伊藤信吉
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伊藤 信吉(いとう しんきち、1906年11月30日 – 2002年8月3日)は、群馬県前橋市生まれの詩人で、近代文学研究者。
略歴
高等小学校を卒業後、1924年より5年間群馬県庁に勤務。1928年に上京し「ナップ」に加盟した。萩原朔太郎、室生犀星に師事し二人の全集編集にもあたる。戦前にはプロレタリア文学運動に参加、『中野重治詩集』が製本途中で発禁になり押収されそうになったときに、伊藤がとっさに自分の座っていた座布団の下に一冊隠して押収をまぬかれたというエピソードもある。
戦後は詩人研究で著名で、多くの全集類の編集出版にもあたった。後年、故郷の群馬県に居を移し群馬県の文学活動の中心的存在としても活躍。郷土出版で「群馬文学全集」の編纂にも携わった。
没する前年の2001年秋に『伊藤信吉著作集』(全7巻、沖積舎)が刊行開始し、2003年秋に完結した。
没後
弟子を中心にした人々が「伊藤信吉の会 (岡田芳保会長)」を発足させた。2004年12月15日に群馬県前橋市のギャラリー・ホールのノイエス朝日にて、全集完結などを記念し「伊藤信吉を偲ぶ会」が催された。故人の人柄が思われるエピソードである。
受賞歴
- 1973年『ユートピア紀行』(講談社)で第2回平林たい子文学賞
- 1977年『萩原朔太郎』(全2巻、北洋社)で第28回読売文学賞(評論・伝記部門)
- 1977年『天下末年 伊藤信吉詩集』(新日本出版社)で第9回多喜二・百合子賞
- 1980年『望郷蠻歌・風や天』(集英社)で第30回芸術選奨文部大臣賞
- 1993年『上州おたくら?私の方言詩集』(思潮社)で第2回丸山豊記念現代詩賞
- 1997年『監獄裏の詩人たち』(新潮社)で第48回読売文学賞(随筆・紀行部門)
- 1999年日本芸術院賞、恩賜賞
- 2002年『老世紀界隈で』(集英社)で第17回詩歌文学館賞
主な著作
- 「伊藤信吉詩集 現代詩文庫」 思潮社
- 「伊藤信吉詩集 世界の詩」(山室静編、弥生書房)
- 逆流の中の歌-詩的アナキズムの回想 泰流社
- 回想の上州-その詩的風土に沿うて あさを社
- 風色の望郷歌 朝日新聞社
- 上州おたくら 私の方言詩集 思潮社
- マックラサンベ 私の方言村ことば 川島書店
- 佐藤緑葉の文学-上州近代の作家(塙新書, 1999)
- 現代詩の鑑賞 上下巻:新潮文庫
- 詩のふるさと 新潮文庫
- 詩をめぐる旅 新潮社
- ユートピア紀行-有島武郎 宮沢賢治 武者小路実篤-(講談社文芸文庫で再刊、1997)
- 詩集 老世紀界隈で (集英社,2001)
- 室生犀星 戦争の詩人・避戦の作家(集英社,2003、※遺作、著作集未所収)
- 伊藤信吉著作集(沖積舎,2001-03)
- 島崎藤村の文学、近代文学の精神、作家論
- 萩原朔太郎、郷土望景詩をめぐってほか
- 高村光太郎、逆流の中の歌、佐藤緑葉の文学ほか
- 室生犀星、中野重治、監獄裏の詩人たちほか
- 現代詩人の作品鑑賞、詩のふるさと 、詩をめぐる旅
- ユートピア紀行、風色の望郷歌、抒情小曲論ほか
- 詩篇集成、散文集成
文庫編著
主な編集出版
評伝
- 東谷篤 『伊藤信吉論 未完の近代を旅した詩人』 沖積舎、2010年