おかま
テンプレート:出典の明記 テンプレート:未検証 テンプレート:差別的
おかま(オカマ、英:Okama)とは、日本における男性同性愛者を指す差別語、蔑称である。
概要
「オカマ」は元々は肛門を意味する江戸時代の俗語であり[1]、転じてアナルセックスをする・される(おカマを掘る・掘られる)こともある女装をする男娼を指し[2]、1980年代頃から女性的な男性全般(非同性愛者含む)への蔑称になった[3]。
元来ある炊事用具の おかま(御釜/御竈)は釜の丁寧語であるが、同性愛者の蔑称としての「カマ」が何なのかについては、底が丸く尻の形と似ている釜とする説、江戸時代に男娼を意味した「陰間(かげま)」がなまったものとする説、それに歌舞伎の「女形(おやま)」を関連づける説、そして梵語で愛欲を意味する「カーマ」を語源とする説など様々なものがある。
広義の男性同性愛者を指すときの「オカマ」は、「(女性的な)男性同性愛者」「オネエ言葉を使う者」「女装趣味の者」「性風俗の職にある者」「水商売や芸能の職にありショーなどを演じている者」「性同一性障害」など、実際には異なる複数の概念が混同されている。
蔑称として
テンプレート:Seealso 男性同性愛者の中でも、性自認が女性的な非女装の男性同性愛者(オネエ)や、女装家(トランスジェンダー、女装だけして身体は男性のままでいたい人)など、女性度が高く、それでいて男性的な部分もある程度残っている同性愛者の一部が「どうせ私たちはオカマです」と自虐的に自称することがある。
だが同じ同性愛者でも、性自認が男性的で、男性としてのアイデンティティを割合い自然と受け入れているゲイや若いゲイ、性同一性障害(MtF,ニューハーフ,今は女性にカテゴライズされる)の人たちはオカマ呼称を差別的だとして嫌がる傾向があり、彼らにオカマを用いるのは明白な差別であるとされる。また一般的にもオカマは蔑称であり、不適切な表現であるとされ、オカマを自称するトランスジェンダー当事者に対してであろうと、第3者が「オカマ」と呼称する場合、差別的・侮辱的とされることがある。2001年6月15日号の『週刊金曜日』の東郷健についての記事「伝説のオカマ 愛欲と反逆に燃えたぎる」のオカマという言葉を巡り、論争が起きている。
オカマ蔑称の歴史と問題
- 女装男娼への蔑称
「オカマ」は戦後の一時期まで女装する男娼への蔑称で[4]、戦後直後には既に女装者は、オカマと呼ばれたくないという抗議の声を上げていた[4]。女装家の青江忠一(青江のママ)は自分を「ゲイボーイ」[5]と思っているので、街中で「オカマ」と罵られると、追いかけてハイヒールで殴って抗議していた[4]。それほど女装者にとって「オカマ」は差別的な蔑称と受け止められていた[4]。
- 使用範囲の拡大
それが非女装の女性的なゲイ[6]などへの蔑称としても使われだしたのは、東郷健が国政選挙に初立候補した1971年辺りからだとされる。彼が「オカマの東郷健です」と演説したり選挙広報番組で発言したのが始まりで、少し後れて1975年にデビューしたおすぎとピーコがそれを受け継ぎ、「私たちオカマです」という自己卑下的な物言いでお茶の間に拡散させた[4]。
- 女性的なゲイ/異性愛男性の蔑称へ
これにより、当初は女装男娼者の中のそれも肛門性交をよくするタイプへの蔑称だったのが、1980年代に入った辺りからは使用範囲が拡大し、女装男性はもちろん、非女装の女性的なゲイ、そして同性愛ではない女性的な異性愛(ヘテロ)男性への蔑称としても盛んに使われるようになった[4]。学校などではゲイ・ヘテロを問わず、少し女性的だと「オカマ」と罵られ、暴力的ないじめに遭う被害も起きた[4]。「男性は、男性らしくなければならない」という性差別的意識も背景にあるとされる。
すこたんソーシャルサービスの主宰者は、大学の非常勤講師として学生に接すると、ヘテロだが少し女性的な男子学生で「オカマと言われて凄く辛い経験をした」という者が「毎年、200人中4〜5人はいる」と話している[4]。男性からとは限らず、クラスの女子生徒や果ては母親からも「オカマみたい」と罵られ、嘲笑され、人間としての尊厳やセクシュアリティを否定されることも多い。この様に「オカマ」蔑称は、ゲイだけではなくヘテロ男性をも傷つけているという問題がある。
- 批判
美輪明宏は一部同性愛者(オネエ、TGの一部)のメディアにおける「私たちはどうせオカマだから」という自虐的な物言いについて、「自分たちはそう自己卑下していればいい。けれど若い人たちはどうなるのか。明日学校で、女性的だという理由でからかわれたりすることになる。せっかく同性愛が市民権を得てきたのに歴史が逆戻りする。」と批判している。
女装家で性社会史研究家の三橋順子は「部落差別や在日差別、女性差別などを指す、様々な蔑称や差別用語の使用に配慮されるようになってきたが、“オカマ”だけが今も遠慮なく使われ、性的マイノリティだけは別になっている」として、「“オカマ”は日本社会に残った差別カテゴリー。メディアにおける最後の差別カテゴリーだ。」と言っている[4]。
代替語「オネエ」の問題点
2006年の日本テレビ『おネエ★MANS』放送後、差別性が高いとされてきたオカマに代わって「オネエ」が、男性的なゲイを含む男性同性愛者全体を指す言葉として使われ始めている。だが本来のゲイ用語としてのオネエの意味は、「女装をしない女性的なゲイ」を指しており[7]、男性性を受容しているゲイや女装男性は含まれない。特に男性的なゲイの中には、オネエとカテゴライズされることに不快感や被差別感を抱くものも多い。「オネエ」呼称はゲイの多様性を否定し、ステレオタイプを強めることになっており、新たに浮上したゲイ差別になりつつある。
脚注
- ↑ (井上章一&関西性欲研究会『性の用語集』講談社現代新書)。
- ↑ 男娼の全てがアナルセックスするわけではない。
- ↑ 三橋順子「テレビの中の性的マイノリティ」(『週刊金曜日』2009.6.12)。
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 4.7 4.8 2010年10月17日「3331 Arts Chiyoda」で開催されたシンポジウム「ジェンダー・セクシュアリティの媒介」での三橋順子の発言より。
- ↑ 1980年代頃まで女装者やニューハーフは「ゲイボーイ」といった。
- ↑ 非女装の男性的なゲイもいる。
- ↑ 三橋順子「トランスジェンダーとテレビ・メディア -操作されるイメージ-」に、「本来のゲイ業界用語であるオネエ概念は、女装しない女性的なゲイ」とある。