キャビア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:出典の明記

ファイル:キャビア(ロシア産ベルーガ).jpg
キャビア(ロシア産ベルーガ)
ファイル:Caviar spoons.jpg
鮭の卵 (左) と チョウザメ の卵 (右) キャビアの味を害なわないようキャビアスプーン (mother of pearl) に載せたもの

キャビアテンプレート:Lang-enテンプレート:Lang-frテンプレート:Lang-ru:チョールナヤ・イクラー)は、チョウザメ塩漬け

一般的にはキャビアとはチョウザメの卵を指すが、ヨーロッパの多くの国では魚卵の総称としてキャビアと言う事もある。逆に、ロシアでは魚卵全体をイクラと呼び、キャビアは「チョールナヤ・イクラー」、すなわち「黒い魚卵」と呼ぶ。漢字表記は「鱣子」。

概要

ファイル:Six types of caviar.jpg
イランの様々な色の魚卵(キャビア)

主な産地はロシアで特にカスピ海アムール川が有名。またカスピ海はイランにも面しているためイラン産のキャビアもよく知られている。古くはヨーロッパ沿岸河川、北米大西洋沿岸でも商業的に生産されていた。

カスピ海に生息するチョウザメの種類によって卵の粒の大きさとブランド価値が異なる。大きい順にベルーガ(Beluga、オオチョウザメ)、オシェトラ(Oscietra、ロシアチョウザメとシップチョウザメ)、セヴルーガ(Sevruga、ホシチョウザメ)キャビアと呼ばれる。なお、その他の地域に生息するチョウザメの仲間からもキャビアは生産される。

フランス語・英語の「キャビア」(caviar)は、イタリア語[1] またはトルコ語[2] から伝わったもので、その起源はペルシャ語の「khaviyar」にある。卵を意味する「khaya」(中期ペルシャ語で「khayak」、古イラン語で「*qvyaka-」、インド・ヨーロッパ祖語で「*owyo-」「*oyyo-」)と、産むことを意味する「dar」からなる[1]

英語圏では、魚卵を意味するRoeと言う言葉があるが、フランスの影響でタラコ(コッドロー、Cod roe)やイクラ(サーモンロー、Salomon roe)のことをコッドキャビア(Cod caviar)、サーモンキャビア(salmon caviar)と表記されることも多い。日本では、キャビアと言えばチョウザメの魚卵のみを指す言葉と思われがちだが、キャビアとは、魚卵の意味なので、魚類の卵は、すべてキャビアと呼べる。

種類

ベルーガ
チョウザメの仲間の中では最も大きく、体長3〜4m、体重300kgを超えるものもある。普通は体重100〜200kgでその約15%にあたる15〜30kgがキャビアとして取れる。成熟まで約20年を要する。近年漁獲量が減少し、希少価値が高まっている。
キャビアの特徴は大粒なこと。色の濃淡はあるが灰色で明るい色ほど好まれる。皮は柔らかくマイルドである。
オシェトラ
カスピ海に生息する2種類のチョウザメ(ロシアチョウザメ・シップチョウザメ)を指す。いずれもチョウザメ類の中では平均的な大きさで体長2m、体重40〜80kg。成熟に12〜13年を要する。
キャビアは中粒で色は茶色がかった灰色からゴールドまで変化に富む。ナッツの味が珍重されている。
セヴルーガ
3種の中では最も小型でスマートな体型をしている。口先が尖っているのが特徴。体長は最大で1〜1.5m、体重は25kgを超えることは滅多に無い。成熟にかかる時間は比較的短く平均8〜9年である。
キャビアは小粒で色は暗灰色。繊細で独特な風味がある。

製造法

一般の輸入キャビアでは保存期間を長く保つため7〜10%の塩分濃度で塩漬処理されているが、キャビア本来の味がその強い塩分に負けてしまう。原産国では3〜5%前後で処理されておりキャビア本来の味が楽しめる。しかし低い塩分濃度で処理を施すため約3週間と保存可能な期間は短い。ヨーロッパ向けには防腐剤としてホウ酸を添加している。日本国内輸入品としてホウ酸の添加は出来ないので流通を考慮して輸入後リパック(分封)され低温殺菌処理される。

なお、日本の食品衛生法ではキャビアの食品添加物(保存料)として安息香酸を添加することが認められている。使用基準は、2.5g/kg以下であり、安息香酸の使用基準としては他の食品よりも高い[3]。 ただし、安息香酸の一日摂取許容量(ADI)は0-5 mg/kg/dayであるため、大量のキャビアを毎日食べ続けるような食生活をしない限り、害は無い[4]

