フランツ・フェルディナンド (バンド)
フランツ・フェルディナンド(Franz Ferdinand)はスコットランド、グラスゴー出身のロックバンド。バンド名の由来は、第一次世界大戦のキッカケとなったサラエヴォ事件で暗殺されたフランツ・フェルディナント大公からで、響きの良さから選んだとのこと。なお、日本の音楽業界では「フランツ・フェルディナンド」の表記で定着しているため、本稿もそれに従う(英語の発音に従えば「フランツ・ファーディナンド」)。
来歴
同郷グラスゴーのアート系大学の同期であったアレックスとボブが中心となり、“女の子が踊れるような音楽を作る”という理想のもと、2001年にバンドを結成。そのまま学内や地元のパブなどで演奏を始め、コツコツとスコットランドのインディ・シーンで活動を開始。ほどなく「ダーツ・オヴ・プレジャー」がインディ・ファンから注目を集めると、その直後に発表されたシングル「テイク・ミー・アウト」が爆発的な反響を呼び、アルバム・デビュー前にも関わらず、NME誌を中心にメディアが挙って彼らを取り上げ、大型新人として全英の注目を集めた。
2004年に発表したデビュー・アルバム『フランツ・フェルディナンド』は本国イギリスのみならずヨーロッパ各国、そしてアメリカでも爆発的な評判を呼ぶ作品となり、トータルセールスは400万枚を超え、グラミー賞ノミネートを始め、ブリット・アワード・マーキュリープライズ・NMEアワードという英国3大音楽賞を新人としては史上初めて同時に受賞する快挙も達成。
翌2005年リリースの2nd『ユー・クッド・ハヴ・イット・ソー・マッチ・ベター』は初登場で全英1位を獲得し、同作からカットされた「ドゥ・ユー・ウォント・トゥ」、「ザ・フォーラン」といったキラー・チューンのシングルヒットも続き、ロック/クラブ双方のリスナーからも支持され、人気を確実なものとした。今では2000年代にデビューしたバンドでも、とりわけ同時代のUKロックシーンを代表するバンドのひとつとして認められる存在である。
音楽性
アート・スクール的でポップな編集感覚溢れるそのサウンドは「ダンスとポップの垣根を取り払った」と喧伝される。 一見すると、英国伝統のキャッチーなリフとメロディーを持ち合わせるレトロなロックンロール・アンサンブルながら、その内実ではエレクトロクラッシュを通過したダンサブルなリズムを導入し、ダンス・フロアでも機能する「踊れる」バンド・サウンドを実現させる。
ポスト・パンクからの影響を消化した転調ギター・カッティングの多用も特徴だが、最新作ではヴィンテージ・シンセサイザーを駆使したアナログシンセ・ラインへの傾倒もみせるなど、レトロ・フューチャーなシンセポップ・ニューウェーブへの愛着も深い。
日本公演
ここ日本でもデビュー時から注目度が高く、すでにこれまでに多くの来日公演が実現している。初来日は2004年のフジロック・フェスティバルにて。その際は昼間14時台でメインのグリーン・ステージを満員にさせるという盛況ぶりだった。2006年には、デビューからわずか2年でUKアーティストとして史上最短となる武道館公演を実現させ、更には同年のフジロックにて同フェス史上最速でのヘッドライナーにも抜擢されるなど、英国のインディバンドとしては異例ともいえる破格の成功を収めている。
ちなみに、3rdアルバム発売に伴うプロモーションで短期来日した折の2009年2月、1夜限りのショウケース・ギグがZepp Tokyoで行われたが、その際、東京でのライヴの模様をリアルタイムで全国の地方都市の映画館に映像中継し、東京以外のファンにもライヴを披露する実験的な試みを行い話題となった。
さらに同年11月に敢行された日本ツアーにおいて、その東京公演が完全指定席制の東京国際フォーラムにて行なわれたが、演奏終盤に「Ulysses」をプレイした際、サプライズを期していたバンドの扇動により、呼びかけに呼応した多くの後方席の観客らが自らの席を発して最前列の座席脇通路や空スペースに続々浸出し、オールスタンディング制のライブハウス公演と見まごう事態に発展したことも大きな反響を呼んだ(その際は、慌てた会場スタッフが駆けつけて、前列進入防止の柵が急遽設置されるなどの対応に追われることとなった)。
- 『Fuji Rock Festival 04』 7月31日 苗場スキー場
- 2月8日 Zepp Nagoya、9日 Zepp Tokyo、10日 日本武道館、12日 Zepp Osaka
- 『Fuji Rock Festival 06』 7月28日 苗場スキー場
- 2月10日 Zepp Tokyo
- 『Fuji Rock Festival 09』 7月25日 苗場スキー場
- 11月9日 東京国際フォーラム・ホールA、11日 Zepp Nagoya、12日 Zepp Osaka
- 『SUMMER SONIC 12』 8月18日 東京会場(QVCマリンフィールド)、19日 大阪会場(舞洲サマーソニック大阪特設会場)
- 11月19日・20日Zepp Tokyo
- 11月22日Zepp Namba
メンバー
