スズキ亜目
テンプレート:生物分類表 スズキ亜目(学名:テンプレート:Sname)は、スズキ目に所属する魚類の分類群の一つ。魚類で最多の約10,000種を抱えるスズキ目の中でも最大のグループで、3上科79科の下に少なくとも549属3,176種が記載される[1]。
概要
スズキ亜目はスズキ目に所属する20亜目の中で最も大きな一群であり、スズキ目全体の3割以上の魚類が記載される[1]。スズキ目に含まれる160科のうち、約半数に当たる79科が本亜目に所属する[1]。3上科に細分されるが、アカタチ上科(テンプレート:Sname)はアカタチ科のみ、Cirrhitoidea 上科はタカノハダイ科・ゴンベ科など5科だけを含み、残る73科はすべてスズキ上科(テンプレート:Sname)に分類される。
最も多くの魚種を含むのはハタ科(450種超)で、テンジクダイ科(約270種)がこれに続き、以下ニベ科・ペルカ科・イサキ科・アジ科・チョウチョウウオ科・メギス科・タイ科・フエダイ科の順に大きなグループとなっている[1]。これらの上位10科はいずれも100種以上を含み、合計1,965種はスズキ亜目全体の62%を占める[1]。その一方で26科は1属のみで構成され、そのうちスギ科・ギンカガミ科などの10科は、1属1種の単型となっている[1]。
スズキ亜目の魚類はその多くが海水魚で、純粋な淡水魚はおよそ380種(全体の1割強)に過ぎず、その半数はペルカ科に所属する[1]。
形態
スズキ亜目の魚類は形態の多様性が著しく、すべてのグループに共通する点を示すことはできない[2]。原棘鰭上目や骨鰾上目など、下位の真骨類と比較した場合には、概ね以下の表に示すような形態学的特徴を挙げることができる[1]。これらの特徴の多くは、棘鰭上目の他のグループにも共通するもので、本亜目に限られた形質ではない[1]。また、あくまでも一般的な傾向であり、例外も多数存在する[1]。
下位真骨類 | スズキ亜目 | |
鰭の棘条 | いずれの鰭にも欠く | 背鰭・臀鰭・腹鰭に棘条をもつ |
腹鰭 | 腹の位置にあり、軟条は6本以上 | 胸の位置にあり、1棘5軟条 |
胸鰭 | 基底は水平で、腹部に近い部位にある | 基底は垂直で、体の側面に位置する |
尾鰭 | 主鰭条は18-19本であることが多い | 主鰭条は17本以下で、さらに少ないことが多い |
上顎を縁取る骨 | 主に主上顎骨、一部は前上顎骨 | 前上顎骨 |
眼窩蝶形骨・中烏口骨 | 存在する | 存在しない |
鱗 | 円鱗 | 櫛鱗 |
鰾 | 有気管鰾 | 無気管鰾 |
分類
スズキ目をいくつかの目に細分する分類法もあり、その場合にはここに挙げたスズキ亜目か、それに近い形のものが「スズキ目」となる。「スズキ類」という表現も使われるが、これはスズキ属・スズキ科・スズキ亜目、あるいはスズキ目全般と、様々な範囲に対して用いられる。
本稿では、Nelson(2006)[1]によりまとめられたスズキ亜目の体系を扱う。スズキ亜目の分類基準となる形質には二次的な変異や退化が多く入り混じり、下位分類は不確定なものが多い[1]。それぞれの科をどの亜目に含めるか、またスズキ亜目内部における科同士の分離・統合が盛んに検討されており、以下に示す体系は暫定的なものに過ぎない。
スズキ上科
スズキ上科 テンプレート:Sname は73科524属3,084種で構成される。
- Centropomidae 科 - Snookなど1属12種。
- タカサゴイシモチ科 テンプレート:Sname (テンプレート:Sname) - 8属46種。
- アカメ科 テンプレート:Sname - アカメなど3属11種。
- モロネ科 テンプレート:Sname - ヨーロピアンシーバス・ホワイトバス・ストライプドバスなど2属6種。北大西洋・地中海沿岸に分布し、淡水・汽水・沿岸海域に6種が棲み分ける。
- スズキ科(ペルキクティス科) テンプレート:Sname - オーストラリアンバス・スズキ・オヤニラミなど11属34種。
- 小型-大型の肉食魚で、第1・第2背鰭は連続的。淡水、まれに汽水にも生息する温帯性スズキ類。ケツギョ類はアジア、ペルキクティス類はオーストラリアと南アメリカの各大陸に分布する。
