ホイヘンス=フレネルの原理
ホイヘンス=フレネルの原理(ホイヘンス=フレネルのげんり、テンプレート:Lang-en-short)[1]、または単にホイヘンスの原理(ホイヘンスのげんり、テンプレート:Lang-en-short)は波動の伝播問題(遠方場の極限や近傍場の回折や)を解析する手法である。ホイヘンス=フレネルの原理によると、前進波の波面の各点が二次波とよばれる新しい波の波源となり、全体としての前進波は(既に伝播した媒質から生じる)全ての二次波を重ね合わせたものとなる。この波の伝播の考え方は回折のような様々な波動現象の理解を助ける。
例えば、2つの部屋が開いた出入口のみで繋がっており、一方の離れた部屋の角で音が鳴ったとする。するともう一方の部屋にいる人には出入口の所で音が鳴ったように聞こえる。2つ目の部屋のみを考えると、出入口の地点での振動する空気は音源である。障害物の端を通る光にも同じことがいえるが、可視光は波長が短いために観測が難しい。
ホイヘンス=フレネルの原理は1678年にオランダの物理学者クリスティアーン・ホイヘンスが元となるホイヘンスの原理を発見し、1690年に著書"Traite de la lumiere"に記した[2]。オリジナルのホイヘンスの原理では後進波が存在しないことを説明できなかったが、フランスの物理学者オーギュスタン・ジャン・フレネルが1836年に修正を加えてこの問題点を解決した。その後1882年にグスタフ・キルヒホフがヘルムホルツ方程式を基礎としたフレネル=キルヒホフの回折理論にて理論的な説明を与えた。
ホイヘンスの原理
オリジナルのホイヘンスの原理では、伝播する波動の次の瞬間の波面の形状を考える時、波面のそれぞれの点から球面状の二次波(素元波)が出ていると考える。この二次波の包絡面が次の瞬間の新たな波面となる。
ホイヘンスの原理は直感的に回折の現象をうまく説明できる。しかし、厳密な回折の計算を行う時、フレネル回折の式から回折現象は干渉の一部であるとみなされるようになった。またあくまで直感的なものであったので、「波の進行方向の後ろの素元波の包絡線に、なぜ次の波面(後進波)ができないのか?」などのホイヘンス自身にも説明できない問題点があった。
この問題点は後にオーギュスタン・ジャン・フレネルが二次波の干渉(重ね合わせ)を考慮することで解決した。現在では単に「ホイヘンスの原理」というと、この問題点を解決したホイヘンス=フレネルの原理を指すことが多い。
単スリット回折
ホイヘンスの原理の一般的な応用は、平面波(光、ラジオ波、X線や電子線など)が任意の絞りを通過する場合である。ホイヘンスの原理によれば、穴のそれぞれの点が点源として働き、点源からは全ての方向に球面状に光が広がる。絞り上の全ての点源からの波の和が積分モデルや数値モデルで計算される。
単スリット回折を考える。単スリットを通して離れたスクリーンへ光を照射する。ここでスクリーン上のどの地点に暗い縞が現れるかを計算しよう。次にこの幅広いスリットをより多くの狭いスリット(サブスリット)で置き換え、それぞれのスリットによって生成される波を加える。2つの小さなスリットの場合には光路が<math>\lambda/2</math>だけ異なる場合に(位相が180°異なり)干渉して弱め合う。3つのスリットによる3つの波の場合についても位相ベクトルやそれに似た波の重ね合わせの計算により、位相が120°だけ異なるときに打ち消し合い、よってスクリーン上の点とスリットの光路差は<math>\lambda/3</math>だけ異ならなければならない。4つのスリットの場合も同様である。1つの幅広いスリットを無限のサブスリットで近似する極限では、スリットの端からの光路差が正確に<math>\lambda</math>だけ異なる場合に干渉して完全に打ち消し合う(よってスクリーンには暗い縞が現れる)。
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参考文献
- ↑ Longhurst RS, Geometrical and Physical Optics, 2nd Edition, 1968, Longmans [London]
- ↑ 1911 Encyclopedia Britannica 11th edition