ヤマノイモ
ヤマノイモ(山の芋、学名:Dioscorea japonica)は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草。または、この植物の芋として発達した担根体のこと。
古くは薯蕷と書いてヤマノイモと読んだ。また、ヤマノイモ属の食用種の総称ヤム(yam)をヤマノイモ、ヤマイモと訳すことがある。
日本原産、学名は「Dioscorea japonica」であり、粘性が非常に高い。ジネンジョウ(自然生)、ジネンジョ(自然薯)、ヤマイモ(山芋)とも呼ぶ。
ナガイモは、別種である。
特徴
北海道南西部[1]から本州・四国・九州および、朝鮮半島、中国に分布する雌雄異株のつる植物で、細長いハート形の葉を持ち、夏には葉腋から穂状の花序を付ける。果実は大きな三つの陵があり、それぞれの陵が中に種子を含んでいる。種子のほかに、葉腋に発生するむかごによって栄養生殖する。地下には一本の芋がある。芋は地下深くへとまっすぐに伸び、1メートルを超えることもある。地上部の成長にしたがって芋は縮小し、秋には新たな一本の芋と置き換えられる。赤土土壌で採れたものが、風味がよいとされる。
採取・栽培
元来は野生の植物であり、かつては山へ行って掘ってくるものだった。
秋になって地上部が枯れる頃が芋の収穫時期である。枯れ残った蔓を目当てにして山芋を探す。芋を掘るには深い穴を掘らねばならないので、なるべく斜面の所を探す。掘る道具は掘り棒・芋掘り鍬と呼ばれる大人の背丈ほどの鉄の棒で、先端が平らになったようなものを使う。蔓が地面に入り込んだところを特定し、その周辺を深く掘り下げて芋を掘り出す。先端まで掘り出すにはかなりの注意と忍耐が必要になる。うまく掘り出せた場合、蔓の先端に当たる芋の端を残して、穴を埋めるときに一緒に埋めておけば翌年も芋が生育し、再び収穫することができる。
現在ではむかごの状態から畑で栽培されており、流通しているのは栽培ものが多い。収穫しやすいように、長いパイプや波板シートを使って栽培している。
なお、天然のもの(自然生・自然薯)は、掘り出した後の孔が放置されると危険であったり、掘り出す行為そのものが山の斜面の崩壊を助長すること等の理由から、山芋掘りが禁止されている場合が多い。
意図せず庭に自然に生えてしまった場合などは完全な駆除が難しいため、注意が必要である。
利用法
食用
長く伸びる芋を食用にする。この芋に含まれるデンプンは非加熱状態でアルファ化しているため生食でき、すりおろしてとろろにする調理法が代表的。ナガイモと比較すると遥かに粘り気が強く、普通にすりおろしただけだと餅や団子のようになり食べづらいため、白醤油や出汁などを加えてのばす方法が一般的である。とろろをパック詰めした商品(冷凍)もある。
薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)、かるかん、きんとんなど、和菓子の材料にもなる。製菓用の粉末状の製品もある。
むかごは主に加熱調理して食用にするが、生食も可。
薬用
“山薬(さんやく)”は本来はナガイモの漢名だが、皮を剥いたヤマノイモまたはナガイモの根茎を乾燥させた生薬もこう呼ぶ。これは日本薬局方に収録されており、滋養強壮、止瀉、止渇作用があり、八味地黄丸(はちみじおうがん)、六味丸(ろくみがん)などの漢方方剤に使われる。
類似している植物
ヤマノイモ科の植物はトコロ種など野生種が数種あり、いずれもよく似ている。むかごを作るものもあるが、食用にならないものもある。
近年、高知県(2006年(平成18年))や静岡県(2007年(平成19年))で、ユリ科の鑑賞用植物のグロリオサの球根をヤマイモと間違えて食べ、死亡する事故が起こっている。葉の形は似ていないが、球根の形状が似ている。
ナガイモ
ナガイモと同じような食べ方も可能なため、混同して売る店舗も見られるが、別種であり、風味にも大きな違いがある。
中国原産で17世紀に日本に移入されたナガイモ(D. batatas)やダイショ(D. alata)のことをヤマノイモ、ヤマイモと呼ぶことがある。
小売店などでは本項で述べるヤマノイモ(自然生、自然薯)と、ナガイモを混同して販売している例を見掛けるが、ナガイモはヤマノイモ(自然生、自然薯)と異なり日本原産の野菜ではなく、染色体の数も異なる。
関連項目
脚注
外部リンク
- ヤマノイモ(薯蕷,野山藥) 江戸時代の植物図鑑(長野電波技術研究所)