- Percillidae 科 - 1属2種。
- ホタルジャコ科 テンプレート:Sname - ホタルジャコ・アカムツ・オオメハタ・スミクイウオなど8属31種。
- 温帯の深海に生息する比較的小型のグループ。ホタルジャコ属は腹部に発光器官をもち、肛門が腹鰭の基部に近い位置にある。便宜的にここに分類されている種もある。
- カワリハナダイ科 テンプレート:Sname - 1属12種。
- イシナギ科 テンプレート:Sname - 2属6種。オオクチイシナギ・コクチイシナギなど深海性大型魚のグループ。
- ハタ科 テンプレート:Sname - キンギョハナダイ・サクラダイ・クエ・マハタ・アカハタ・ホウセキハタ・ヒメコダイ・ヌノサラシなど3亜科64属475種。
- オニハタ科 テンプレート:Sname - オニハタのみ1属1種。
- オニガシラ科 テンプレート:Sname - 1属3種。
- シキシマハナダイ科 テンプレート:Sname - 2属12種。
- メギス科 テンプレート:Sname - 4亜科20属119種。
- グランマ科 テンプレート:Sname - 2属12種。
- タナバタウオ科 テンプレート:Sname - 2亜科11属46種。
- インド太平洋に分布。大きな口と細長い体を持つ。沿岸の岩礁に生息する。
- ノトグラプトゥス科 テンプレート:Sname - 1属3種。
- アゴアマダイ科 テンプレート:Sname - カエルアマダイなど3属78種。
- ディノペルカ科 テンプレート:Sname - 2属2種。
- チョウセンバカマ科 テンプレート:Sname - チョウセンバカマのみ1属1種。
- サンフィッシュ科 テンプレート:Sname - オオクチバス・コクチバス・ブルーギルなど3亜科8属31種。
- ペルカ科 テンプレート:Sname - ヨーロピアンパーチ・イエローパーチ・パイクパーチなど3亜科10属201種。
- キントキダイ科 テンプレート:Sname - キントキダイ・ホウセキキントキ・クルマダイなど4属18種。
- 世界中の熱帯・亜熱帯海域に18種が知られる。眼球が大きい。口は大きく斜め上に開く。鱗は小さく硬い。食用にする。
- テンジクダイ科 テンプレート:Sname - マトイシモチ・クロイシモチ・テンジクダイ・ネンブツダイなど2亜科23属273種。
- 海水魚が多いが淡水・汽水魚もおり、世界中に300種以上を含む。10cm 以下の小型種が多い。動物性プランクトンなど小動物を捕食し、一般に夜行性。マウスブルーダーで、卵はオスが口の中で保護する。
- ヤセムツ科 テンプレート:Sname - 6属25種。
- キス科 テンプレート:Sname - シロギス(キス)・アオギス・ホシギスなど3属31種。
- インド太平洋に30種ほどが知られるグループ。口が小さく、体つきが細長い。背鰭は二つに完全に分かれ、尻鰭が前後に長い。海岸近くに生息し、主に底生動物を食べる。食用種が多い。
- キツネアマダイ科 テンプレート:Sname - キツネアマダイ・アカアマダイなど2亜科5属40種。
- ほとんどすべてが海水魚で、水深 50-200m 程度のやや深い海底に生息する。海底の穴に居住し、たいていは自分でやわらかい砂地に穴を掘る。動物性プランクトンや底性の無脊椎動物を食べる。額が突出し、背鰭が前後に長く連なり、臀鰭もやや長い。アマダイ亜科とキツネアマダイ亜科に分けられるが、これらの2つのグループは形態も異なっており、系統的には別の科にするのが望ましいという説があり、その場合には、アマダイ科 テンプレート:Sname をキツネアマダイ科から分ける。
- アクタウオ科 テンプレート:Sname - アクタウオのみ1属1種。
- ディノレーステース科 テンプレート:Sname - ロングフィンパイクのみ1属1種。
- ムツ科 テンプレート:Sname - 1属3種。
- オキスズキ科(アミキリ科) テンプレート:Sname - オキスズキのみ1属1種。
- ネーマティスティウス科 テンプレート:Sname - ルースターフィッシュのみ1属1種。
- シイラ科 テンプレート:Sname - 1属2種。
