やまだ紫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:Infobox 漫画家 テンプレート:Sidebar with collapsible lists やまだ 紫(やまだ むらさき、1948年9月5日 - 2009年5月5日)は、日本漫画家エッセイスト詩人京都精華大学マンガ学部専任教授。東京都世田谷区出身。本名は白取 三津子(しらとり みつこ)(旧姓:山田)。2人目の夫は、元『ガロ』副編集長の白取千夏雄で、年齢は17歳下である。

経歴

1966年、私立富士見丘高等学校卒業後に詩の同人会『しちにん』へ参加。翌年からデザイン事務所勤務の傍ら、虫プロ商事(手塚治虫主宰)の漫画雑誌『COM』へ漫画作品の投稿を始める。

1969年、『COM』5月号でデビュー。以降同誌に精力的に作品を発表する。『COM』廃刊後は1971年『ガロ』(青林堂発行の漫画誌)に発表の場を移し、同年2月号に『ああせけんさま』が入選。1972年には漫画賞きっての難関であった「ビッグコミック賞」に「風の吹く頃」で佳作3席。

以後、結婚・出産による一時休筆を経て、『ガロ』誌上で『性悪猫』『しんきらり』などの作品を立て続けに連載する。長井勝一(ガロ編集長)、つげ義春(漫画家)、上野昂志(評論家)らから高い評価を得ている。

なお、無名時期の杉浦日向子(漫画家から後に江戸風俗研究家に転身)や近藤ようこ(漫画家)がアシスタントとして参加していることは有名。

1980年代からは、女性詩人の大家である吉原幸子主宰の『現代詩ラ・メール』に詩画連載『樹のうえで猫がみている』を発表した。またH氏賞高見順賞受賞詩人でもある井坂洋子と合作『夢の迷子たち』などを刊行している。

1989年の第15回参議院議員選挙には、ちきゅうクラブ公認で比例区から立候補したが落選している。

毎日新聞生活家庭欄連載のイラストエッセイ『お勝手に』は1994年から3年という異例の長期連載となった[1]。1992年2月からは筑摩書房より『やまだ紫作品集』全5巻の刊行が始まり、それぞれの解説には山田太一、井坂洋子、久田恵上野昂志らが執筆。

1993年には『ガロ』2・3合併号でやまだ紫特集が組まれ、その際はつげ義春高橋章子、井坂洋子、内田春菊黒川創らがコメントや文章を寄せた。

1997年3月には漫画家としては早い時期に公式サイト「やま猫SOMETEIMES」(現・やまねこねっと[2]をオープンしている。

2002年に腎臓摘出手術を受けた後は、術後の患部の痛みや膵臓炎によるI型糖尿病とも戦い、入退院を繰り返すようになる。

2004年からは歌人宮柊二主宰「コスモス」よりの依頼で詩画連載「見上げれば虹」を連載(大学教授就任で中断)。

2006年から京都精華大学マンガ学部ストーリーマンガ学科の専任教授に就任、後進の指導にもあたった。

2007年から京都に在住し、2009年5月5日午前4時16分、京都市内の病院にて脳内出血のため死去。享年62(満60歳) [3]

主な出版物

自著

  • 『性悪猫』(1980年8月、青林堂) - 処女単行本
→1990年筑摩文庫、1992年筑摩書房『やまだ紫作品集』5巻に収録、2009年10月小学館クリエイティブ ISBN 978-4778031299
  • 『鳳仙花』(1980年10月、ブロンズ社) - 『COM』時代の初期作品集
  • 『鈍たちとやま猫』(1981年10月、青林堂) - 短編集
→1992年筑摩書房『やまだ紫作品集』5巻に収録
  • 『しんきらり』(1982年8月、青林堂)
→1992年筑摩書房『やまだ紫作品集』2巻に収録、2009年11月小学館クリエイティブ ISBN 978-4778031305
  • 『はなびらながれ』(1983年11月、青林堂)
→1992年筑摩書房『やまだ紫作品集』4巻に収録
  • 『ゆらりうす色』(1984年6月、講談社)
→1992年筑摩書房『やまだ紫作品集』1巻に収録、2009年12月小学館クリエイティブ ISBN 978-4778031312
  • 『続しんきらり』(1984年10月、青林堂)
→1992年筑摩書房『やまだ紫作品集』2巻に収録、2009年11月小学館クリエイティブ ISBN 978-4778031305
  • 『空におちる』(1985年10月、河出書房新社) - 漫画+エッセイ集
  • 『満天星みた』(1985年12月、大和書房) - エッセイ集
  • 『しあわせつぶて』(1986年9月、青林堂)
→1992年筑摩書房『やまだ紫作品集』3巻に収録
  • 『樹のうえで猫がみている』(1990年、筑摩書房) - 『ラ・メール』連載詩画集
→2001年デジパッド(描き下ろし・未収録作品を加え、CD-ROM版で刊行)
  • 『東京ノスタルジア』(1991年1月、フレーベル館) - エッセイ集
  • 『やまだ紫作品集』全5巻(1992年2月~6月、筑摩書房)
  • 『Blue Sky』第1巻(1992年10月、中央公論社)
→1996年中公文庫
  • 『Blue Sky』第2巻(1993年3月、中央公論社)
→1996年中公文庫
  • 『夢の迷子たち』(1995年6月、翔泳社) - 井坂洋子との合作を収録
  • 人生相談『やま猫人生放談』(1995年7月、同文書院)
  • 毎日新聞連載イラストコラム『お勝手に』(1996年12月、毎日新聞社)
→1999年11月中公文庫(『どうぞお勝手に』と改題)
  • 『マンガ日本の古典』シリーズ[4]第21巻『お伽草子』(1997年4月、中央公論社) ※描き下ろし
→2000年12月中公文庫
  • 『愛のかたち』(2004年11月、PHPエディターズ・グループ発行 / PHP研究所発売) - コミック+エッセイ

挿絵担当

  • 征矢清『ねこになった少年』(1988年3月、岩波書店) ISBN 978-4001109788
→1996年11月岩波少年文庫 ISBN 978-4001121384
  • 大伴茫人『姫様と紀貫之のおしゃべりしながら土佐日記』(1999年、洋泉社) ISBN 978-4896914399
  • 宜保愛子『因縁物語』(2000年2月、青林堂) ISBN 978-4792603151 - 表紙も担当

外部リンク

脚注

  1. 東京本社版と西部本社版のみに掲載。西部本社版は連載途中で打ち切りになった。
  2. 2.0 2.1 やまだ紫没後に移動、保管されているウェブサイト。元のドメインであるyamanekonet.comを現在取得しているのは無関係の団体。
  3. やまだ紫 永眠 白取特急検車場【闘病バージョン】、2009年5月5日付
  4. 1998年2月、文化庁メディア芸術祭マンガ部門で大賞を受賞。