乳香
乳香(にゅうこう)とはムクロジ目カンラン科ボスウェリア属の樹木から分泌される樹脂のこと[1]。
概要
ボスウェリア属の樹木は、オマーンなどの南アラビア、ソマリアなどの東アフリカ[1]、インド[2]に自生している。 これらの樹皮に傷をつけると樹脂が分泌され、空気に触れて固化する。1-2週間かけて乳白色~橙色の涙滴状の塊となったものを採集する[1]。乳香の名は、その乳白色の色に由来する[3]。 古くからこの樹脂の塊を焚いて香とし[4]、または香水などに使用する香料の原料として利用されている[1]。
樹脂の性質は樹木の種類や産地によって大きく異なる。樹木は栽培して増やすことが困難で、これらの自生地の特産品となり、かつては同じ重さの金と取引されたこともある[5]。現在も良質とされるものの商業的な生産は主にオマーンで行なわれているテンプレート:要出典
香以外にも中医薬・漢方薬としても用いられ[6]、鎮痛、止血、筋肉の攣縮攣急の緩和といった効能があるとされる[6]。また、多く流通している南アラビア地域では唾液分泌の促進やリラクゼーションのために乳香樹脂をガムのように噛むことがある。
歴史
乳香は紀元前40世紀にはエジプトの墳墓から埋葬品として発掘されているため、このころにはすでに焚いて香として利用されていたと推定されている。古代エジプトでは神に捧げるための神聖な香として用いられていた[1]。神に捧げるための香という点は古代のユダヤ人たちにも受け継がれており、聖書にも神に捧げる香の調合に乳香の記述が見られる。
また、東方の三博士がイエス・キリストに捧げた3つの贈り物の中に乳香がある[7]。
日本にも10世紀には薫香の処方内への記述が現れるため、このころにシルクロードを通じて伝来したものと考えられているテンプレート:要出典。
日本正教会を含む正教会では、古代から現代に至るまで、奉神礼で香炉で乳香を頻繁に焚いて用いる。振り香炉にも乳香が用いられる[4][8]。
香水などへの使用が行なわれるようになったのは16世紀に入ってからであり、乳香を水蒸気蒸留したエッセンシャルオイルや溶剤抽出物であるレジノイドがこの用途に用いられるようになったテンプレート:要出典。
名称
テンプレート:Main オリバナム(中世ラテン語: olibanum ; オリバヌム)の語源ともされるアラビア語 اللبان (al-lubbān)「乳香」 は、「ミルク」を意味する語 لبن (laban)からの派生語。なお、al- はアラビア語の定冠詞である。
別名フランキンセンス(またはフランクインセンス、テンプレート:Lang-en)は、中世フランス語: franc encense 「真正なる香」に由来する[9]。