ワルサーPP
テンプレート:Infobox ワルサーPP(Walther PP)は、ドイツのカール・ワルサー社が1929年に開発したダブルアクション式セミオートマチック拳銃である。.22口径(5.6mm)、.32ACP口径(7.65mm)、.380ACP口径(9mm)の3種類がある。PPとはPolizeipistole(警察用拳銃)を意味する。
PPは各国の警察用として、また民間で銃の所持が許可されている国ではセルフディフェンス(自己防衛)用として使用されている。
軍用大型拳銃のP38は、PPのトリガー機構が転用されている。
歴史
1929年に開発される。ドイツ警察や再軍備宣言がなされたドイツ軍の将校用標準ピストルとして採用されており、国家社会主義ドイツ労働者党の制式拳銃でもあった。
戦後、東ドイツ地域にありソ連に接収されたワルサー社の工場では東独軍、東独警察用にPPが生産された。西側では1980年代まで、フランスのマニューリン社がPPを含めたワルサー社の拳銃をライセンス生産していた。1961年には新生ワルサー社が西ドイツに設立され、以降はそちらで生産されている。
開発以来80年以上を経過した古典的拳銃であるが、使用弾丸規格が市場の主流規格であることや、21世紀初頭でも通用する安全機構を備えた高い設計完成度によって市場での商品性を保っており、姉妹モデルであるワルサーPPKと共に、現在でも生産が継続されている。
またダブルアクション機構の他にも、安全装置設計での高度な配慮、トリガー・ガードが分解時に回転しテイクダウン・ラッチとして機能する合理性など、コンパクトな設計に盛り込まれた機能的システムには注目すべき点が多く、世界各国で開発された後続の中型・小型自動拳銃にも大きな影響を与えている。
機構
- 安全装置
手動の回転式セフティレバーを下げると、セフティレバーがファイアリング・ピンを固定し、ハンマーはシアから解放されるがハンマーブロックが下降し撃発位置までの前進を阻止され、安全装置が掛った状態になる。セフティレバーを発射位置へ戻してもハンマーブロックは下降したままハンマーの前進を阻止しており、安全性が保たれている。
- シグナルピン
薬室に実弾が装填されると、薬莢の底部の縁にシグナルピンが当たり、ハンマーの上部に露出して、銃を握った時に親指で確認できる。ただし、.22口径はリムファイヤー式(薬莢の底部の外周を叩いて発火させる)のため、シグナルピンとの接触で暴発の危険があり、省略されている。
- スライド・ストップ
最終弾を撃ち終わるとスライド・ストップによりスライドが後端で保持される。スライドストップを押し下げるレバーは無く、弾倉交換後にスライドを少し後ろに引いて離せば初弾が薬室に装填されて射撃可能となる。
- 通常分解
通常分解はトリガー・ガードを下に引き下げ、そのままスライドを最後端まで引き、上に持ち上げてから前に戻せば抜けるようになっている。
派生モデル
- PPスポーツ
- マニューリン社製で射撃用に銃身を延長し、グリップを拡大したもの。.22口径。
- PPK
- 銃身とグリップ・フレームを短縮して小型化し、更に携帯性を高めたもの。
- PPスーパー
- 9mm kurz (9mm×18)を使用する。1979年に製造中止。