エジプト神話
テンプレート:翻訳依頼中 テンプレート:出典の明記 エジプト神話は、キリスト教とイスラム教が広まる以前にエジプト(古代エジプト)の人々によって信仰されてきた神々の体系、宗教を指す。ただし、古代エジプト人の信仰は、おおよそ3000年にわたった長い期間に、またその間に何度も変容を繰り返してきたので、一つの記事(それどころか、ある本をまるごと一冊)使っても、概要以上を示すことはできない。一般にはヘリオポリスで信仰されていたヘリオポリス神話をもとにして語られることが多い。
信仰
神殿
エジプトでは各地に神殿が建てられて神々が崇拝されていた。神々の序列は地方によって異なり、ヘリオポリスにおいてはラー=アトゥムが主神として信仰されていたが、地方によってはプタハなど、別の神を人類創造の主神として崇めていた地域もあった。そのため各地方でそれぞれの地域で信仰する神の社が建造された。ファラオがエジプト神話においては重要な役割を占めておりホルスの跡継ぎと位置づけられていたため、国家によっても多くの神殿が建てられた。その代表格といえるのがアブシンベル神殿である。
世界
創造
エジプトにおける天地創造はやはり地域差があって一概にいえないが、ヘリオポリス神話においては広い海原からラー(アトゥム)が誕生し、独力で神々と世界を形作っていたとされている(創造神話)。ヘルモポリスでは八位一体の虚無を表す神々(オグドアド)が世界創生の中心的役割を担った。メンフィス周辺ではプタハが天地創造の主導的役割を果たし、彼は言葉と思念によって世界のあらゆるものを作り出したとされる。エレファンティンではクヌムが主神として世界を形作った。クヌムは粘土から人間を作り出した神として知られる。このように、天地創造の神話も地方ごとに異なる。
世界観
エジプトにおいて天はヌトという女神であり、地はゲブという男神であった。両者は夫婦であり、最初は隙間なくくっついていたが、父たるシュウ(空気)とテフヌト(湿気)によって引き離されて現在の姿になったという。ゲブはヌトに少しでも近づこうと山々を作り出したとされる。古代エジプト人にとって地は平面であり、ナイル川によって分断された二つの大地と海によりできていると考えられていた。地の底には冥界があり、ラーは夜ここを通って再び地上に現れるとされた。
ナイル川
エジプト人の生活においてナイル川は重要な役割を果たした。そのため、神話でも多く登場する舞台の一つとなっている。例えばオシリスがセトに騙されて棺に封じ込められた後、ナイルに流されたという説話がある。ナイル川の洪水は"ヌビアの女主人"であるサテトによって起こされると信じられていた。そのため彼女はエジプトで崇敬の対象となった。ナイル川の増水とシリウスの運行に一定の関連があることが知られており、シリウス(ソプデト)も神としての尊敬を受けた。シリウスはイシスの魂と呼ばれており、このようなナイル川への関連性からサテトとソプデトは後に習合されるに至った。
死後の世界
エジプト神話において、人間は肉体、バー(Ba)、カー(Ka・精霊)の3つの要素から成り立っていた。人が死ぬとバーは肉体から離れ冥界へ行くが、肉体がそのままであればカーがバーと肉体の仲立ちをしてアアルで再生できるとされた。そのため肉体の保存が必要となり、ミイラ作りが盛んに行われた。ちなみにバーは、人間の頭をした鷹の姿で現される。
ヘリオポリス九柱神
エジプト九柱の神々を参照。
神々
- アク (Akh):霊魂の相。死後カーとバーの結合により生じる。後期にはカーの分裂によりバーと共に生じると信じられた
- アケル (Aker):地平線の神格化。太陽と2頭の獅子(昨日と明日)に囲まれた盥型の大地で表現。冥門と解毒も司る
- アシュ(Ash)
- アスタルテ(Astarte)
- アステン(Asten/Astes)
- アテン (Aten/Aton)
- アトゥム(Atum)
- アナト(Anat)
- アヌケト(Anuket/Anukis):氾濫するナイル川の女神。名称は「(大地を)抱くもの」に由来
- アヌビス (Anubis)
- アピス(Apis)
- アポピス(Apophis)
- アメミット (Ammit)
- アメン(Amen/Ammon)
- アメント(Ament):アメンの女性形。鷹頭/駝鳥頭でしばしば有翼の、太母神
- アンクト(Ankt):小アジアの戦女神
- アンジェティ(Andjety):アンジェト(Gr. ブーシリス)の主神。死者の統治、再生を司る
- イウサアース(Iusaaset/Saosis(項目 Atum 参照)):アトゥムの影にして妻神
- イウニト(Iunit)
- イシス (Isis)
- イミウト(Imiut)
- イムセティ(Imset):ホルスの4人の息子の一人。肝臓を守護する
- イムホテプ(Imhotep)
- ウアジェト(Wadjet):赤冠(デシュレト)を被ったコブラの姿の下エジプトの守護女神
- ウヌト(Unut):ウサギの頭をもつ女神。上エジプトの地方神
- ウネグ(Uneg)
- ウプウアウト(Wepwawet/Ophois):狼姿の戦争・死者の神
