キングス・カレッジ・ロンドン
キングス・カレッジ・ロンドン(King's College London, KCL)は、英国のロンドン大学を構成するカレッジのひとつであり、ジョージ4世及び初代ウェリントン公爵アーサー・ウェルズリーによって1829年に設立された、イングランドでは4番目に古い名門大学である。KCLはラッセル・グループのメンバーで、9つの学部と5つのキャンパスを持つ総合大学であり、学生数は21,300名と、ロンドン大学のカレッジの中で最大規模を誇る。2013年QS世界ランキングでは19位[1]、タイムズ誌世界ランキングで38位[2]にランク付けされ、過去に12名のノーベル賞受賞者を輩出している[3]。
歴史
KCLは1829年、ジョージ4世の命によって設立された。当時、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学は男性・イギリス国教徒・貴族出身者のみに入学を許されるなど差別的な入学条件を課していた。これに対し「万人に開かれた大学」を実現すべく、哲学者のジェレミ・ベンサムが1826年に性別・宗教・人種・政治的思想による入学差別を撤廃したロンドン・ユニバーシティ(後のユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)を設立した。
しかしこの動きは、既得権益を失う事を恐れたオックスフォード大学、ケンブリッジ大学や聖公会から激しい反発を受けた。テンプレート:仮リンク主教は非宗教的な大学の在り方を批判し、公開書簡の中でロンドン市内に対抗する宗教的で聖公会の意図を反映した大学機関の設立を提言した。この書簡に刺激を受けた時の首相ウェリントンは、1828年6月21日のジョージ4世が開いた本件に関する会議の中で議長を務め、大学設立は実現に向かっていった。こうして1829年8月14日のジョージ4世の勅許により、KCLの正式な設立となった。
なお、このようなウェリントンの聖公会やカトリック救済法案への過剰な肩入れは、カトリック教会に対しほとんど完全な市民権を与えることになるとテンプレート:仮リンクによる抗議があり、これは1829年3月21日のテンプレート:化リンクにおける決闘へつながった。結果は両者とも意図的に相手を外した射撃によって決着した。KCL内でもこの決闘の日は特別な日として祝われており、様々なイベントが毎年の伝統的に開かれている。
こうして1831年に、オックスフォード大学に似た大学運営のKCLが開校した。しかしこのような設立経緯にもかかわらず、最初の入学案内書では非聖公会信徒の入学が認められている。開校時に提供されたコースは化学、英文学、商学である。
この時期はまだKCLもロンドン・ユニバーシティも、大学の学位の授与が出来なかった。これは特に、臨床実習を希望する医学専攻の学生にとって問題となった。そこで時の大法官であり、ロンドン・ユニバーシティ運営委員会の会長であったテンプレート:仮リンクが問題解決へ向けて関わることとなった。この経緯により、ブロハムはKCLの学長も兼ねるようになる。
当時イギリスでは、1つの都市で1つの機関のみが学位の発行の権限を持つ制約があった。そのため、政府がロンドン市内の2つの大学に学位発行権限を与えることは非現実的であった。この経緯から、2つの大学は統合の形で話し合いが行われ、1836年に2つの大学がカレッジになる形でロンドン大学が発足した。こうして、ロンドン大学のカレッジとして正式に発足したKCLは、夜間コースという形ではあるが女性・労働者階級に対しても開かれたカレッジとなる。
KCLの180年にわたる歴史の中では多くの重要な研究がなされ、中でもロザリンド・フランクリンとモーリス・ウィルキンスによるDNAの螺旋構造の発見は有名である。
キャンパス
ストランドを中心にロンドン市内中心部のテムズ川沿いに4つのキャンパスと、デンマークヒルに1つのキャンパスがある。
- Strand campus
- Guy's campus
- Waterloo campus
- St Thomas' campus
- Denmark Hill campus
評価
ここではKCLに関する外部機関の評価について述べる。
研究水準
イギリスの大学の研究力を測る指標としてResearch Assessment Exercise (RAE) がある。RAEは、数年に1度、イギリス政府が研究機関に対して行う研究成果の公的な調査および査定である。イギリスの研究機関で行われている研究を何十もの分野に分け、その分野の専門家がお互いの研究成果を査定し、イギリス政府はその結果に基づいて国内の研究機関への資金配分を決める。RAEはこれまで1992年、1996年、2001年、2008年の4回実施されている。
最新のRAE(2008年版)によると、総合ランキングでKCLは第20位[4]であった。評価方法が変更されているので正確な比較はできないが、この結果は前回、2001年の調査と同じである[5]。
またRAE(2008年版)によると、KCLの研究の約19%が世界トップレベルと査定されている[6]。
全般的に医歯薬系統に強く、最新のRAEの結果を分野別に見ると、健康生活科学、教育学が英国内1位、心臓医学、歯学が3位、臨床心理学が5位、伝染免疫学、臨床・人間生命科学が6位、薬学、経営学が7位といった評価を受けている[7]。
法学教育においては、イギリス国内でもっとも歴史のある大学のひとつであり、Law Schoolは「イギリス国内のトップ5に入るLaw Schoolとして広く認識されている(recognised globally as one of the UK's top five law schools)」との評価を得ている (Guardian University Guide 2011: Law)。
ランキング
The Times Higher Education Supplement(タイムズ誌)と教育情報の専門会社 Quacquarelli Symonds (QS) が2005年から毎年発表している世界大学ランキングでは2007年以降、世界25位以内(英国内5~6位)をキープしている。分野別に見ると医学、社会科学、人文科学、生命科学が強く、2013年版では4分野とも世界トップ50入りしている。特に医学と人文科学では世界トップ20に選ばれている[8]。
一方イギリスでは、新聞各紙が独自の視点に基づいた大学ランキング(総合ランキングは下記の表を参照)を発表している。この中では毎年10位から20位といった評価を受けている。
詳細なデータが公開されているIndependent紙[9]とTimes紙[10]の2009年度版のランキングを見てみると、 以下のようなKCLの特徴が読み取れる。
- 学生の満足度は他のロンドン市内の大学同様に平均的(約75%の満足度)
- 研究レベルは20位から30位
- 教員一人あたりの学生数は約11人で英国トップクラス
- 卒業後の進路は英国トップクラス(卒業生の平均初任給約24,110ポンドは4位[11]、就職率 約83%は5位[12])
2010 | 2009 | 2008 | 2007 | 2006 | 2005 | 2004 | 2003 | 2002 | 2001 | 2000 | 1999 | 1998 | 1997 | 1996 | 1995 | 1994 | 1993 | |
