トロイ (映画)
テンプレート:Infobox Film 『トロイ』(テンプレート:Lang-en)は2004年のアメリカ映画。古代ギリシアのトロイア戦争を元にした歴史戦争映画である。
概要
ホメロスの叙事詩『イリアス』などで描かれた神々と英雄の織り成す神話としてのトロイア戦争ではなく、架空の人間のドラマとしてのトロイア戦争を描いているが興行的には成功を収めている。
作品内容及び登場人物が人間性を強調して描かれているため、主人公アキレスも神の庇護を受けた英雄としてではなく、ごく普通の人間の武将として扱われている。
ストーリー
トロイの王子パリスとスパルタの王妃ヘレンの禁じられた恋を口実に、ヘレネの夫であるスパルタ王メネラオスと、ギリシアの諸王国の盟主、メネラオスの兄であるミュケナイ王アガメムノンはトロイを征服しようとする。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | |
---|---|---|---|
劇場公開 | テレビ朝日[1] | ||
アキレス | ブラッド・ピット | 咲野俊介 | 山寺宏一 |
ヘクトル | エリック・バナ | 寺杣昌紀 | 内田直哉 |
パリス | オーランド・ブルーム | 平川大輔 | |
オデュッセウス | ショーン・ビーン | 大塚芳忠 | 磯部勉 |
プリアモス | ピーター・オトゥール | 大木民夫 | 羽佐間道夫 |
ヘレン | ダイアン・クルーガー | 田中敦子 | 岡寛恵 |
テティス | ジュリー・クリスティ | 北浜晴子 | -[2] |
アガメムノン | ブライアン・コックス | 内海賢二 | 石田太郎 |
メネラオス | ブレンダン・グリーソン | 稲葉実 | 石田圭祐 |
ブリセイス | ローズ・バーン | 小林さやか | 弓場沙織 |
アンドロマケ | サフロン・バロウズ | 野沢由香里 | 八十川真由野 |
アイアス | タイラー・メイン | 斎藤志郎 | |
エウドロス | ヴィンセント・リーガン | 内田直哉 | 牛山茂 |
パトロクロス | ギャレット・ヘドランド | 加瀬康之 | 竹若拓磨 |
ネストル | ジョン・シュラプネル | 内田稔 | |
トリオパス | ジュリアン・グローヴァー | 坂口芳貞 | 青野武 |
グラウコス | ジェームズ・コスモ | 村松康雄 | 藤本譲 |
ナレーション | 屋良有作 | - |
- その他の声の吹き替え:石住昭彦/長嶝高士/仲野裕/辻親八/石井隆夫/桐本琢也/岩田安生/原田晃/本田貴子/里見圭一郎/魚建/園部好徳/近藤広務/田中一永/藤本たかひろ/藤井啓輔/市川まゆ美/村上あかね
- 日曜洋画劇場版 地上波初 初回放送 2007年4月29日
評価
監督を務めたウォルフガング・ペーターゼンは、ホメロスの『イリアス』からインスピレーションを受けた、としている。しかし、この作品は、トロイ戦争の伝承と様々な点で異なる事が指摘されることが多く、批判の対象となった。映画自体が完全なフィクションでありながら、元ネタがあまりに有名であるがゆえに、神話でも歴史でもないというこの映画のスタンスは、視聴者ならびに評論家からはあまり理解されず、受け入れられなかったので、後述のような批判が後を絶たなかった。
しかしながら、トロイ戦争もイリアスもただのモチーフに過ぎないので、映画の内容と神話上の設定ならびにイリアスの違いを論じて批判するのは的外れであるという意見や、登場人物の役回りと設定の変更は、オリジナル映画としては当然であるという肯定的な意見も少なくなかった。このため、作品内容の評価が賛否両論を呼んだにもかかわらず、豪華スター共演で興行的には大成功するという結果となった。
神話との相違点
作品のストーリー展開が伝承と違う事について、『文藝春秋』[3]誌上で塩野七生がこの映画を酷評する評論を書いている。指摘の内容は、以下の3点である。
- 不義を嫌っているはずのアキレスがオデュッセウスの策謀に協力しトロイの木馬に乗ってトロイを攻め落とした事。
- アキレスが弱点のかかと以外にも矢を受けて死ぬ事。
- 脚色について。
また、『イリアス』は、ヘクトルの死で終わっているので、その後の「トロイの木馬」などの陥落のエピソードはその他のトロイ戦争の伝承によっている。これらの伝承と大きく違うのは、以下の2点である。
- アキレスとブリセイスの悲恋が中心に描かれている。
- 神々が一切登場せず、人間世界の視点で話が進む。
他にも、メネラオスが中盤でヘクトルの不意打ちによって死んでしまう点や、アガメムノンがブリセイスに刺殺される点、パリスが死なず、ヘレン、アンドロマケとともに逃亡している点、ブリセイスとヘクトルは従兄弟という設定になっている点などが挙げられる。
そもそも、映画自体が神話を元にせず人間ドラマの観点から制作されているため、『イリアス』で神々が関与する場面は、何らかの形で人間によるフォローが入れてある。事実、「神々」といっても、はっきり名前が登場するのはアポロンとポセイドンくらいで、ポセイドンはたった一度名前が出されるだけである。
- 後半のヒロイン的存在ブリセイスは、『イリアス』では「神官の娘で、アポロンに仕えている少女」程度の扱いであったが、本作ではアキレスが心を開き、深く愛している女性として描かれている。その傍証として、アキレスはトロイア陥落直後真っ先に、メネラオスやヘレネではなく、彼女を必死に探している。
- メネラオスとパリスの死闘で追い詰められたパリスは、『イリアス』ではアフロディテによって助けられるが、映画では兄ヘクトルの足にすがりつき、助けを求め、ヘクトルがメネラオスを殺している。
- アキレスは神の庇護を受けた英雄としてではなく、ごく普通の人間の武将として扱われている。このため、神話ではパリスに弱点のかかとを射られて即死してしまうが、映画ではかかとを射られても致命傷にはならなかったため、全身に矢を浴びて死ぬこととなった。
その他
ブラッド・ピットが当作品に満足していないと噂されると、彼に直接電話をかけて「うちに所属していれば、あんな映画には出演させなかった。」と勧誘したエージェントがいたという。しかし彼は耳を貸さず、エージェントも替えなかった[4]。 2009年には33分の未公開シーンを追加したディレクターズカット版ブルーレイが発売された。
脚注
- ↑ 『日曜洋画劇場』、2010年2月7日放送回など。
- ↑ 日曜洋画劇場版では登場シーンがカットされているため登場しない。
- ↑ 2006「文化破壊という蛮行について」『文藝春秋』84(4):92f.
- ↑ 2006年6月号『日経エンタテインメント!』(日経BP社)