グエン・ゴク・ロアン
テンプレート:基礎情報 軍人 グエン・ゴク・ロアン(ベトナム語: Nguyễn Ngọc Loan, 漢字: 阮玉鸞, 1931年 - 1998年7月14日)は、ベトナム戦争当時の南ベトナムの警察庁長官。
経歴
グエン・ゴク・ロアンはベトナム共和国陸軍の士官であった。後にグエン・カオ・キ副大統領の側近となり、警察庁長官を務めた。任官中のベトナム戦争中に起きたテト攻勢の際に、サイゴンにて身柄を確保されたベトコンの兵士を銃で処刑する。
処刑の瞬間を撮影した写真は『サイゴンでの処刑』と題され世界各地に報道され、軍事裁判を行わずに路上で処刑を行ったロアンへ非難が集中した。しかし処刑された兵士は正規の軍人ではない上に、一般市民を虐殺したことが明確であった。 戦時国際法において、このベトコン兵士は戦争犯罪にあたるため処刑は合法だった。
しかしいずれにしても映像、画像の両方で撮影され、世界中へ配信されたこの処刑によりロアンの悪名は高まることとなった。なおこの処刑を行った数か月後、ロアンは機関銃による銃撃により右脚の切断に至る重傷を負う。
1975年4月のサイゴン陥落とともに、グエン・ゴク・ロアンは南ベトナムからアメリカへ亡命した。その後アメリカ政府からの資金援助を受けてワシントンD.C.郊外バージニア州バークのローリング・バレー・モールにてピザレストランを開業した。
しかし1991年に、過去が公に明かにされると仕事は廃業した。写真家エディ・アダムズは、ロアンのピザショップを訪れた際、そのトイレの壁には、「お前が誰かは分かっているんだ、くそったれ(We know who you are, fucker)」という落書きを見たと回想している[1]。
ロアンはチュオン・マイという女性と結婚し、5人の子供がいた。1998年7月14日、バージニア州バークで、癌のため死去した。
捕虜の射殺
『サイゴンでの処刑』 (General Nguyen Ngoc Loan Executing a Viet Cong Prisoner in Saigon) と題されたこの写真は、1968年2月1日、AP通信のエディ・アダムズ(Eddie Adams)によって撮影された。テト攻勢の最中のサイゴンで、グエン・ゴク・ロアンが南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)の士官を処刑している様子を写している。この様子はNBCニュースのカメラにも撮影されたが、アダムズの写真は決定的な印象を残した。
この射殺された士官が何者であるかについてはいまだに議論があり、グエン・ヴァン・レム(阮文歛)もしくはレ・コン・ナであるとされている。両者ともテト攻勢下のサイゴンで戦死したベトコンのメンバーで、双方の遺族とも、各々がこの写真の人物に酷似しており、断定はできないと証言した。
捕えられたグエン・ヴァン・レムはベトナム共和国警察庁長官グエン・ゴク・ロアンの前に引き出された。ロアンは個人所有していた回転式拳銃のS&W M38[2]を引き抜き、その場で彼を射殺した。その光景は、目の前にいたAP通信カメラマンのエディ・アダムズ及びNBCニュースのテレビカメラマンらによって撮影された。写真と映像は全世界に配信され、反戦運動に勢いを与え、ベトナム戦争への介入に対するアメリカの世論に多大な影響を与えることになった[3]。 エディ・アダムズはこの写真で1969年度のピュリッツァー賞を獲得した。写真を見たオーストラリア出身の従軍記者パット・バージェスは再び戦場へと戻ったという[4]。
南ベトナム側の発表によると、レムはその日に南ベトナムの警察官やその家族を殺害したベトコンの死の部隊の指揮官であり、レムが逮捕されたのは、34体もの縛られ射殺された警察官とその親族の遺体が放置された溝の付近であったという。しかもそれらの犠牲者には、ロアンが名付けた子6名など、ロアンの副官と親友の家族たちも含まれていたということだった。カメラマンのアダムズは南ベトナム側の説明を確認したが、彼は処刑のために居合わせただけだった。レムの未亡人は、夫がベトコンのメンバーであり、テト攻勢が始まってから夫の姿を見ていないことを認めた。処刑の直後、処刑に立ち会わなかった南ベトナム政府高官は、レムはただの政治的スパイだったと発言した[5]。
エディ・アダムズはこの写真(『サイゴンでの処刑』)で1969年度ピューリッツァー賞 ニュース速報写真部門を受賞したが、にも関わらずアダムズは後にその引き起こした衝撃を後悔していると語った。この写真は反戦のアイコンとなった。ロアンと有名になってしまった自身の写真について、アダムズは後にタイム誌で以下のように述べている。
その後アダムズは、自身の写真によってロアンの世評を傷つけたことをロアンとその家族に直接謝罪した。また、その死に際しアダムズは彼を次のように称賛した。 テンプレート:Cquote