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Times Good University Guide | 12th[13] | 11th[14] | 10th[15] | 17th[16] | 17th | 16th=[17] | 16th | 17th= | 20th | 18th | 15th | 17th | 18th | 15th | 20th= | 18th | 11th | 15th= |
Sunday Times University Guide | 12thth[18] | 17th[19] | 12th | 13th[20] | 13th[20] | 13th=[21] | 17th[21] | 21st[21] | 21st[21] | 19th[21] | 18th[21] | 18th[21] | ||||||
Guardian University Guide | 24th[22] | 21st[23] | 13th[24] | 8th | 8th[25] | 6th [26] | 7th[27] | 10th[28] | 18th[29] | |||||||||
Daily Telegraph | 17th=[30] | 18th= | 18th=[29] | |||||||||||||||
The Independent | 17th[31] | 15th[32] | 17th[32] | |||||||||||||||
FT Good University Guide | 10th[33] | 12th[29] | 15th[34] | 10th[35] | 12th[36] | |||||||||||||
Times Higher Education - QS | 22th[37] | 24th[38] | 46th[39] | 73th[40] | 97th[41] | |||||||||||||
ARWU World Rankings | 81th[42] | 83th[43] | 83th[44] | 80th[45] | 77th[46] | 75th[47] | ||||||||||||
Newsweek | 85th[48] |
教員
ノーベル賞受賞者
- 1917年 チャールズ・バークラ(物理学賞)
- 1928年 オーエン・リチャードソン(物理学賞)
- 1929年 フレデリック・ホプキンズ(医学生理学賞)
- 1932年 チャールズ・シェリントン(医学生理学賞)
- 1947年 エドワード・アップルトン(物理学賞)
- 1951年 マックス・タイラー(医学生理学賞)
- 1962年 モーリス・ウィルキンス(医学生理学賞)
- 1984年 デズモンド・ムピロ・ツツ(平和賞)
- 1988年 ジェームズ・ブラック(医学生理学賞)
- 2010年 マリオ・バルガス・リョサ(文学賞)
- 2013年 マイケル・レビット(化学賞)
- 2013年 ピーター・ヒッグス(物理学賞)
主な出身者
- 高木兼寛 (医学者) (東京慈恵会医科大学創設者)
- グリア・ガースン(女優)
- 小谷賢(歴史学者、国際政治学者)
- 中谷宇吉郎(物理学者)
- デレク・ジャーマン(映画監督)
- デズモンド・ムピロ・ツツ(平和運動家)
- モーリス・ウィルキンス(生物物理学者)
- ケリー・オケレケ(ミュージシャン)
脚注
- ↑ http://www.topuniversities.com/university-rankings/world-university-rankings/2013#sorting=rank+region=+country=+faculty=+stars=false+search=
- ↑ http://www.timeshighereducation.co.uk/world-university-rankings/2013-14/world-ranking
- ↑ http://www.kcl.ac.uk/aboutkings/history/nobellaureates.aspx
- ↑ http://www.guardian.co.uk/education/table/2008/dec/18/rae-2008-results-uk-universities
- ↑ http://www.ukeas.com.tw/rankings.htm
- ↑ http://www.guardian.co.uk/education/table/2008/dec/18/rae-2008-results-uk-universities
- ↑ http://www.guardian.co.uk/education/page/subject/rae2008
- ↑ http://www.timeshighereducation.co.uk/world-university-rankings/2013-14/subject-ranking/subject/clinical-pre-clinical-health
- ↑ http://www.independent.co.uk/news/education/higher/the-main-league-table-2009-813839.html
- ↑ http://extras.timesonline.co.uk/tol_gug/gooduniversityguide.php
- ↑ http://web.archive.org/20090608051823/timesonline.typepad.com/schoolgate/2009/06/top-universities-by-graduate-starting-salary.html
- ↑ http://extras.timesonline.co.uk/tol_gug/gooduniversityguide.php?sort=PROSPECTS
- ↑ テンプレート:Cite web
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- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 20.0 20.1 テンプレート:Cite web
- ↑ 21.0 21.1 21.2 21.3 21.4 21.5 21.6 テンプレート:Cite web
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- ↑ テンプレート:Cite web
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- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 29.0 29.1 29.2 テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 32.0 32.1 テンプレート:Cite web
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