- ウレト・ヘカウ(Urthekau)
- オシリス (Osiris)
- カー(Ka):魂魄。人間を構成する要素の1つ
- カデシュ(Qetesh)
- クヌム(Chnum)
- ゲブ (Geb)
- ケプリ(Khepri)
- ケべフセヌエフ(Qebehsenuef):ホルスの4人の息子の一人。腸を守護する
- ケンティ・アメンティウ/ヘンタメンティウ(Khenti-Amentiu/Khentimentiu)
- ケンティ・ケティ(Chenti-cheti)
- コンス (Chons)
- サア/シア(Saa/Sia)
- サフ(Sah):オリオン座の神格化
- シェズム(Shezmu)
- シャイ(Shai):運命の神。蛇の姿をとる
- シャイト(Shait)
- シュー(Shu)
- セクメト(Sekhmet)
- セシャト(Seshat):書記の女神。トートの妻または妹とされる
- セチャト・ホル(Sechat-Hor)
- セト (Set)
- (Sed festival)
- セパ(Sepa):ムカデの神
- セベク (Sobek)
- セラピス(Serapis)
- セルケト(Serket)
- ソカリス(Seker):隼姿の葬祭の神
- ソプデト(Sopdet)
- ソプドゥウ(Sopdu):東部国境の戦いの神
- タウエレト(Taweret)
- タテネン(Tatenen):原初の丘の神格化で大地神
- (Chensit)
- デドゥン(Dedun)
- (Tenenit/Tenenet)
- テフヌト(Tefnut)
- ドゥアムテフ(Duamutef):ホルスの4人の息子の一人。胃を守護する
- トート (Thoth)
- ヌネト(Nunet)
- ヌン(Nu)
- ネイト(Neith)
- ネクベト(Nekhbet):白冠(ヘジェト)を被ったハゲワシの姿の上エジプトの守護女神
- ネヘメト・アウイ(Nechmetawaj)
- ネペル/ネプラ(Neper/Nepra)
- ネフェルテム(Nefertem)
- ネフェルホル(Neferhor)
- ネフティス (Nephthys)
- ネムティ(アンティ)(Anti/Antaeus):隼姿の渡し守の神。オシリスとイシスの伝説ではイシス の渡河を許し、セトに両踵を切られる
- バー (Ba)
- バァ=ペフ(Ba-Pef):冥界の神の1柱。名は「その魂」を意味する
- バアル (Baʿal)
- バステト (Bastet)
- パケト(Pakhet/Pachet)
- バト(Bat):牝牛の姿をした上エジプト第七ノモスの守護女 神。後にハトホル女神に吸収される
- ハトホル (Hathor)
- ハトメヒト(Hatmehit)
- バ・ネブ・デデト(Banebdjedet):雄羊の姿をした下エジプト第16ノモスの守護神
- ババイ (Babi):マントヒヒの神格化。オシリスの最初の息子で、死者およびその生殖能力を司る
- ハピ(Hapi):ホルスの4人の息子の一人。肺を守護する
- ハピ(Hapi):ナイル川の神
- ハルポクラテス(Harpocrates)
- プタハ(Ptah)
- フフ/ヘフ(Huh/Hef):永遠の神格化
- ヘカ(Heka):魔術の神格化。子どもの姿で表される
- ヘケト(Heget)
- ヘサト(Hesat)
- ヘジュ・ウル(Hez-ur):ヒヒの姿をした知恵・月の神
- ベス(Bes)
- ペトスコス(Petesucho)
- ヘデデト(Hedetet):サソリの女神。セルケトと同一視された
- ペトベ(Petbe)
- ヘムスト/ヘメウセト(Hemsut/Hemuset)
- ヘメン(Hemen)
- ベンヌ(Bennu)
- ホルアクティ(Harakhti):昇る太陽の神格化。ホルスの形態の一つ
- ホルス (Horus/Horos)
- ホルソムトゥス(Somtus)
- ホルべヘデティ(Behdeti):有翼日輪または隼の姿をしたエドフの守護神。ホルスの形態の一つ
- マアト(Ma'at)
- マフデト (Mafdet):チーター頭の女神。法の下での裁きの執行、有毒生物からの保護を司る
- マヘス (Maahes):獅子頭の戦争・天候神。母系制とアメン高司祭の保護を司る
- ミン (Min)
- ムト (Mut)
- ムネヴィス(Mnevis):ラーの聖牛。ヘリオポリスで崇拝された
- メヘン(Mehen):冥界の蛇神。夜の世界で太陽神を守護する
- メルセゲル (Meretseger)
- メレト(Meret)
- メンヒト(Menhit)
- メンチュ(Menthu)
- ラー (Ra)
- レシェフ(Resheph)
- ラタウイ(Rat-taui):太陽の女神。メンチュの妻
- ルティ(Ruti)
- レネヌテト(Renenutet):豊穣の女神。コブラの頭をもつ女性として描かれた
- レレト(Reret)
- レンペト(Renpet):「年」の概念の女神
注:この一覧は英語版からの移植である。
参考文献
関連項目