位相群

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テンプレート:Groups 数学において、位相群(いそうぐん、topological group)とは、でも位相空間でもある集合であって、その群構造と位相構造が両立するもののことである。

定義

位相空間 G群演算乗法あるいは積とよばれる二項演算逆元をとる単項演算)が定義されているとき、G において群構造と位相構造とが両立する(あるいは可換である、うまくいっている、compatible)とは、以下の条件が成り立つことを言う。

  1. 直積 G × G直積位相を与えて位相空間と見なすとき、G の積演算 G × GG; (g, h) → gh は2変数の写像として連続である。
  2. 単項演算 GG; gg−1 は連続である。

両立する群構造と位相構造を持つ集合 G位相群であるという。また、しばしば位相空間として T2 ハウスドルフの分離公理)を満たすことを位相群の定義に含めることもある。

  • 任意の群は離散位相を入れることにより位相群と見なすことができる。特に、有限群を離散位相に関する位相群とみなすことで、シューアの直交関係式などの有限群に対する種々の命題は局所コンパクト群などのある種の位相群における命題の特殊な場合とみることができる。
  • 通常の位相を考えた実数全体 R p-進位相を考えた p-進数全体 Qp は、その加法に関して群(加法群)と見ると位相群である。これらは位相空間としては局所コンパクトゆえ、局所コンパクト群の例でもある。
  • 0 でない実数全体が乗法に関して成す群(乗法群あるいは単数群)R×, 0 でない p-進数全体の成す乗法群 Qp× は位相群である。
  • リー群は(可微分)多様体の構造に両立する群構造を持つ群のことであるから、多様体を単に位相空間とみればリー群は位相群である。上記の R, R× や複素数全体の作る加法群 C, 乗法群 C× あるいは体としての RC の上の行列群などはこれにあたる。一方、Qp やその上の行列群は完全不連結な局所コンパクト群(ベルンシュタインの語法で l-群)をなす。

諸概念

準同型

G, H を位相群とする。写像 f: GH が位相群としての準同型(あるいは単に準同型)であるとは、単に代数的な意味での群の準同型であるというばかりではなく、連続写像であるものを指す。これにより、代数的な意味での群準同型の場合と同じく像 Im(f) := {f(g) ∈ H | gG} や Ker(f) := {g ∈ G | f(g) = e} (eH の単位元) を考えるとき、Im(f) ⊂ H は再び(部分)位相群となる。一方、Ker(f) ⊂ G が(部分)位相群となるのは準同型 f: GH が開集合を開集合へ写す(すなわち開写像である)ときである。開写像である準同型を開準同型と称する。位相群の同型は群として同型かつ位相空間として同相であることを以って定義される。すなわち、全単射両連続(双射双連続)なる位相群の準同型写像は同型である。

商位相群

G を位相群、H をその正規部分群とすると、剰余群 G/H商位相(射影 GG/H が連続となる最も粗い位相)を入れて位相空間と見なすとき、再び位相群となる。これを GH で割った商位相群とか H を法とする G剰余位相群などのようにいう。位相を考えない代数的な意味と紛れのない場合には、単に剰余群商群と呼ぶ。位相群 G から商群 G/H への標準射影は開写像となる。

G が位相空間としてハウスドルフの分離公理を満たす(ハウスドルフ位相群)であるとき、商群 G/H が再びハウスドルフ位相群となることと H が位相空間として閉(閉部分群)であることとは同値である。

作用

位相群 G が位相空間 X作用しているとは、G の各元 g に対して、連続写像 πg: XX が与えられていることをいう。作用

<math>\pi: G \times X \to X;\, (g,x) \mapsto \pi_g(x)</math>

が、G × X に直積空間としての位相を入れるとき、2変数の写像として連続であるならば、GX連続作用を持つ、あるいは GX 上の位相変換群であるという。またさらに、考えているそれぞれの空間や群の位相が可微分構造などをもつとき、作用にも連続性よりも強い条件である「滑らかさ」を課して、滑らかな作用を考えることもある。

位相空間 X に対する位相変換群 G の作用の各軌道は、G の適当な部分群 H による商群 G/H同相である。

性質

  • 位相群は一様空間であり、位相群の大域的な位相は単位元の近傍における局所的な性質のみから知ることができる。また、完全正規空間となるから T0(コルモゴロフの分離公理)を課せられた位相群はハウスドルフ位相群となる。

関連項目