サンダーバード6号
『サンダーバード6号』(Thunderbird 6)は、1968年に製作されたイギリスの人形劇特撮映画。テレビシリーズ『サンダーバード』の劇場映画化作品第2作。上映時間89分。
目次
概要
製作の経緯と興行成績
テレビシリーズは大成功したにもかかわらず、映画版『サンダーバード』の興行成績は期待はずれに終わった。しかし、配給したユナイテッド・アーティスツはその理由がわからず、第2作を製作する決定を下した。シリーズのプロデューサーであるジェリー・アンダーソンは、テレビ版の監督の一人であるデスモンド・サンダースが、イギリスが最新鋭を謡って建造し墜落した、飛行船R101を描いたパニック映画の製作を提案していたことからイスピレーションを得て、妻シルヴィアと共に脚本を執筆した。映画版第1作のデヴィッド・レイン監督と、特撮のデレク・メディングスが再起用され、1967年5月より撮影が開始されることになった[1]。
スタッフは、従来のどのサンダーバード・シリーズとも異なった作品を作ろうという意気込みで、製作に臨んだ。冒頭の会議のシーンでは、大口で笑う人形たちが特別に用意され、その歯は歯学科の医学生が褒めたほどの出来栄えだった。また、タイガー・モスのアクロバット飛行シーンでは、実物を使用した実写が行われることになり、映画『素晴らしきヒコーキ野郎』などの飛行シーンにも参加した女性パイロットのジョアン・ヒューズが操縦を担当した。撮影場所は建設中の高速道路で、タイガー・モスが橋の下をくぐるもので、撮影許可はおりたものの、着地して車輪をつけたままでなければくぐってはならないという条件付きだった。当日は運輸省の役人も立ち会ったが、突然の突風によりジョアンは飛行したまま橋をくぐることを余儀なくされ、これが二度繰り返された。結果的に当初の脚本通りの飛行となったものの、役人は激怒し、ジョアンとスタッフの一人は逮捕・起訴されてしまったが、判決は無罪となった。しかし、この一件により撮影許可は取り消されてしまい、残りの撮影はラジコン模型を使って行われ、実写部分と編集された[1]。
完成した第2作は、ベーカー街にあるジャシーランド・シネマという映画館で地味に公開された。レスター・スクウェアのオデオン・シネマズでも上映されたものの、第1作同様、興行成績は振るわず、シリーズは終了となった[1]。なお、2004年に製作された実写版映画『サンダーバード』にはジェリー・アンダーソンは参加していない。
日本での公開
日本でのロードショー公開においては、夏休みの子供を対象として、『大怪獣メギラ』[2]、『いじわるヒョウ デパートの巻』、『いじわるヒョウ ペンキ屋の巻』[3]と同時上映された[4]。
ストーリー
国際救助隊の頭脳ブレインズが新たに開発した反重力推進の民間大型遊覧飛行船スカイシップ1号。その処女航海となる世界一周飛行には国際救助隊の面々も招待されていたが、スカイシップの乗組員になりすまして乗り込んだ、謎の組織・ブラックファントムの男たちはサンダーバードの秘密を探るべく陰謀を巡らせていた。航海終了間近の土壇場で陰謀が発覚し、やがてスカイシップ内で戦闘となるが、戦闘の流れ弾で人工重力装置が破損し、さすがの国際救助隊も航行不能になったスカイシップを救助するのが困難な状況になってしまった。その時ブレインズが満を持して投入した新兵器「サンダーバード6号」とは…。
登場人物
- ジェフ・トレーシー(ピター・ダイネリー)
- トレーシー兄弟の父。国際救助隊を司令。
- スコット・トレーシー(シェーン・リマー)
- トレーシー兄弟の長男。サンダーバード1号担当。
- バージル・トレーシー(ジェレミィ・ウィルキン)
- トレーシー兄弟の三男。サンダーバード2号担当。
- アラン・トレーシー(マット・ジマーマン)
- トレーシー兄弟の五男。サンダーバード3号担当。
- ゴードン・トレーシー(デビッド・グラハム)
- トレーシー兄弟の四男。サンダーバード4号担当。
- ジョン・トレーシー(キース・アレクサンダー)
- トレーシー兄弟の次男。サンダーバード5号担当。
- ブレインズ(デビッド・グラハム)
- 科学者。国際救助隊メカ開発担当。匿名でスカイシップ1を開発。
