マスグレーヴ家の儀式

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テンプレート:Portal テンプレート:Infoboxマスグレーヴ家の儀式」(マスグレーヴけのぎしき、The Musgrave Ritual)は、イギリスの小説家、アーサー・コナン・ドイルによる短編小説。シャーロック・ホームズシリーズの一つで、56ある短編小説のうち18番目に発表された作品である。イギリスの「ストランド・マガジン」1893年5月号、アメリカの「ハーパーズ・ウィークリー」1893年5月13日号に発表。同年発行の第2短編集『シャーロック・ホームズの思い出』(The Memoirs of Sherlock Holmes) に収録された[1]

あらすじ

シャーロック・ホームズワトスンと出会う前、探偵業を始めてすぐの頃の事件。ホームズの大学時代の友人だったマスグレーヴの、一族に伝わる奇妙な儀式の謎を解き、突然消えた執事を追う。

マスグレーヴ一族はイギリスでも最も古い貴族の末裔で、ホームズの友人でもあったレジナルド・マスグレーヴ氏は地方選出議員となっていた。ある夜レジナルドは、屋敷の名物執事であるブラントンが、書斎で家の古文書である儀式文を読み漁っているのを見つけ、1週間後までに出て行くようクビを言い渡す。

3日後、ブラントンは忽然と屋敷から姿を消し、女中のレイチェル・ハウェルズが発狂してしまう。さらに3日目、看病している隙に今度はレイチェルが姿を消してしまい、足跡を追うと池に身を投げたことがわかった。池をさらうと、死体は上がってこなかったが、代わりにさびて変色した金属の塊が上がってきた。

ホームズはマスグレーヴ家の儀式文が何か重要なものを隠している場所を示している問答だと推理し、儀式文からマスグレーヴ家の地下蔵へ行き当たる。蔵の中には、忽然と姿を消した執事のブラントンの死体があった。

不可解な点

テンプレート:出典の明記

  • 事件の起こる200年以上前、1650年代に書かれた儀式文から謎を解くのであるが、儀式文には大木の影を目印にする記述がある。いくら大木といえど、200年間に全く成長しないことが考えられるだろうか。
  • 最大の不可解な点は、この事件で見つかった、チャールズ1世のものとされる歴史的に非常に重要な王冠を、マスグレーヴ家が所有することを国から認められたことである。

備考

  • ホームズの私生活に関する、最も興味深い記述があらわれる作品である。冒頭の記述に従えばホームズは、部屋が散らかっていても平気の平左、読みかけの手紙をジャックナイフで暖炉の上に刺しておく、葉巻を暖炉用石炭入れの中に、刻み煙草をペルシャ風スリッパの中に入れておく、などのことをしていた。どこを当たっても見つからなかった物が、事もあろうにバターケースの中から(バターまみれで)見つかる、といったこともあったという。そして最も有名な彼の奇行の一つ、引き金を軽くしたリボルバーでボクサー式雷管付き実包200発を再装填を繰り返して壁目がけて連射、「VR」の文字(「ヴィクトリア女王」のイニシャル)を弾痕で書いてみせた逸話は、ここで語られている。乱雑ぶりに堪りかねたワトスンが片付けを提案、そこでマスグレーヴ家にまつわる奇妙な出来事絡みの品を発見。さすがに興味を持ち、片付けそっちのけでホームズから内容を聞き取る事になった。
  • グラナダ版では、ホームズの過去の話ではなく現在の事件として脚色されたため、ワトソン博士も一緒に行動している。レイチェルは失踪し、ホームズはどこかでひっそり暮らしているだろうと推測するが、そのころ池から彼女の死体が発見される。

脚注

  1. ジャック・トレイシー『シャーロック・ホームズ大百科事典』日暮雅通訳、河出書房新社、2002年、345頁

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