ロングソード
ロングソード (Long sword) は、西ヨーロッパの刀剣の一種。狭義には中世後期に一般化した剣の類別である[1][2]が、広義には西ヨーロッパの刀剣史上に存在するあらゆる刀剣を「長さ」のみで類別した名称である[2]。本項では主に狭義のロングソードについて解説する。
狭義のロングソードはローマ帝国滅亡後の民族移動時代にノルマン人やヴァイキングが用いた剣が原型とされ[1][2]、11世紀から16世紀に掛けて使用された[1]片手用の剣[1]。長剣（ロングソード）という名称を当てられてはいるが、これは脇差に対して打刀を「大刀」（だいとう）と呼ぶのと同じく、ショートソードやダガーなどとの対比で長いとされているだけであって、特別に長い剣を指しているわけでは無く[1]、ほかの剣との差別化のための便宜上の名称である[1]。
形状と歴史
ロングソードは作られた年代によって形状の特徴が異なり、それによって大きく2つのグループに分類される[2]。全長は初期のものが80cmから90cm[3]、後期のものが80cmから1m[3]で、どちらも真っ直ぐな両刃の刃を備える[1][2]。
1050年から1350年代[2][3]までの初期のロングソードは、幅広（3cmから5cm）で肉厚の刃を持っており[2][3]、軽量化のために剣身の腹部分に幅の広い樋が彫られている[2]。後期のロングソードに比べて刃が幅広、肉厚なのは、当時鋼の製法が確立しておらず[2][3]、刀身部分を太く厚くすることで強度を保っていたためである[1]。刀身部分の強化には焼入れ法という技術を用いたが[2][3]、この方法では刃の表面しか硬化させることができなかったため[2][3]、長く使用すると硬化した皮膜がはがれて強度が落ち[1][2][3]、軟らかい芯部分のせいで刃が（折れるのではなく）曲がってしまうという欠点があった[1][2][3]。
1350年から1550年[2][3]に作られた後期のロングソードは、鋼が用いられるようになったことで[1][2][3]、初期のロングソードと比べ細く薄い刃を持ち軽量化が行われている[2][3]。この形状の変化は馬上で戦う騎士たちへの配慮でもあり[2][3]、細長く鋭い刃は切るよりも馬上から突くことに適している[2][3]。ロングソードはこの時代の主要な剣の一種であり[2]、宗教的な影響を受けて[2]十字架に見立てた形状に作られ[2]、神聖な武器として[2]当時の高位の騎士たちの中にはロングソードを用いる者が多かった[2]。また、騎士の叙任の際に剣を用いるのもキリスト教の影響である[2]。
脚注
- ↑ 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 大波篤司 『図解 近接武器』 新紀元社、2006年、54 - 55ページ、122 - 123ページより。
- ↑ 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 2.11 2.12 2.13 2.14 2.15 2.16 2.17 2.18 2.19 2.20 2.21 2.22 2.23 市川定春 『武器と防具 西洋編』 新紀元社、1995年、10 - 13ページより。
- ↑ 3.00 3.01 3.02 3.03 3.04 3.05 3.06 3.07 3.08 3.09 3.10 3.11 3.12 3.13 市川定春 『武器事典』 新紀元社、1996年、74 - 77ページより。
