管理者との提携により設置される場合がある。提携による設置の場合は、同じアクセスポイントを有料・無料で兼用している場合がある。
無料で提供される場合、飲食店や鉄道などの利用者へのサービスとして提供するもの、テンプレート:要出典範囲[9]、FON専用無線ルータの設置者間でのアクセスポイントの相互開放によるものがある。
現在では、有料とされる事業者でも、実質無料又は非常に低廉であり、無料との境界がなくなりつつある。また、来日旅行者を対象とした無料サービスの拡充が進められている。
有料
地上系キャリア(旧第1種電気通信事業者)の例
- BBモバイルポイント(ソフトバンクテレコム)
- フレッツ・スポット(NTT東日本・NTT西日本・NTT BP)
- OCNホットスポット(NTT-C、NTT BP)- 2013年7月末提供終了。BBモバイルポイントへのローミングのみ。
移動体キャリア(旧第1種電気通信事業者)の例
- ソフトバンクWi-Fiスポット(ソフトバンクモバイル)[10]
- au Wi-Fi SPOT(KDDI、沖縄セルラー電話、ワイヤ・アンド・ワイヤレス)
- docomo Wi-Fi(NTTドコモ、NTT BP)
- UQ Wi-Fi(UQコミュニケーションズ)
キャリア以外のISP(旧第2種電気通信事業者)の例
無料
- FREESPOT 2013年12月現在、日本国内約11,000スポット。
- 7Spot - セブンイレブンやイトーヨーカ堂の店舗内に設置。アクセスポイントはフレッツスポット・docomo Wi-Fiとの共用。1日3回(1回60分以内)まで
- LAWSON Wi-Fi - ローソンの店舗内に設置。アクセスポイントはau Wi-Fi SPOT・Wi2300・docomo Wi-Fi・ソフトバンクWi-Fiスポットとの共用。
- Famima_Wi-Fi - ファミリーマートの店内に設置。アクセスポイントはdocomo Wi-Fiとの共用。1日3回(1回20分以内)まで
- Do SPOT - NTTメディアサプライが提供。アクセスポイントはフレッツスポットとの共用。1日4回(1回15分以内)まで
- フレッツポータル - NTT東日本の光ステーションを設置した店舗等で提供。アクセスポイントはフレッツスポットとの共用。1日2回(1回15分以内)まで
- Wi-Fine - 他の公衆無線LANとは異なり、インターネット接続を行わない。アクセスポイントが置かれた場所の情報提供(チラシ等)を行っている。
- FC2WiFi(FC2)
無料(設置者の相互コミュニティによるもの)
- FON - 自宅や店舗・事務所などのインターネット回線にFON無線ルーターを購入設置登録すると、一つのIDが設置者に提供され全世界の同様のFONルーター購入設置者のスポットが無料で利用できる。(ソフトバンクモバイルのフラット型パケット定額サービスの契約者に対しては、ソフトバンクモバイルがFON無線ルーターを無償提供。) 2013年7月現在、全世界で1200万スポットに迫る。
ローミング
公衆無線LANのアクセスポイントを保有しない電気通信事業者が、他の電気通信事業者のアクセスポイントを利用できるようにする事をローミングという。
無線LAN専業の電気通信事業者の内、自社ではアクセスポイントを全く保有していないか、又は利用可能なアクセスポイントの中で自社のアクセスポイントの割合が非常に少ない業者の事をローミングプロパイダと呼ぶ事がある。(WIRELESSGATEや、au Wi-Fi SPOTに参入する以前のWi2 300はローミングプロパイダの例である。)
逆に、自社では利用者に対する営業活動を行わず、専らローミング提供を行う事業者も存在する。NTT BP(NTT東日本のWeb認証方式のフレッツスポットをローミング提供)やイッツコミュニケーションズ(東急線の駅構内の公衆無線LAN設備を移動体系キャリア3社とNTT東日本にローミング提供)はこの例である。
日本以外
参照・脚注
外部リンク
業界団体
報告書
研究会
無線LANスポット地図
- NAVITIME - 地図上に無線LANスポットを表示することができる。
- ↑ 観光庁・公衆無線LANの整備状況について
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ Wireless Technology
- ↑ http://bb.watch.impress.co.jp/cda/special/16691.html
- ↑ December 2006 update of wireless cities and counties
- ↑ EAP-SIM/AKAだけでなくPEAP-MSCHAPv2やTTLS-PAPによる認証が可能
- ↑ NTT東日本のフレッツ・スポットやソフトバンクテレコムのBBモバイルポイントなど
- ↑ ソフトバンクモバイルのソフトバンクWi-Fiスポット (SSID: 0001softbank)など
- ↑ 広告料という間接収入であっても、他人の通信の対価とみなされるため、電気通信事業に該当する。
- ↑ かつてSSIDにFONを使用していた時期があり、偽FONと呼ばれる事もあった。