殺菌は密閉できるガラス瓶等にキャビアを入れ60℃で約20分ほど湯煎する。この低温殺菌処理によりキャビア本来の風味と食感が変わるので低温殺菌されたキャビアを「パスチャライズ・キャビア」、低温殺菌されないキャビアを「フレッシュ・キャビア」と分けて呼ばれる。

価格の高騰

ファイル:Caviar tins (Russian and Iranian).jpg
キャビアの缶(ロシア製およびイラン製)

最近ではチョウザメの漁獲高が激減しているためキャビアの値段が高騰しており問題になっている。チョウザメ類は成長に長い年月がかかりまた成熟してからも非常に長い寿命を生きて何度も繁殖する動物であるが、漁獲してキャビアを採取すると個体を殺してしまうため何十回分もの繁殖の可能性を一度に奪うことになる。

これは同じようにその魚卵が珍重されるが繁殖が生涯に一度だけであるサケと大きく異なる点である。それゆえキャビア漁業は乱獲に陥らないように厳しい資源管理を必要とする。しかしソ連崩壊後のロシアではチョウザメ資源の管理体制が崩壊して闇市場での流通が激増し個体群によっては無秩序な乱獲により絶滅に瀕するに至った。

その結果、2006年のカスピ海産のキャビアの国際取り引きはワシントン条約事務局によって当面禁止された

養殖

こうして世界的なキャビアの需要と供給に大きなギャップが生じたことを受けて先進諸国を中心に1990年代から大規模なキャビア養殖が始まった。養殖種は北米太平洋に生息するシロチョウザメ(米国、イタリア、パラグアイ等)、シベリア・レナ川産のシベリアチョウザメ(フランス、ドイツ、中国等)が多く、また、各国に生息する種類も養殖される。

日本などでもチョウザメの養殖が試みられており、成果を収めつつあるが、その主な種は「ベステル」と呼ばれる雑種でありキャビアとしての価値は低い。この種は他国では養殖されていない。

日本の養殖事業

日本でも養殖によるキャビアの生産が行われている。釜石市などが出資している第三セクターの「サンロック」(岩手県釜石市)が2003年12月に日本初の商品化に成功している。その後、生産は釜石キャビア株式会社に引き継がれた。同社の養殖チョウザメはアムールチョウザメ、シロチョウザメが多くベステルは少ない。だが、2011年3月11日東日本大震災による津波被害によって養殖場は壊滅的打撃を受け、釜石キャビア株式会社も解散したため生産再開は困難であるとされている[5]

また、高知県高知市(旧春野町)では養鰻用の池を使ってキャビアの親であるベステルチョウザメを養殖しており「よさこいキャビア」の名がついている。

宮崎県では1983年にチョウザメの養殖技術に着手、2004年に全国で初めて卵をふ化させ育てた成魚から卵を採取する完全養殖に成功。2011年にはチョウザメの稚魚の量産技術を国内で初めて確立した[6]。その後2013年冬、「宮崎産フレッシュキャビア」として発売を開始すると発表された[7]。2013年11月22日、「MIYAZAKI CAVIAR 1983」という名称で全国発売が開始された[8][9][10][11]

イミテーションキャビア

キャビアのコピー食品であるイミテーションキャビアも存在しており、アブルーガキャビア(ニシンの卵)、ランプフィッシュキャビア(ダンゴウオ科の大型種、ランプフィッシュの卵)が流通している。

また、人工イクラのように人工キャビアも流通している。

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:Sister

  • 1.0 1.1 http://www.etymonline.com/index.php?term=caviar
  • テンプレート:Cite web
  • 安息香酸の使用基準は、2番目に高いマーガリンで1.0g/kg以下であり、しょう油では0.60g/kg以下である。キャビアの基準はマーガリンの倍以上である。
  • たとえば、体重50kgの成人ならば安息香酸の一日摂取許容量は5mg×50=250mg/day=0.25g/dayとなる。キャビアに使用基準限度の2.5g/kgの安息香酸が添加されていた場合、キャビアの一日摂取許容量は、0.25/2.5=0.1kg=100gとなる。すなわち、一日に100グラムのキャビアを毎日食べ続けるような美食生活をする人を除いて、キャビアの食品添加物リスクは低いと判断できる。
  • テンプレート:Cite web 
  • テンプレート:Cite news
  • 宮崎チョウザメ普及促進会
  • MIYAZAKI CAVIAR 1983
  • テンプレート:Cite news
  • テンプレート:Cite news
  • テンプレート:Cite news