- スギ科 テンプレート:Sname - スギのみ1属1種。
- コバンザメ科 テンプレート:Sname - コバンザメ・クロコバン・シロコバンなど4属8種。
- アジ科 テンプレート:Sname - コバンアジ・イケカツオ・マアジ・ブリなど4亜科32属140種。
- ギンカガミ科 テンプレート:Sname - ギンカガミのみ1属1種。
- ヒイラギ科 テンプレート:Sname - ヒイラギ・オキヒイラギ・コバンヒイラギ・ネッタイヒイラギなど3属30種。
- シマガツオ科 テンプレート:Sname - シマガツオ・ヒレジロマンザイウオ・ベンテンウオ・リュウグウノヒメなど2亜科7属22種。
- ヤエギス科 テンプレート:Sname - 2属5種。
- ハチビキ科 テンプレート:Sname - ハチビキなど3属15種。
- フエダイ科 テンプレート:Sname - フエダイ・ハマダイ・スジタルミ・アオチビキなど4亜科17属105種。
- タカサゴ科 テンプレート:Sname - タカサゴなど4属20種[3][4][5]。
- マツダイ科 テンプレート:Sname - 2属5種。
- クロサギ科 テンプレート:Sname - クロサギ・ダイミョウサギなど8属44種。
- 暖海性で、小型-中型の海水魚。沿岸性で汽水域にもよく入る。体側は銀色に光り、唇は前方に長く突き出せる。これで砂中の無脊椎動物を吸い込んで食べる。
- イサキ科 テンプレート:Sname - イサキ・コロダイ・コショウダイ・シマセトダイなど17属145種。
- 熱帯の海を中心に約150種が知られる大きなグループ。体は平たく、背鰭は前後に分かれず連続的。尾鰭はV字状で胸鰭が尖る。尖った歯が並ぶ口は小さく、口唇が厚い。昼は物陰で過ごし、夜に底生の無脊椎動物を食べる。
- イネルミア科 テンプレート:Sname - 2属2種。
- イトヨリダイ科 テンプレート:Sname - イトヨリダイ・ヒトスジタマガシラなど5属64種。
- 温暖な海域のサンゴ礁や深海底に60種以上が知られる。尾鰭上端が細長く伸びる。底生動物や動物プランクトンを食べる。
- フエフキダイ科 テンプレート:Sname - ハマフエフキ・シロダイ・ノコギリダイ・メイチダイなど5属39種。
- 太平洋西部からインド洋の熱帯の海に数十種が知られる。主に沿岸部の岩礁に生息する。夜行性で貝などの海底の無脊椎動物を食べる。
- タイ科 テンプレート:Sname - マダイ・チダイ・キダイ・クロダイ・ヘダイなど33属115種。
- ほとんどが海産魚で、世界中の熱帯から温帯の海に生息する100種以上を含む大きな科。体長 1m を超えるものもいる。背ビレは二つに分かれず連続的。貝など硬い殻をもつ海底の無脊椎動物を食べる。雌雄同体か、成長とともに性転換をする。
- ケントラカントゥス科 テンプレート:Sname - 2属8種。
- ツバメコノシロ科 テンプレート:Sname - ツバメコノシロなど8属41種。
- ニベ科 テンプレート:Sname - ニベ・シログチ・オオニベなど70属270種。
- 世界中の海に生息し、200種以上を含む。背鰭が前後2つに分かれ、前部が発達する。海底で小動物を食べる。
- ヒメジ科 テンプレート:Sname - ヒメジ・ヨメヒメジ・オジサン・ウミヒゴイなど6属62種。
- ハタンポ科 テンプレート:Sname - キンメモドキ・ミナミハタンポなど2属26種。
- 太平洋・インド洋・大西洋の西部に生息。平たい体・大きな眼球・前後に短い背鰭などが特徴。昼は物陰に隠れ、夜に動物性プランクトンを食べる。
- アオバダイ科 テンプレート:Sname - 1属4種。
- レプトブラマ科 テンプレート:Sname - ビーチサーモンのみ1属1種。
- ソコニシン科 テンプレート:Sname - 1属5種。
- ヒメツバメウオ科 テンプレート:Sname - 2属5種。
- テッポウウオ科 テンプレート:Sname - 1属6種。
- マルスズキ科 テンプレート:Sname - 1属4種。
- Dichistiidae 科 - 1属2種。
- イスズミ科 テンプレート:Sname - メジナ・イスズミなど5亜科16属45種。
