ホンダ・K型エンジン
K型エンジン(Kがたエンジン)は、本田技研工業で製造されている中型車種用の直列4気筒ガソリンエンジンである。
機構
i-VTEC
- K20A,K24A
従来のB型及びF型の後継エンジンにあたる、直列4気筒 DOHC 16バルブ クロスフロー エンジンである。回転方向は従来と異なり逆時計回り[1]である。 次世代に向け、CO2の削減(燃費の向上)と排気ガスのクリーン化を両立しながら、走る楽しさ(動力性能の向上)との高次元での融合を目指したエンジンを、ホンダは「i-シリーズ」と称し、K型はその第1弾である。
吸・排気バルブはそれぞれ2個ずつで、タイミングチェーンで駆動されるカムシャフトにより、スイングアームを介し開閉される。装着される可変バルブタイミング・リフト機構のi-VTECは、低速域[2]では吸気バルブのうち片方をほぼ休止され、吸気側カムシャフトの位相を変化しオーバーラップ量を調整する「VTC(Variable Timing Control)」が組み合されている。スイングアームには摺動部のフリクションを低減するために、ローラー機構を使用している。点火プラグが燃焼室の天井中央部に取付けられている。シリンダーブロックはアルミダイカスト製で、クランクシャフトの支持剛性を上げるためにロアブロック構造が採用されている。2次のエンジンの振動を低減させるためのバランサーが装着された。 ボアピッチはF型と同じ94mmであるが、タイミングチェーンの採用や補機サーペンタイン駆動などにより、エンジン長さを抑えられている。
燃料供給装置はPGM-FI仕様のみで、インテークマニホールドの各気筒のポートにインジェクターが取付けられたマルチポイント式である。インテークマニホールドに可変吸気装置が装備され、i-VTECとの協調制御により中・低速域のトルクと高速域の出力を両立させている。エンジン後方にエキゾーストマニホールドを取付けることにより、エンジンと三元触媒との間隔を近づけ、冷間時でも早期から排気ガスの浄化を可能にした。 2008年以降の仕様では、エキゾーストマニホールドが無く、シリンダーヘッド内で隣り合う排気ポートが集合し、その直後に三元触媒が装備されるほか、吸気側にエアフロメーターが取付けられ、更なる排気ガスの浄化が図られている。
R-Spec
- K20A
タイプR用に開発され、各部が高回転/高出力化を重視した仕様になっている。 可変バルブタイミング・リフト機構は、低速域と高速域とでバルブタイミングとリフト量を変更する。インテークマニホールドは、可変吸気装置を廃し吸気慣性効果を向上させた単管等長仕様である。シリンダーヘッドの吸/排気ポートは、細粒砂型により形状の高精度化や壁面の平滑化が図られている。 日本仕様においては、フリクションの低減のためにバランサーも廃されている。
i-VTEC I
- K20B
標準仕様のi-VTEC仕様の燃料供給方式を筒内直接噴射(直噴)にし、低燃費、排気ガスのクリーン化と高出力をさせている。インジェクタを燃焼室天井中央部に取付けた「センターインジェクション」を採用し、空燃比 65:1の超希薄燃焼を実現しながら平成17年排出ガス基準50%低減レベルをクリアした。
バリアブルフロー・ターボ
- K23A
エンジン後方に搭載したバリアブルフロー・ターボは、以前C型に搭載されたウィングターボのような可動ベーンは用いず、ソレノイドで駆動するダイヤフラムアクチュエーターによってフラップバルブを制御し、低速域ではタービンへの通路を狭め内側のスクロールへのみ排気ガスを流入させることでタービンを高回転に保ち、高速域では外側のスクロールへも排気ガスを送り排圧を低減させる。
EARTH DREAMS TECHNOLOGY
- K24W
2014年までに各車両カテゴリーで燃費No.1を目指し、2020年までにCO2排出量を2000年比で30%の低減を目指すために投入される次世代革新技術で、i-VTEC I 以後 再び燃料供給方式に直噴が採用されている。加えて、高圧縮比化や低摩擦化 などにより、燃費や出力は5%、最大トルクは10%程度向上している。
歴史
- 2000年10月26日に発表されたストリームに、2,000ccのK20Aが初めて採用された。
- 2001年7月2日に発表された2代目インテグラ・タイプRに、ハイチューン仕様のK20Aが採用された。
- 2002年10月10日に発表された7代目アコード及び4代目アコードワゴンに、2,400ccのK24Aが採用された。ハイオク仕様と、レギュラー仕様のエンジンが設定された。
- 2003年11月27日に発表されたストリーム・アブソルートに、2,000ccガソリン直噴エンジン i-VTEC IのK20Bが採用された。
- 2006年4月13日に発表されたアキュラ・RDXに、バリアブルフロー・ターボを装着した2,300ccのK23Aが採用された。
- 2012年1月11日に発表された9代目アコード(北米仕様)に、EARTH DREAMS TECHNOLOGYを投入した2,400ccのK24Wが採用された。
バリエーション
K20A
標準仕様
- 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
- 排気量:1,998cc
- 内径×行程:86.0mm×86.0mm
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
- 参考スペック(FD2 シビック)
- 最高出力:114kW(155PS)/6,000rpm
- 最大トルク:188N·m(19.2kg·m)/4,500rpm
- アリエル・アトム(エンジン提供)
R-Spec
- 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
- 排気量:1,998cc
- 内径×行程:86.0mm×86.0mm
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
- 参考スペック(FD2 シビック・タイプR)
- 最高出力:165kW(225PS)/8,000rpm
- 最大トルク:215N·m(21.9kg·m)/6,100rpm
- VEMAC RD200(エンジン提供)
- アリエル・アトム(エンジン提供)
K24A
標準仕様
