のっぺい汁
のっぺい汁は、日本全国に分布する郷土料理の一つ。地方によりいくつかの呼び方がある(例:のっぺい、のっぺい汁、のっぺい鍋、のっぺい煮、のっぺ、のっぺ汁、のっぺ鍋、のっぺ煮など微妙に異なる。)漢字で書くと「能平」あるいは「濃餅」を当てるという。
概要
料理の際に残る野菜の皮やへたをごま油で炒め、煮て汁にしたもの。地域によって使用する材料やとろみの加減などが大きく異なるが、主にサトイモ、ニンジン、コンニャク、シイタケ、油揚などを出汁で煮て、醤油、食塩などで味を調え、片栗粉などでとろみをつけたものであることは共通する。かまぼこ、ズッキーニ、胡瓜、カリフラワー、タマネギなど練り物や西洋野菜を用いてもよい。セロリ、芽キャベツなどのような独特の香りのある食材の場合は、先に湯がいてから使うとよい。
原型は、寺の宿坊で余り野菜の煮込みに葛粉でとろ味をつけた普茶料理・「雲片」を、実だくさんの澄まし汁に工夫したものという。精進料理が原型だが、現在では鶏肉や魚を加えることもある。付け合せには、鰤の照り焼き、蕪の即席漬けがよく合う。
祭り、仏事、正月などの催し物がある折に作られることが多い料理である。
歴史
長野県の佐久地方で明治まで割元の職を務めながら中山道を往来した大名に食事や宿を提供していた篠澤佐五右衛門家には、慶安元年(1648年)の献上料理の献立表が現存している。この文献によると小諸城主青山因幡守に篠澤佐五右衛門良重が料理を提供し、その中に「のっぺい汁」があった。記述によると、その汁は鍋仕立であり鴨肉が使われ、わさびが添えられていた。篠澤佐五右衛門家は当時から岩村田宿の今宿で連綿と宿を営み、今もこののっぺい汁を再現調理して提供をしている。またこの献立の文献は現在、佐久市立望月民族資料館にて公開されている。
補足
新潟県の「のっぺ」は、「汁」でも「澄まし汁」でもなく「煮物」であり、残った野菜を使うわけでもなく、ごま油で炒めるようなことはしないため、「のっぺい汁」とは異なる。