グレイヴ・アクセント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
(グレイヴから転送)
テンプレート:Redirect テンプレート:ダイアクリティカルマーク グレイヴ・アクセント ( ` ) は、ポルトガル語、フランス語、カタルーニャ語、イタリア語、ウェールズ語、ベトナム語など、おもにラテン文字を用いる言語の表記に用いられるアクセント符号で、ダイアクリティカルマークの一種。重アクセント、低アクセント、鈍アクセントとも。
JIS X 0213の名称は、アクサングラーブ, グレーブアクセント。
各言語における用法
ラテン・アルファベット
- ポルトガル語
- à のみが使われ、2つの a の縮約を表す。
- フランス語
- accent grave (アクサン・グラーヴ)といい、à, è, ù が存在する。è は広い [ɛ] を表すほか、同音異義語の区別にも使われる。à, ù は同音異義語の区別に使われる(例:ou「または」とoù「どこ」)。
- カタルーニャ語
- à, è, ò が使われ、強勢の位置を表す。è, ò は広い [ɛ], [ɔ] を表し、狭い [e], [o] を表す é, ó と対立する。à に関してはグレイヴ・アクセントのみが使われる。
- イタリア語
- accento grave (アッチェント・グラーヴェ)といい、 最後の音節に強勢があることを示したり(例: caffè 「コーヒー」)、同音異義語を区別するために用いられる(例: li 「彼らを」に対する lì 「そこ」)。ただし付号する母音が狭い e や o ( 広めの [ɛ] や [ɔ] ではない [e] や [o] )であるいくつかの語については accento acuto(アッチェント・アクート、アキュート・アクセントのこと)を用いる。
- ウェールズ語
- 母音が短いことを表す。à, è, ì, ò, ù, ẁ, ỳ が存在する。
- セルビア・クロアチア語
- à, è, ì, ò, r̀, ù が上昇調短母音を表すために使われることがある。正書法上はアクセントは付加されない。キリル・アルファベットでも使われるが、Unicodeの合成済み文字はラテン・アルファベットのもののみが定義されている。
- スロベニア語
- è が上昇調短母音を表すために使われることがある。正書法上はアクセントは付加されない。
- リトアニア語
- 正書法上は使用しない。高低アクセントを持つ短い音節を表すのに用いられる。辞書や学習書・研究書・およびアクセント記号なしではあいまいになる語を区別する目的で使用される。
- ラトビア語
- 正書法上は使用しない。下降調の声調を表す声調記号として学術書で用いられる。
- ベトナム語
- フイェン声調を示す声調記号である。à, ầ, ằ, è, ề, ì, ò, ồ, ờ, ù, ừ, ỳ が存在する。
- 中国語
- 拼音では第四声(去声)を示す声調記号として用いられる。à, è, ề, ì, m̀, ǹ, ò, ù, ǜ が存在する。
キリル・アルファベット
ギリシャ・アルファベット
ギリシャ語は古典時代には高低アクセントを持ち、伝統的にグレーブアクセント(テンプレート:Lang-el ヴァリア)で低い音を表した。現代ギリシャ語では用いられていない。
音声記号
国際音声記号でも声調記号として用いられるが、ベトナム語や拼音とは異なり、低平板を示す。
アメリカの言語学界では音声記号として、声調だけではなく、第2強勢(やや弱い強勢)を示すのにも用いることがある[1]。2011年現在、日本で発行されている英語の辞典や教科書などでも第2強勢を示す場合が多く、音声記号や英語での単語表記と組み合わせて用いられる。なお、国際音声記号では第2強勢を示す記号は[ˌ]である[2]。
コンピュータ
(スペース付きの)グレイヴ・アクセントはUnicodeで U+0060 であり、ASCIIにも 6016 として含まれている。特にASCIIでは、開きシングルクォーテーションマークに似ているためバッククォート (back quote) と呼ぶことが多い。ほかに英語では backtick とも呼ばれる。コンピュータではさまざまな目的に使われる。
- いくつかのシェルスクリプトやperlなどでは、`……` と文字列を囲むと、文字列をコマンドとして実行し、実行結果の標準出力を文字列として返す。
- LISP系の言語では、リストにバッククォートを前置すると、コンマを前置した要素のみを評価し、それ以外は評価しない。たとえば、「
`(a ,b)
」は、「(list 'a b)
」に同じである。主にマクロの構文を読みやすくするのに用いる。 - Markdownなど、いくつかの軽量マークアップ言語では、コードをバッククォートで囲む。
- ASCII環境では、' (U+0027 アポストロフィ) とのセット
`……'
がシングルクォーテーションマーク ‘……’ の代用として使われる。また、``(グレイヴ2つ)を"
(U+0022 クォーテーションマーク) またはアポストロフィ2つと組み合わせた``……"
・``……''
がダブルクォーテーションマーク “……” の代用として使われる。ただし、正規のシングル/ダブルクォーテーションマークがある文字セットでは好ましい用法ではないが、TeXではソースに「`」や「``」を書くと引用符に変換される。
符号位置
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称
テンプレート:CharCode テンプレート:CharCode テンプレート:CharCode テンプレート:CharCode |
---|
脚注
テンプレート:ラテン文字- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ 第2強勢がある音節に前置する。