- 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
- 排気量:2,354cc
- 内径×行程:87.0mm×99.0mm
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
- 参考スペック(RM4 CR-V)
- 最高出力:140kW(190PS)/7,000rpm
- 最大トルク:222N·m(22.6kg·m)/4,400rpm
- CR-V(RM4)
- BF115D/BF135A/BF150A(船外機)
ハイオクガソリン仕様
- 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
- 排気量:2,354cc
- 内径×行程:87.0mm×99.0mm
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
- 参考スペック(RB3 オデッセイ アブソルート)
- 最高出力:151kW(206PS)/7,000rpm
- 最大トルク:232N·m(23.7kg·m)/4,300rpm
- アキュラ・TSX(CU2)
- アキュラ・TSXスポーツワゴン
K24W
標準仕様
- 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
- 排気量:2,356cc
- 内径×行程:87.0mm×99.1mm
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
- 参考スペック(RC1 オデッセイ)
- 最高出力:129kW(175PS)/6,200rpm
- 最大トルク:225N·m(23.0kgf·m)/4,000rpm
- オデッセイ(RC1/2)
直噴仕様
- 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
- 排気量:2,356cc
- 内径×行程:87.0mm×99.1mm
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI 直噴)
- 参考スペック(RC1 オデッセイ アブソルート)
- 最高出力:140kW(190PS)/6,400rpm
- 最大トルク:237N·m(24.2kgf·m)/4,000rpm
- オデッセイ アブソルート(RC1/2)
- アコード(北米仕様)
存在したバリエーション
K20B
- 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
- 排気量:1,998cc
- 内径×行程:86.0mm×86.0mm
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI 直噴)
- 参考スペック(RN5 ストリーム・アブソルート)
- 最高出力:115kW(156PS)/6,300rpm
- 最大トルク:188N·m(19.2kg·m)/4,600rpm
K20Z
標準仕様
- 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
- 排気量:1,998cc
- 内径×行程:86.0mm×86.0mm
- 圧縮比:9.6
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
- 参考スペック(FA2 CSX)
- 最高出力:115kW(157PS)/6,000rpm
- 最大トルク:188N·m(19.2kg·m)/4,500rpm
R-Spec
- 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
- 排気量:1,998cc
- 内径×行程:86.0mm×86.0mm
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
- 参考スペック(FN2 シビック タイプR)
- 最高出力:148kW(201PS)/7,800rpm
- 最大トルク:193N·m(19.7kg·m)/5,600rpm
K23A
- 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
- 排気量:2,300cc
- 内径×行程:86.0mm×99.0mm
- 過給機:可変ノズルターボ
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
- 参考スペック(TB1 RDX)
- 最高出力:179kW(243PS)/6,000rpm
- 最大トルク:355N·m(36.0kg·m)/4,500rpm
搭載されていた車種
K20A
- シビック(FD2)
- シビック タイプR(EP3)
- ストリーム(RN3/4)
- インテグラ(DC5)
- インテグラ タイプR(DC5)
- アキュラ・TSX(DC5)
- ステップワゴン(RF3/4/5/6/RG1/2)
- アコード(CL7/8)
- エディックス(BE3/4)
K20B
- ストリーム アブソルート(RN5)
K20Z
K23A
- アキュラ・RDX(TB1)
K24A
- エレメント(YH2)
- ステップワゴン(RF7/8/RG3/4)
- オデッセイ(RB1/2/3/4)
- アコード(CL9/CU2)
- アコードワゴン(CM2/3)
- アコードツアラー(CW2)
- アキュラ・TSX(CL9)
- エディックス(BE8)
- CR-V(RE3/4)
- エリシオン(RR1/2)
- エリシオン プレステージ(RR1/2)
脚注
- ↑ 出力取出軸端より見た時の回転方向。JIS B 8001による。
- ↑ エンジン回転数の正式名称はエンジン回転速度。 JIS B 0108-1による。
関連項目
- i-VTEC
- ガソリン直噴エンジン
- 可変ノズルターボ
- ホンダのエンジン型式一覧
- B型エンジン
- F型エンジン
- H型エンジン
- Formula 3
- Formula 4
- インターナショナル・フォーミュラ・マスター
外部リンク
- 本田技研工業(オフィシャル)
- テクノロジー・ダイジェスト Type-R用 K20A(オフィシャル)
- ヴィーマック カー カンパニー
- アリエル・モーター