- スダレダイ科 テンプレート:Sname - 1属2または3種。
- チョウチョウウオ科 テンプレート:Sname - 11属122種。
- キンチャクダイ科 テンプレート:Sname - 8属82種。
- エノプロスス科 テンプレート:Sname - オールドワイフのみ1属1種。
- カワビシャ科 テンプレート:Sname - カワビシャ・ツボダイなど3亜科7属12種。
- ナンダス科 テンプレート:Sname - 3亜科4属21種。
- 熱帯魚として知られるダリオ属(スカーレットジャム、ダリオ・ヒスギノンなど)およびバジス属(バジス・バジスなど)はNelson(2006)の体系では本科に含められるが、FishBaseでは独立の科(テンプレート:Sname)として扱われている[6]。
- Polycentridae 科 - リーフフィッシュなど4属4種。
- シマイサキ科 テンプレート:Sname - シマイサキ・コトヒキ・ヒメコトヒキなど16属48種。
- インド太平洋に約50種が知られ、海水・汽水・淡水で棲み分ける。小動物を幅広く捕食する。
- ユゴイ科 テンプレート:Sname - ユゴイ・オオクチユゴイ・ギンユゴイなど1属10種。
- インド太平洋域に分布し、13種がそれぞれ淡水・汽水・沿岸浅海に棲み分ける。淡水生の種は降河回遊をおこない、汽水域や海で産卵すると考えられている。
- イシダイ科 テンプレート:Sname - イシダイ・イシガキダイなど1属7種。
- 日本・オーストラリア・タスマニア・ガラパゴスなどの沿岸に局地的に生息する。歯が融合し、短いくちばしの様になる。貝類やフジツボなどを食べる。成体の背鰭は前部が狭く後部が幅広い。
Cirrhitoidea 上科
Cirrhitoidea 上科は5科21属73種で構成される。
- ゴンベ科 テンプレート:Sname - オキゴンベ・サラサゴンベ・クダゴンベなど12属33種。
- インド太平洋・大西洋沿岸に生息する。沿岸部の岩礁やサンゴ礁に多く、鮮やかな体色の小型種が多い。甲殻類や小魚を食べる。
- キロネームス科 テンプレート:Sname - ケルプフィッシュなど2属5種。
- アプロダクテュルス科 テンプレート:Sname - 1属5種。
- タカノハダイ科 テンプレート:Sname - タカノハダイ・ユウダチタカノハ・ミギマキなど5属22種。
- 亜熱帯・温帯海域に分布する。体は側扁し、厚い唇と小さな口をもつ。昼行性で底性の無脊椎動物を食べ、夜間は穴に隠れる。
- ユメタカノハダイ科 テンプレート:Sname - 3属8種。
アカタチ上科
アカタチ上科 テンプレート:Sname にはアカタチ科のみ、1科4属19種が記載される。
- アカタチ科 テンプレート:Sname - アカタチ・イッテンアカタチ・ソコアマダイなど2亜科4属19種。
- 大西洋ヨーロッパ沿岸・地中海・インド太平洋に分布。細長い体で、背鰭・臀鰭も長い。深海底の砂地に穴を掘って棲み、動物性プランクトンを食べる。
出典・脚注
参考文献
- Joseph S. Nelson 『Fishes of the World Fourth Edition』 Wiley & Sons, Inc. 2006年 ISBN 0-471-25031-7
- 上野輝彌・坂本一男 『新版 魚の分類の図鑑』 東海大学出版会 2005年 ISBN 978-4-486-01700-4
- 岡村収・尼岡邦夫監修 山渓カラー名鑑 『日本の海水魚』 山と溪谷社 1997年 ISBN 4-635-09027-2
- 川那部浩哉・水野信彦・細谷和海編 山渓カラー名鑑 『改訂版 日本の淡水魚』 山と渓谷社 1989年 ISBN 4-635-09021-3
関連項目
外部リンク
- Perciformes - Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2008. FishBase. World Wide Web electronic publication. www.fishbase.org, version (10/2008). (英語)
- スズキ目専門・スズキ目一覧表