バンコク語
バンコク語(バンコクご、ภาษากรุงเทพ)はタイ王国のバンコクなどの首都圏で話される。中央タイ語(ภาษากลาง)と混同されるが多少の差異を含む。たとえて言うなら、日本語における、標準語と東京方言の違いである。テレビ(特にニュース)や本では中央タイ語が使われるが、巷の会話ではバンコク語が使われる。ただし、中央語との接点が非常に曖昧なので、タイ人も完全に区別して使用しているわけではない。以下はあくまでテレビで使われている語と、巷で使用されている語との区別であることを断っておく。
中央タイ語との違い
中央タイ語とバンコク語違いには以下のようなものがある。
長母音の短母音化
タイ語 | 意味 | 中央語発音 | バンコク語発音 |
ภาษา | 言語 | phaasǎa | phàsǎa |
ศาสนา | 宗教 | sàatsanǎa | sàtsanǎa |
上記のように、一語の中の各音節に長音が連続したとき、最後の長音節を除き、短母音化する。音節短母音化はタイ語独自の語彙にはみられないが、外来語やサンスクリット語由来の語彙にみられる。
アクセントの変化
タイ語 | 意味 | 中央語発音 | バンコク語発音 |
นาฬิกา | 時計 | naalíkaa | nalikaa |
これも、アクセントが意味を決定するタイ語独自の語彙にはみられない。短母音を持つ音節が高声で発音しにくいために起こることが多い。
音節の省略
タイ語 | 意味 | 中央語発音 | バンコク語発音 |
ประวัติศาสตร์ | 歴史 | prawàttìsàat | prawàtsàat |
こういう省略もサンスクリット語で起きることがある。
子音の発音の変化・消滅
英語や日本語におけるchとshが区別されないので、ชやฉがshで発音されることがある。ร(イタリア語のrの音価を持つ)とล(英語のlの音価を持つ)が区別されず、同様に発音される。また前者のrとlが合成子音で他の子音の後ろに来たとき、消滅する傾向がある。以下はその例である。
タイ語 | 意味 | 中央語発音 | バンコク語発音 |
กลาง | 中心の~ | klaang | kaang |
語の変化
文章の後ろに付け、文章を丁寧にする言葉(日本語で言う「です」、「ます」言葉。)がタイ語にはある。男性はครับ[khráp]を使うが、実際にはคับ[kháp]、ค้าบ[kháap]がしゃべり言葉として使われる。女性もค่ะ[khâa]が使われるが実際にはฮ่า[hâa]と発音している。また子供語のจ้ะ[jâ]から派生した、จ้า[jâa]もある。このような変化はすべて書くにいとまがないので、このあたりで説明を終える。
独自の表記法
日本語で「携帯電話」を「ケータイ」と発音通りに書くように、また英語では「See you tonight.」を「CU 2nite」と書いたりするが、バンコク語にもこのような書き方がある。このような方法は、日本語や英語と同じように主に、携帯電話のメールやインターネットを中心に広まっていった方法であるため、バンコク語とは言い切れないが、首都の若者を中心に広がっていったものである。例としてはก็(だから~)をก้อと書いたり、หนู(あたし。若年女性の一人称)をนู๋(注:この表記は実際にはあり得ない表記)と書いたりする。
まとめ
重ね重ね記すが、これはあくまで標準語とは認められない範疇の中央語で、書き言葉やテレビで使われていないと言うことが前提であり、地方出身者でもこれらのしゃべり方があるので、バンコク語ではあるが「バンコク独特の」言葉ではない。