テープドライブ
テープドライブとは、磁気テープを用いる外部記憶装置である。磁気テープは近年では主にデータの世代間バックアップ(アーカイブ)に用いられることの多い記憶媒体である。本項では、単体のテープドライブのほか、テープオートローダーやテープライブラリについても扱う。
特徴
ハードディスクやフラッシュメモリと言ったストレージと比べると、テープドライブには以下のような特徴がある[1]。
- ランダムアクセス性能が非常に低い(例えばファイルごとの読み込み)
- シーケンシャルアクセス性能は非常に高い(例えば世代ごとのデータのアーカイブ)
- ドライブ本体が比較的高価であり、イニシャルコスト(導入にかかる費用)が大きい
- メディア(テープ)が安価である(メディア1つあたりの容量が大きい)
- 光学メディア(CD-Rなど)のように可搬性が高い
- データのバックアップを遠隔地へ送付するようなことが行いやすい
- ドライブが破損してもメディアが無事ならデータは無事である
- 上書き禁止を行うことが難しく[2]、人為的なミスにより重要な情報を消してしまいやすい。
- テープの劣化により読み込めなくなる可能性があり、定期的なメンテナンスを要する
したがってテープドライブは利用頻度が高いデータの記録には向かず、データのアーカイブ(保管)を安価に済ませたい場合に適していると言える。ランダムアクセスの性能が非常に低いことから、データのバックアップで用いる場合にはたいていテープドライブ単体でシステムが構築されることはなく、HDDなどと連携したシステムを構築する。システムの形式により、Disk-to-Tape(D2T)やDisk-to-Disk-to-Tape(D2D2T)のように呼ばれる[3]。これに対して、HDDなどのディスクにバックアップするものをD2Dと呼ぶ。
テープメディアが安価だからといって安易にテープドライブを採用するのではなく、バックアップするデータ量が比較的少ない場合はHDDによるバックアップのほうが結果的に安価になる可能性があることも考慮すべきである。
なお、かつてのテープドライブではブロックごとに読み書きするために頻繁にテープを停止させていたが、現在主流のストリーマと呼ばれるテープドライブでは、テープを停止させず連続した読み書きが可能である。
またランダムアクセスの性能を向上させるため、磁気テープシステムの規格の一つであるリニア・テープ・オープンのバージョン5(LTO-5)において、テンプレート:仮リンク(LTFS)がサポートされた。CDやDVDで行っていることと同様にテープ先頭にデータの目次をつけることでランダムアクセスを行い易くしているものの、HDDなどに比べると劣る。
テープメディア
テンプレート:See 現在の主な用途となるサーバー内のデータのアーカイブでは、もっぱらデータ保存専用のテープを用いる。データ保存用の磁気テープの規格としてリニア・テープ・オープン(LTOと略されるケースが多い)などが一般的に用いられる。
- デジタル・データ・ストレージ (DDS) - デジタル・オーディオ・テープ(DAT)の技術をデータ記憶用に流用したもので導入コストが比較的安価だが、メディアは比較的高価。
- リニア・テープ・オープン(LTO) - データ保存専用に開発されたオープン規格で、特にUltriumと呼ばれる標準規格が主流。導入コストは比較的高いが、メディアは比較的安価。
なおハードディスクやフロッピーディスクが高価だった頃はそれらの代用品としてよく安価な音楽用テープとカセットレコーダーを用いたが、この方式は現在では使われていない。音楽用テープへデータを記録することに特化したレコーダーを日本では特にデータレコーダと呼んだ。
ドライブの種類
テープ読み書き機(テープドライブ本体)の種類と特徴は以下のとおりである[4]。
- テープドライブ - 単体のテープドライブは、CDドライブのようにユーザーがテープメディアの取り出しや挿入を行う。
- テープオートローダ - CDドライブで例えるならCDチェンジャーに当たる。テープの読み書き装置は一つであるが、テープの切り替えに逐一人の手が加わらないためテープの上書きのような人為的なミスを防ぐことができる。
- テープライブラリ - テープオートローダのテープ読み書き装置を複数台にしたもの。テープオートローダより大量のテープを収納でき複数のテープを並列してデータを書き込むことができる。
加えて、複数のテープカードリッジを自動で入れ替える機構を持つテープオートローダとテープライブラリを総称してテープオートメーションと呼ぶことがある。
磁気テープのコンピュータからの操作
Linuxでテープドライブを操作する方法として以下のコマンドが用意されている[5]。なおmt
コマンド以外は、現在テープドライブ以外のファイルシステムに対しても使用できるような拡張が加えられている。
- mt - テープのブロックごとの頭出しなどの操作を行う。
- tar - テープにブロック単位でデータを書き込む際に使用する。なお、コマンド名はTape ARchiveの略である。
- dd - パーティションのイメージをテープに書き込む。
- dump, restore - ファイルシステムのイメージのアーカイブを取る。
仮想テープライブラリ
仮想テープライブラリ(テンプレート:Lang-en, VTL)とはHDDなどで構築されたディスクアレイを仮想的にテープライブラリとして扱うようにしたものである[6]。
ディスクアレイを直接扱わず仮想テープライブラリとして振る舞わせることの大きな利点はテープドライブ向けに設計したシステムが無駄にならずに、ディスクへのバックアップを行う際の利点が享受できることにある。例えば、ランダムアクセス性能が向上するためファイル単位でのリストアが可能になる、テープのメンテナンスが不要になるといった点がディスクへのバックアップの利点である。
脚注・参考
- ↑ http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/0301/07/news001.html
- ↑ WORM機能を用いて対応可能
- ↑ http://storage-system.fujitsu.com/jp/lib-f/tech/backup/technology/
- ↑ http://www.hitachi.co.jp/products/it/server/ha8500/column/no008_p02.html
- ↑ http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/0301/07/news001_2.html
- ↑ http://www.slideshare.net/mktredwell/lto2