ハチミツ (アルバム)
『ハチミツ』は、日本のロックバンド・スピッツの通算6作目のオリジナルアルバム。1995年9月20日にポリドールより発売された。現行盤はユニバーサルミュージックから発売・販売されている。
目次
概要
制作背景
1993年の『Crispy!』以降3枚目となる笹路正徳との共同プロデュース作で、前作『空の飛び方』に引き続き、宮島哲博がエンジニアを手掛けている。バンドにとって初めてのトップ10シングルとなったミリオンセラー「ロビンソン」と、それに並行する形で100万枚近くを売り上げた「涙がキラリ☆」の2枚の大ヒット曲をフィーチャーしており、シングルリリース候補に挙がっていた楽曲も複数収録されている。
アルバムの制作にあたって笹路は、フロントマンの草野マサムネ以外のメンバーに対しても新作のために自作曲を用意するよう促した。[1] 結局草野の単独作のみでアルバムは構成されているものの、当初はベーシストの田村明浩が初めて書いた楽曲も収録される予定であった。田村の作品は次回作『インディゴ地平線』で初収録となったが、彼が本作に持ち寄っていたのはそれとはまた異なる曲だったという。
2007年に刊行されたバンドの回顧録『旅の途中』の中で、草野は本作のクオリティについて、制作に苦慮した次作『インディゴ地平線』と対比する形で「満足のいく」出来映えであったと述べている。[2]
楽曲に関して
- 「ハチミツ」
- 表題曲。サビ以外が変拍子で構成されている。今までになかった曲ということで、「珍曲」というワーキング・タイトルで呼ばれていた。
- 「歩き出せ、クローバー」
- 草野が映画『フォレスト・ガンプ』を見て作った曲。当時阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件があったため、「生きること」をテーマにしている。歌詞中に登場する「クローバー」とは、幸せの象徴。このアルバムで唯一、レコーディングで草野がギターを弾いている。仮タイトルは「石神井への道」。
- 「ルナルナ」
- シングル「涙がキラリ☆」のカップリング曲としてすでに発表されていた曲。曲名の「ルナルナ」とは、手塚治虫の漫画 『ブラック・ジャック』に出てくる白いライオンの子供から取ったもの。このタイトルに特に意味はないらしく、響きの良さから使ってみたという。当初シングル候補であった。仮タイトルは「恋のアルマジロ」。
- 「愛のことば」
- 当初はシングル候補でもあった曲で、PVも作られたが、スピッツらしくないという理由で除外されている。仮タイトルは「スウェード」。後にテレビドラマ『あすなろ三三七拍子』の主題歌として使用される。
- 「トンガリ'95」
- スピッツ (Spitz)という単語はドイツ語で「とがっている」という意味であり、サビの歌詞で「とがっている」と連呼するこの曲はメンバー曰く「スピッツのテーマソング」。始めはテンポも倍の速さであった。仮タイトルは「トンガリユース」
- 「あじさい通り」
- このアルバムのCMのBGMに使用された曲。仮タイトルは「ポトス」。
- 「Y」
- 別れの歌でタイトルの「Y」とは、道が分かれるという記号的な意味であるが、メンバーの話によると他にも色々な意味があるという。曲自体は前作『空の飛び方』から存在していたが、うまくアレンジができずに本作にまわされた。途中で阪神・淡路大震災があったため、応援の意味をこめて前向きな歌詞となった。仮タイトルは「ハートブレイク食堂」。後にテレビドラマ『白線流し』の挿入歌、また、アニメ『ハチミツとクローバー』第1期第14話の挿入歌としても使用された。
- 「グラスホッパー」
- 「アルバムにアップテンポな曲がもう一曲ほしい」ということになり、最後に作られた作品。これにより田村の自作曲が除外されてしまった。なお曲名のグラスホッパーは、2001年に分社化したスピッツのマネージメント事務所の名前にもなった。仮タイトルは「レモン」。
- 「君と暮らせたら」
- この曲を最後にしたのは、ここから再びスタートする感じで終わりたかったからだという。
リリース、アートワーク
