ローレンス・バークレー国立研究所
ローレンス・バークレー国立研究所(ローレンス・バークレーこくりつけんきゅうじょ、英名 Lawrence Berkeley National Laboratory、略称:LBLまたはLBNL)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州にある米国エネルギー省(英名、Department of Energy, 略名 DOE)の研究所。単にバークレー研究所、バークレーラボとも。 LBLは、物理、化学、生命科学、コンピュータ・サイエンス、エネルギー工学、ナノテクノロジー、環境工学などの広い分野にわたって研究を行っている。
運営は米国エネルギー省が直接行っているのではなく、カリフォルニア大学(University of California)システムが代行している。またカリフォルニア大学バークレー校の所有地内に設置されているが、UCバークレーの付属研究所ではなく独立した組織である。
1997年にノーベル物理学賞を受賞したスティーブン・チュウ(Steven Chu)が所長(Lab Director)を務めていたが、チュウが2009年1月にエネルギー省長官に就任したため、現在までポール・アリビサトス (en) が所長を代行(Acting Director)している。
研究所ではスタッフ研究者(約千名)を含め、4,000人以上の人が雇用されており、カリフォルニア大学バークレー校からも多くの大学院生、大学生を受け入れて、研究を遂行している。
所在地
1 Cyclotron Road, Berkeley, CA 94720, USA
カリフォルニア大学バークレー校の東側の丘の斜面に位置し、200エーカー(約800,000平方メートル)の敷地に約80の建物が点在している。研究所の多くの建物からは、アルバニー、バークレー、オークランドなどの町が一望でき、また対岸にはサンフランシスコ及びゴールデンゲートブリッジ(金門橋)、ベイブリッジを見ることができる。
自然豊かな丘にある研究所で、敷地内は動植物が豊富である。季節や時間にもよるが、シカ、七面鳥、スカンク、アライグマなどを比較的日常的に目にすることができ、まれにピューマ(Mountain Lion)の目撃情報も報告される。また野生動物ではないものの、乾季の前には山火事対策としてヤギの放牧による下草の除去が行われる。
その他、隣接にはカリフォルニア大学バークレー校植物園やローレンス科学館 (en)、DoE Joint Genome Institute, Production Genomics Facility(2800 Mitchell Drive, Walnut Creek, CA 94598)がある。
歴史
1931年にアーネスト・オーランド・ローレンス(Ernest Orlando Lawrence)がバークレー校のキャンパスの中に作った放射線研究所(Radiation Laboratory)が前身である。1940年に現在の場所に移動。第二次世界大戦中及びその後1950年までは、マンハッタン計画などの国家機密に関する研究にも関わったが、現在そのような研究は行っていない[1]。
1950年以降、同じくローレンスの名を冠した、ローレンス・リバモア国立研究所に保安上の理由から、国家機密に関わる研究は移されている(国家核安全保障局、国防総省、国土安全保障省などの関わる研究開発が行われている)。その後、マンハッタン計画の理論研究部がおかれていた、ロスアラモス国立研究所へ移った。ローレンス・リバモア国立研究所及びロスアラモス国立研究所では、ゾーン管理が行われているため、機密レベルの高い研究者や公務員、軍人で無いと、一部の施設の視察や見学できないのはそのためである。
それ以降、加速器利用研究を初めとして、電子顕微鏡の産業応用などの研究センターを設置し、現在はカリフォルニア大学バークレー校の大学院課程としても知られている。
施設
- 放射光実験施設
- 電子顕微鏡の検定などを行う国立センター
研究部門
- 加速器・核融合研究(Accelerator and Fusion Research Division)
- 改良型放射光施設(Advanced Light Source)
- 化学(Chemical Science)
- 計算機を使った開発(Computational Research Division):ソフトウエアの開発、応用数学など
- コンピュータ科学(Computing Science Division):コンピュータのハードウエアの発展に関する研究
- 地球科学(Earth Sciences Division)
- 一般工学(Engineering Division)
- 環境・健康・安全部門(Environment, Health and Safety Division)
- エネルギー技術及び環境への影響に関する部門(Environmental Energy Technologies Division)
- ゲノミクス(Genomics Division):遺伝子の構造・機能の解析
- 情報技術及びサービス(Information Technologies and Services Division)
- 共同遺伝子研究機関(Joint Genome Institute)
- ライフサイエンス(Life Sciences Division):分子生物学、癌研究、放射線生物学、DNA修復研究
- 材料科学(Materials Sciences Division)
- エネルギー研究の為の科学的コンピュータ・センター(National Energy Research Scientific Computing Center (NERSC))
- 原子核科学(Nuclear Science Division)
- 生物物理学(Physical Biosciences Division)
- 物理学(Physics Division)
ノーベル賞受賞者
- 1939年 物理学賞、アーネスト・オーランド・ローレンス(Ernest Orlando Lawrence)
- サイクロトロンの発明・開発及びその成果、特に人工の放射性元素に関する研究
- 1951年 化学賞、グレン・シーボーグ(Glenn T. Seaborg)とエドゥイン・M・マクミラン(Edwin M. McMillan)
- 超ウラン元素の発見
- 1959年 物理学賞、オーウェン・チェンバレン(Owen Chamberlain)とエミリオ・セグレ(Emilio G. Segre)
- 反陽子の発見
- 1960年 物理学賞、ドナルド・A・グレイザー(Donald A. Glaser)
- 泡箱の発明
- 1961年 化学賞、メルヴィン・カルヴィン(Melvin Calvin)
- 1968年 物理学賞、ルイ・W・アルヴァレ(Luis W. Alvarez)
- 素粒子物理学への非常な貢献 - 水素泡箱を用いた技術とそのデータ解析の発展に関して
- 化学研究の新たな分野についての発展への貢献 - 動力学
- 1997年 物理学賞、スティーブン・チュウ(Steven Chu)
- 2006年 物理学賞、ジョージ・F・スムート三世(George F. Smoot III)
- 宇宙マイクロ波背景放射の黒体放射との一致と非等方性の発見
- 2011年 物理学賞、ソール・パールマッター(Saul Perlmutter)
過去に在籍した人物
- クリフォード・ストール
- 天文学者。「カッコウはコンピュータに卵を産む」の著者。
- 物理学者。カリフォルニア大学バークレー校教授。
脚注
- ↑ J. L. Heilbron, Robert W. Seidel, Bruce R. Wheaton, Deflecting Physics for War Lawrence and His Laboratory LBL Newsmagazine, Fall 1981