- ペネロープ・クレイトン・ワード(シルヴィア・アンダーソン)
- 英国貴族。国際救助隊ロンドン支部エージェント。
- アロイシャス・パーカー(デビッド・グラハム)
- ペネロープの執事。FAB1(ペネロープの使用する特殊装備を施したロールス・ロイス)の運転も担当。
- ティンティン(クリスティン・フィン)
- 日本語版ではミンミン。国際救助隊の仇敵ザ・フッドの弟キラノの娘。国際救助隊の仕事を手伝う。
- ホワイト・ゴースト(偽フォスター船長)(ジョン・カースン/千田光男(VHS版)/咲野俊介(DVD版))
- スカイシップ1号の真フォスター船長に成りすました、ブラックファントムのメンバー。
- ブラック・ファントム(ゲイリー・ファイルズ)
- 国際救助隊の秘密を狙う謎の人物。終盤でその正体が明らかに。
- 新世界航空社長(佐々木敏(DVD版))
- 船長(中田和宏(DVD版))
- マルコ(斉藤次郎(DVD版))
- ピーター(斉藤瑞樹(DVD版))
- ケリー(奥田啓人(DVD版))
- トマス(上田陽司(DVD版))
- 占い師(山口眞弓(DVD版))
メカニック
- スカイシップ1(Skyship 1)
- 素顔を隠したブレインズが製作した飛行船。浮遊には気体でなく人工重力を使う。航行は完全自動。日本では「ドイツのヒンデンブルクに代表される飛行船時代への憧れ」と紹介されるが、実際は前述の通りイギリスの飛行船R101がモデルになっている。
- 日本では「サンダーバード6号 スカイシップ1」と言うプラモデルが売られ、箱絵にはスカイシップ1が大きく描かれていたため、「6号の別名がスカイシップ1なのか」と当時の多くの少年を勘違いさせた。正確には「サンダーバード6号&スカイシップ1」と言う意味であり、箱絵でもスカイシップ1の前を6号が飛んでいる。箱の横の説明でも「サンダーバード1号・2号・6号のミニモデル付き」と書かれており、サンダーバード6号と書かれた矢印はスカイシップ1の上に置かれた複葉機(6号)を指している。もちろん書かれている通りにミニモデルが付属している。ただし縮尺的には1号・2号は小さいが、6号はかえって大きいぐらいである。
- サンダーバード6号
- 6号の製作はブレインズが色々検討していたが、実際に登場した6号は何と、クライマックスでの救助シーンに使われた、時代遅れの実在の複葉機「タイガー・モス」(ヒトリガ)であった。イギリス空軍の練習機デ=ハビラント社製で、空軍経験者にとって親しい存在。本作のプロットは後に「ロンドン指令X」でも再登場している。
スタッフ
- 製作:シルヴィア・アンダーソン
- 監督:デヴィッド・レイン
- 脚本:ジェリー・アンダーソン、シルヴィア・アンダーソン
- 音楽:バリー・グレイ
- 撮影:ハリー・オークス
- 編集:レン・ウォルター
- 視覚効果:デレク・メディングス
注・出典
- ↑ 1.0 1.1 1.2
- ジェリー・アンダーソン、サイモン・アーチャー、マーカス・ハーン『サンダーバードを作った男 ジェリー・アンダーソン自伝』アーカス・吏津子訳、洋泉社、2003年(ISBN 9784896917246)
- シルヴィア・アンダーソン 『メイキング・オブ・サンダーバード』奥田祐二訳、白夜書房、1992年(ISBN 9784893672612)
- ↑ 原題 "The Monster that Cahllenged the World" 1957年ユナイテッド・アーティスツ配給。日本では『大怪獣出現』のタイトルで初公開され、85分の上映時間を43分に再編集して本作と併映された。
- ↑ 『ピンク・パンサー』のアニメ短編映画シリーズ。ユナイテッド・アーティスツ配給。
- ↑ LD『サンダーバード & サンダーバード6号 スペシャルBOX』 ワーナー・ホーム・ビデオ 解説書
関連項目
- サンダーバード 劇場版 - 映画第1作。1966年制作。
- サンダーバード (2004年の映画) - 俳優が演じるSF映画作品。2004年制作。
映像商品
- 20世紀フォックスホームエンターテイメントジャパン(株)(発売元)より、DVDが繰り返し発売されている。