フリー・ジャズ
フリー・ジャズ(テンプレート:Lang-en-short)は、ジャズの(演奏形態及び奏法についての)表現総称のひとつ。
目次
概要
1950年代後半以降に発生した、いかなる西洋音楽の理論や様式にも従わないという理念の、一連のジャズの総称である。南部テキサス州出身のオーネット・コールマンは、ニュー・オーリンズやバトン・ルージュで演奏したり、ピー・ウィー・クレイトンとともにロサンゼルスへ演奏旅行をしたりしていた。そのオーネットが、ドン・チェリーやチャーリー・ヘイデンとともにニューヨークの5スポット・ジャズ・クラブでフリー・ジャズを演奏し始め、ジャズ界に一大センセーションを巻き起こした。オーネットの革新的フリー・ジャズに続いたのが、サン・ラやセシル・テイラーらのジャズマンだった。他にもファラオ・サンダース、アーチー・シェップ、アルバート・アイラー、アート・アンサンブル・オブ・シカゴらのフリー・ジャズに取り組むミュージシャンが登場した。
- フリー・ジャズは、「モード・ジャズまでのモダン・ジャズの理論の束縛からの自由」であるとか、「表現の自由」であるなどといわれる。
- ピアノを拳で叩くように弾く「パーカッシブ奏法」や、サックスの絶叫奏法ともいうべき「フリーキー・トーン」なども、この流れの中で出てきた演奏法である。
- 自由な即興演奏を「フリー・インプロビゼーション」、自由な束縛のない演奏形式を「フリー・フォーム」というが、ジャズの範囲でいう時には、フリー・ジャズと同義で用いられることも多い。フリー・ジャズの全盛期は1960年代であり、1970年代半ばのフュージョンの登場以後、フリージャズは衰退していった。
批判と現状
古典的、伝統的ジャズに傾倒している聴衆の中には、「理解できない」「音楽として認めない」という者もかつてはいた。
だが、ハード・バップでの行き詰まりを打開したジャズの流れとして、モード・ジャズと並んで挙げられることが多い。また、現在では広く認知され、ファンも多い。
類似表現
- アバンギャルド・ジャズ(前衛ジャズ)
- 同時期に発生したジャズのうち、現代音楽的手法に基づいた演奏スタイルで、メロディや和音、リズムが自由なジャズ。
- ロフト・ジャズ
- やや年代が下って、当時の若手前衛ジャズ演奏家たちなどによって行われた前衛ジャズを指す。傾向いかんにかかわらず、厳密に区別されている。
音楽理論的側面
1950年代後半から1960年代
オーネット・コールマンやジョン・コルトレーンにより、ビー・バップ・スタイルの行き詰まりを打開するために、既成の概念(形式、調性、メロディ、コード進行、リズム、4ビートなど)を全て否定するスタイルが開拓された。この試みは、既成の概念をただ否定するばかりで、結果的に音楽的側面での進歩は生まれなかった[1]。
1970年代
ポスト・フリー(フリー以降)の時代には、フリー・ジャズがただ既成の概念を否定していたのに対し、既成の概念を否定しつつ新しい秩序を模索するという試みが始まった。フリー・ジャズで一度否定されたコードやモードを、新しい秩序の中で利用する工夫が行われている。
- ドミナント・モーションを持たないコード進行を主体とするスタイル。
- 旋法の手法をさらに発展させたスタイル。
- コンポジット・モードと呼ばれる新しいモードを創作したり、モーダル・フレージングを発展(アッパー・ストラクチャ・トライアドの応用やペンタトニック・スケールの応用など)させたり、複旋法(ポリ・モード)を使用したりする。
ポスト・フリーは音楽的にはクラシックの現代音楽と同じ精神を持っている[2]。
主なアーティスト
- オーネット・コールマン
- ドン・チェリー
- チャーリー・ヘイデン
- アーチー・シェップ
- ローランド・カーク
- アルバート・アイラー
- スティーヴ・レイシー
- エリック・ドルフィー
- セシル・テイラー
- アート・アンサンブル・オブ・シカゴ
- サン・ラ
- ファラオ・サンダース
- ジョン・コルトレーン
脚注
- ↑ 小山大宣『JAZZ THEORY WORKSHOP 中・上級編』武蔵野音楽学院出版部、1980年、98頁、ISBN なし
- ↑ 小山大宣『JAZZ THEORY WORKSHOP 中・上級編』武蔵野音楽学院出版部、1980年、99頁、ISBN なし
参考文献
関連項目
- BYGアクチュエル・レコード
- ESPディスク・レコード
- AACM(音楽家団体)
- インパルス・レコード
- アトランティック・レコード
- ヴァーヴ・レコード
- アミリ・バラカ (リロイ・ジョーンズ)
- 植草甚一
- 阿部薫
- 高柳昌行
外部リンク
- フリー・ジャズ特集:ジャンル虎の穴 - OnGen(2007年4月30日時点のアーカイブ)