- アレクサンダー・カプラノス (アレックス) Alexander Kapranos (Alex)-ボーカル、ギター、キーボード ‐ バンドのフロントマンであり、主なソング・ライティングを一手に手掛ける。最近ではクリブスの楽曲プロデュースも行っている。ギリシャ系の家系である。
- ニコラス・マッカーシー (ニック) Nicholas McCarthy (Nick)-ギター、キーボード、バックボーカル ‐ アレックスと並び、ほぼツインボーカルとかわらないほどの役割を担う。演奏時には、ギターを胸元よりも高い位置で弾く。イングランド生まれドイツ育ち。スーパー・ファーリー・アニマルズの2009年のアルバム『ダーク・デイズ / ライト・イヤーズ』収録曲「Inaugural Trams」ではドイツ語のラップを披露している。
- ロバート・ハーディ (ボブ) Robert Hardy (Bob)-ベース ‐ 普段もライブも目立たないが、実は裏バンマス的存在。バンド結成の中心人物。
- ポール・トムソン (ポール) Paul Thomson (Paul)-ドラム、ギター ‐ 彼のグルーヴィなドラミングはバンドが掲げる「踊れるロック」の柱。『マチネ』『アウトサイダース』では彼のドラミングが特に発揮されている。
ディスコグラフィ
アルバム
- フランツ・フェルディナンド : 2004年6月02日、全英3位、全米32位、オリコン18位
- ユー・クッド・ハヴ・イット・ソー・マッチ・ベター : 2005年9月28日、全英1位、全米8位、オリコン7位
- トゥナイト : 2009年1月21日、全英2位、全米9位、オリコン6位
- ライト・ソーツ、ライト・ワーズ、ライト・アクション : 2013年8月21日、全英6位、全米24位、オリコン12位
V.A.コンピレーション盤
- 『セルジュ・ゲンズブールに捧ぐ (Monsieur Gainsbourg Revisited)』トラック1、セルジュ・ゲンズブールのカヴァー、「(Song for)Sorry Angel(日本語題『エンジェルの死』)」にジェーン・バーキンとともに参加。日本では2006年11月1日にユニバーサル・ミュージックよりリリース。
エピソード
- フロントを務めるアレックスとニックの2人については、ゲイではと囁かれている。それを臭わせる妖しげな歌詞(特に1stの「Michael」)の楽曲もあり、オアシスのリアム・ギャラガーは「昔いたゲイのポップバンドのメンバーがダイエットして再デビューしたんじゃないのか」など、彼らをネタにした発言をしている。
- ボン・ジョヴィのリッチー・サンボラは彼らのファンであり、「フランツ・フェルディナンドは強烈だ。彼らの曲は大好きだよ。ステージで一緒にプレイしたいね」と話した[1]。
- ブラーのギタリストグレアム・コクソンは、「彼らの音楽は80年代の音楽へのノスタルジアを感じさせる懐かしさがある」とコメント。
- デビュー間もない頃、前座にブロック・パーティーを抜擢してライブを行った。結果的には彼らのブレイクの手助けになった。
- 『ウォーク・アウェイ』をライブで演奏する際、ドラムのポールもギターを担当し、アレックス、ニックとともにトリプルギターの編成になることがある。その場合、ドラムはサポートメンバーが勤める。
- セカンド・アルバム発売後の世界ツアーでは、『アウトサイダース』演奏時に他のバンドの面々をステージ上に登場させ、大勢でドラム乱打を共演するというパフォーマンスを披露した。トリで出演したフジロック06では、ザ・クリブス、ザ・ズートンズ、ASIAN KUNG-FU GENERATIONらを招き、ドラムの乱れ打ちを演じた。そのザ・クリブスは、サード・アルバムを製作するにあたって、プロデューサーにアレックスを起用している。
- 野宮真貴は、彼らについて、「ギターフレーズが往年のトーキング・ヘッズを髣髴とさせる」とコメントしている。メンバーは、トーキング・ヘッズのファンである[2]。また、「シンプルだけどとても計算された音楽」とも述べている。
- 音楽評論に精通しているクリス・ペプラーは、「曲作りには確信犯的なセンスと抜群のアレンジ能力をもっており、それが上質なポップへと結実している」と語り、「今まで会ってきたミュージシャンのなかでも、フランツは一番ナイスガイで好感度はピカイチ」と、その人柄を絶賛している。
- 大成功したイギリスのインディー・ロックバンドの中では、特に下積み時代が長いことで有名。
- アレックスの発言には「ザ・フォールもP.I.Lも僕にはポップに聴こえる」というものがあり、それら実験性が高く一般的には難解とされるバンドを好んで参照しながらも、結果的にポップな楽曲に結実していくという、バンドの端的な姿勢が表れている。
- ポールは、日本のバンドについて造詣が深く、2009年4月17日放送のNHKの「MUSIC JAPAN OVERSEAS」で、フラワー・トラベリン・バンドやボアダムス、UFO OR DIE、Melt-Banana、OOIOO、POLYSICSなどが好きだと語っていた。