カナガシラ
カナガシラ(金頭、方頭魚、火魚、学名:Lepidotrigla microptera)は、カサゴ目・ホウボウ科に分類される魚。ホウボウに似た魚で、ホウボウと同じく食用に漁獲される。
分布
北海道南部以南から黄海、東シナ海、南シナ海まで分布し、水深50-300mほどの砂泥底に生息する。
形態
成魚の全長は30cmほどで、ホウボウより小さい。背面は一様に橙色 - 赤褐色をしているが、腹面は白色をしている。
頭部は硬い骨板におおわれており、「カナガシラ」の和名もここに由来する。この硬い頭部を義憤に駆られて癇癪を起こした大塩平八郎が、バリバリと噛み砕いて骨ごと食べて呆れられたことが当時の記録に残されている。鼻先が前方にとがっていて、小さなとげが左右に数本ずつかたまって生え、その下に大きな口が開く。胴体はザラザラした細かい鱗におおわれる(ホウボウのウロコよりは大きい)。
胸びれはホウボウよりも小さく、色も赤一色である。胸びれの一番下の軟条3対はホウボウと同じように遊離して太く発達し、これを脚のように動かして海底を歩く。
他のひれの構造もホウボウに似ているが、第1背びれに鮮紅色の大きな斑点があるのが特徴で、これは他のカナガシラ属(Lepidotrigla 属)の魚にも共通する特徴である。この斑点は液浸標本にすると黒くなる。
生態
食材
体の大きさのわりに身は少ないが、旨みと歯ごたえがある美味な白身魚で、料理法も煮付け、唐揚げ、塩焼き、鍋料理、干物など多種多様である。小さなものは蒲鉾など魚肉練り製品の原料にも用いられる。
この魚を縁起物にしている地域もある。たとえば長崎県ではカナガシラという名が「お金が貯まる」に通じるとされ、節分にこの魚を食べる風習がある。
別名
キミヨ(秋田県)、キントウ(宮城県。金頭の音読)、カナ(関東地方)、カナド(関東地方、四国地方)、カナンド(兵庫県)、カナゴ(愛知県)、ガッツ(長崎県)、ギダユウガタリ(鹿児島県)など
- ホウボウと特に区別せず扱う地域もある。カナドという別名もあるが、これが標準和名の同属種もいる。
近縁種
カナガシラ属(Lepidotrigla 属)の魚は他にも多くの種類がいる。種類によって胸びれの模様や体のまだら模様、鼻先のとげなどに変異がある。カナガシラと同様、底引き網で多く漁獲され食用になる。
カナド Lepidotrigla guentheri
- 全長20cmほど。胸びれは深緑色で赤い縁取りがあり、体の横側が黒い。また、第1背びれの前から2本目の棘条(とげ)が長く伸び、体に2本、尾びれに2本の赤い横しまがあるのが特徴。
トゲカナガシラ Lepidotrigla japonica
- 全長30cmほど。胸びれは黄緑色の地に青い縁取りと横しま、斑点があり、体の横側が黒い。また、他の種類より胸びれが特に大きく、全長の半分くらいの大きさがある。
オニカナガシラ Lepidotrigla kishinouyei
- 全長20cmほど。胸びれは黄緑色で青い縁取りがあり、体の横側が黒いが、黄緑部分が橙色のものもいる。