M110 203mm自走榴弾砲
テンプレート:戦闘車両 M110 203mm自走榴弾砲は、アメリカ合衆国が開発した自走榴弾砲である。
なお、この項では搭載砲以外はほとんど共通といって良いM107 175mm 自走カノン砲についても記述する。
概要
M107およびM110は1956年より開発が進められた大口径自走榴弾砲である。
走行装置はM113装甲兵員輸送車の設計を流用したもので、エンジンはM109 155mm自走榴弾砲と共通である。
航空機で空輸する事を考慮されているため非常に小型に設計されている。
車体前部左側に機関部があり、中央部から後部にかけて砲を剥き出しのまま搭載している。そのためNBC防護などは考慮されていない。車体が小型であるため、弾薬は2発しか搭載できず、射撃に必要な13名の要員のうち8名は随伴する弾薬輸送車輌に搭乗している。このため自走砲架とも呼ばれる。発射時の反動から車体を固定するため、車体後部には大型の駐鋤(ちゅうじょ、英語ではSpade)が装備されている。
陸上自衛隊での運用
日本ではM110A2を採用して1983年からライセンス生産が行われ、1984年度末から「203mm自走りゅう弾砲」の名称で陸上自衛隊方面総監直轄の特科大隊、北部方面隊の第1特科団、西部方面隊の西部方面特科隊隷下の特科部隊などに配備が進められ、計91両が配備されている。
砲身はアメリカからのFMS(有償援助)で取得し、砲架を日本製鋼所、車体を小松製作所が分担して製造している。運用の際には87式砲側弾薬車が随伴し、弾薬の運搬と補給を行う。
2000年に防衛庁(当時)により「サンダーボルト」の愛称が与えられたが、配備部隊では「自走20榴(じそうにいまる)」もしくは「20榴(にじゅうりゅう)」とも通称される。
開発国のアメリカですでに退役していることや、火砲の定数が400門まで削減されたことから近い将来退役すると思われるが具体的な情報は発表されていない。
配備部隊
- 西部方面特科隊
- 第112特科大隊
バリエーション
- M107
- 試作時名称 T235E1。M110と並行して開発され、1961年に制式化された。1980年まで524両が生産されている。搭載砲はM113カノン砲(175mm 64.5口径)、最大射程は32,700メートル。
- 西側諸国で採用されたが、アメリカ陸軍においては自走砲はM109とM110に統一する事となり、全車装備から外されている。余剰となったM107は搭載砲を換装してM110A1に改造された。
- M110
- 試作時名称 T236E1。M107と並行して開発され、1961年に制式化された。約750両が生産されている。搭載砲はM2A2榴弾砲(203mm 25口径)、最大射程は16,800メートル。搭載砲の射程が短いという欠点があったため、砲の換装が行われM110A1/A2に改造されている。
- アメリカ陸軍以外にも西側各国で採用された。
- M110A1
- M107およびM110の搭載砲を換装した車両で、1976年に制式化された。搭載砲はM201榴弾砲(203mm 37口径)に換装され、最大射程は21,300メートルに向上した。搭載砲の換装以外にも数箇所の再設計が行われ信頼性の向上がなされている。
- M110A2
- M107およびM110A1から改装された車両で、1978年に制式化され250両が完成している。搭載砲はM201A1榴弾砲(203mm 37口径)となっており、これはM110A1に搭載されているM201榴弾砲にマズルブレーキなどを追加した改良型となっている。
- M110A2はアメリカ陸軍以外にも日本を含む9ヶ国で採用された。なお、アメリカ陸軍では長距離火力支援任務はMLRSに全面的に移行する計画で、M110は順次退役している。
- 退役したM110の砲身は、湾岸戦争時にGBU-28レーザー誘導爆弾の弾体に流用されている。
- M578 LRV(Light Recovery Vehicle)
- テンプレート:Main
- M107/M110の車体を流用した戦車回収車。砲の代わりに360°回転可能な上部構造物にクレーンブームとウィンチを備えている。主にベトナム戦争で活躍した。
- W-90
- 1993年に公開された、M107/M110の車体にノリンコ(中国北方工業公司)製の203mm榴弾砲(駐退器・マズルブレーキの形状が全く異なる)を搭載した、中華人民共和国開発の半オリジナル車両。
- 車体はアメリカが援助したパキスタン軍の車両もしくはベトナム戦争時にアメリカが放棄したものを入手したと考えられている。
- M110-203-mm-howitzer-yuma-1975.jpg
M110A1
- M578 Light Team Spirit 84.jpg
M578 戦車回収車
採用国
登場作品
- 『ゴジラ(1984年)』
- 『ゴジラvsビオランテ』
- 『ゴジラvsキングギドラ』
- 『大戦略シリーズ』
関連項目
外部リンク
テンプレート:第二次世界大戦後のアメリカの装甲戦闘車両 テンプレート:第二次世界大戦後のイギリスの装甲戦闘車両 テンプレート:自衛隊の装甲戦闘車両 テンプレート:大韓民国の装甲戦闘車両