ジャケットの被写体は、当時、森永乳業の「サンキストゼリー」のコマーシャルに出演していた守屋綾子である。彼女の名は、CM出演時の役にちなんで歌詞カードにはミドルネームに“melon”とクレジットされている。守屋の顔は全ての写真において隠されているが、初回盤限定で付けられたスリップケース及び表題曲のミュージック・ビデオでは顔を確認することができる。
1997年2月2日は、Spitz Analog Disc Collection Vol.2として、グリーン・クリア・ビニール仕様のアナログ盤がリリースされた。このLPはCDとは曲順が大きく異なり、やまだないとによるオリジナルコミックが新たにフィーチャーされている。
本作は、バンドが2000年代以降のリリースで常に重用しているエンジニアのスティーヴン・マーカッセンによってリマスタリングが施され、1990年代に発表された他のすべてのスタジオ録音作と同時に、2002年10月16日に再発売された。このデジタル・リマスター盤はオリジナルの通常盤のデザインを踏襲しており、音楽評論家の能地祐子による寄稿文が印刷された1枚の紙がスリーブノーツに封入されている。
ミュージック・ビデオ
テンプレート:External media このアルバムからは、先行シングル「ロビンソン」「涙がキラリ☆」と表題曲「ハチミツ」、ならびにシングルの候補に挙げられていた「愛のことば」のプロモーション・ビデオが撮影された。また、「あじさい通り」が背景に流れる15秒のテレビスポットも制作された。これらの映像は、バンドのメジャーデビューからおよそ20周年後の2011年にリリースされた3枚組のDVDボックスセット『ソラトビデオCOMPLETE 1991-2011』で包括的に商品化されている。また、YouTubeに開設された公式チャンネル上においては、4曲すべてのPVがフルコーラスで公開されている。[3]
作品への評価と反応
チャート成績、音楽賞
商業的な成功を収めた2つのリード・シングルに引き続く形で、『ハチミツ』は発売後ただちにオリコンの週間アルバムランキングで首位を獲得した。[4]本作はスピッツにとって初めてチャートで1位を記録した作品であり、100位以内に合計およそ1年間残り続けた。[5] 発売時期の関係からオリコンの年間ランキングでは集計分が2年にばらけたが、1995年から96年の足掛け2年に渡ってベストセラーの上位50枚以内にエントリーしている。160万枚以上の出荷により、このアルバムは1997年4月に日本レコード協会によってクワドラプル・プラチナに認定された。[6]実際にはチャート上でより多くの枚数を売り上げており、バンドにとっては本作が2014年時点で最も売れたオリジナル・アルバムとなっている。[7][8]
1995年の大晦日に発表された第37回レコード大賞では、優秀作品賞を受賞したシングル「ロビンソン」と共に、本作がアルバム部門に選出された。[9]
文化的な影響
羽海野チカが2000年代初頭に発表した漫画『ハチミツとクローバー』のタイトルは、本作とスガシカオのアルバム『Clover』(1997年発表)が並んであるのを見た作者の経験に由来している。2005年にフジテレビ系列でこの漫画のアニメ版が放映された際には、このアルバムのタイトルトラックが第1期第1話、「Y」が第1期第14話の挿入歌として使用されている。
収録曲
作詞・作曲: 草野正宗/編曲・プロデュース:笹路正徳、スピッツ
- CD
- 「ハチミツ」 – 3:05
- 「涙がキラリ☆」 – 3:58
- 「歩き出せ、クローバー」 – 4:25
- 「ルナルナ」 – 3:39
- 「愛のことば」 – 4:21
- 「トンガリ'95」 – 3:04
- 「あじさい通り」 – 5:12
- 「ロビンソン」 – 4:20
- 「Y」 – 4:23
- 「グラスホッパー」 – 3:28
- 「君と暮らせたら」 – 3:16
LP | |
---|---|
A面
B面
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