ファウルボール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
ファイル:Nook logan foul ball.jpg
打球がファウルボールになった打者(ヌック・ローガン

ファウルボールテンプレート:Lang-en-short )とは、野球ソフトボールにおいて打者の打球がフェアゾーンに入らなかったもののことである(例外あり)。公認野球規則2.32において定義がなされている。単に「ファウル」とも呼ばれる。

定義

野球のフィールドは本塁と一塁を結ぶ線、本塁と三塁を結ぶ線の2本のファウルラインで区切られており、このうち捕手以外の守備側の選手や二塁ベースが存在する側をフェアゾーン(フェアグラウンド)、それ以外をファウルゾーン(ファウルグラウンド)と呼ぶ。なお、ファウルライン上はフェアゾーンである。

ファウルボールとは、打者が打った打球が次のようになったものをいう:

  1. 最終的に、本塁と一塁または三塁の間のファウルゾーンに止まったもの[1]
  2. 一塁または三塁をバウンドしながら外野へ越えていく際に、一塁または三塁よりもファウルゾーン側を通過したもの
  3. 最初に落下した地点が、一塁または三塁を越えたファウルゾーンであるもの
  4. ファウルゾーン内(ファウルゾーンの上空も含む)で、野手や走者などのプレーヤー、審判員、地面以外のもの(フェンスやネットはもちろん、捕手が外したマスクや打者が投げ捨てたバット、球審が誤って落とした箒なども含む)に触れたもの[2]
  5. まだバッタースボックス内にいる打者の身体や着衣または打者が持っているバットに当たったもの

以上の定義は公認野球規則2.32により定められている。

概要

審判員がファウルボールの判定を行う際は「ファウルボール」と発声し、両手を上方に広げたジェスチャーを行う。ファウルボールが捕球されなかった場合はボールデッドでとなる(公認野球規則5.09(e)の原文、「捕球」はノーバウンドでの捕球を指す)。走者は投球時に占有していた塁に戻り、打者は打ち直す。このとき、ボールカウントが0ストライク、または1ストライクの場合は、ストライクカウントが1つ追加される。2ストライクの場合はボールカウントはそのままで続行される。ファウルゾーンに飛んだ飛球であっても、グラウンドに落下する以前に野手が捕球した場合は、フェア地域で飛球が捕球された場合と同様に打者はアウト、ボールインプレイである。よって、捕球によって三死となった場合以外は走者にリタッチの義務が発生し、リタッチをした後は進塁を試みてもよい(タッグアップ)。

打者はファウルボールを何本打っても、そのこと自体によりアウトになることはない[3]。しかし、2ストライク後にバント(スリーバントと呼ばれる)した打球がファウルボールとなった場合は第3ストライクが宣告され、打者は三振でアウトになる。このルールが追加される前は、意図的にバントで繰り返しファウルボールにし、相手の投手を疲れさせ降板させようとする戦法が広く使われていた。現在でも投手に多く投球させるために「カット」と称して、自分に不利な球筋の投球に、当てるだけのバッティングを行いわざとファウルボールにする戦術は行われているが、バントに比べれば難しい行為である[4]テンプレート:See also

規則適用上の注意点

打球が一度本塁と一塁または三塁の間のファウルゾーンでバウンドしても、そのまま静止するか、一塁または三塁を越えるか、プレーヤーなどに触れない限りはファウルボールとはならない。プレーヤーなどに触れ、ファウルボールと判定されるまではボールインプレイである。打球にスピンがかかっていたり、イレギュラーバウンドをしたりするなどの理由で、まれに打球のバウンドが変わってファウルグラウンドからフェアグラウンドに入ってくる場合があるが、最初に打球が野手に触れた地点がフェアゾーンであるならば、それ以前に本塁と一塁または三塁の間のファウルゾーンでバウンドしていたとしても、フェアボールとなる。

観戦時におけるファウルボールの扱い

メジャーリーグベースボールでは、ファンがボールを返さなかった事がきっかけで、テンプレート:Byからファウルボールをプレゼントするサービスが始まった[5]

日本プロ野球の一軍公式戦でスタンドに入ったファウルボールは全球場で観客が持ち帰れるが、かつては景品と交換して返却するか、あるいはただ返却する制度が一般的だった。二軍戦やアマチュア野球では最寄の係員に返却することが一般的。阪神甲子園球場での選抜高等学校野球大会全国高等学校野球選手権大会では持ち帰ることができる。いずれの場合においてもファウルボールをグラウンドに投げ返してはならない。

ファウルボールによる事故

プロ野球において、飛んできたファウルボールにぶつかって大怪我をする事例も少なくない。主催者側は安全に運営する一定の義務はあるものの、チケットの裏面には試合観戦契約約款第13条が記載しており、主催者側には責任がない旨が明記されている。仙台地方裁判所においては、野球には臨場感が欠かせない要素であるとした上で、「過剰な安全施設はプロ野球の魅力を減らす」として、一定の安全対策をしていれば充分としている。

例えば楽天球団等は、不慮の事故に備えてヘルメットの貸し出し等を行っている。それと同時に楽天球団は「試合中はボールから目を離さないでほしい」と呼びかけている。また各球場に増設されたフィールドシートの大部分においては、ヘルメットが貸与され着用するよう呼びかけられ、またグラブも貸与される球場もある。一部の球場はこれら事故に対応するため、保険に加入している所もあるが、基本的にはその場での応急処置までしか求められないので注意が必要である。ファウルボールが飛んでくる危険性のある席で観戦する際には、ヘルメットやグラブの着用が望ましく、ボールから目を離したり、売り子と話す時も充分な注意が必要である。酔っている状態等、回避できそうにない場合は、より安全な席を利用したほうが良い。また、入場時において、著しく酒気を帯びている者は主催者によって入場拒否される場合がある。但し、身体に何らかしらの要因があり、ボールを避ける能力を有しない者でも観戦自体は自己責任で行う事ができる。また補助犬等も入場する事ができる。

またボール等の追いかけ等、他の観客に損害を及ぼす行為も禁止行為となっており、例えば東京ドームでは、ファンサービスとしてボールが投げ込まれた際、怪我のないよう十分注意した上で、投げ込み実施時にはボールを追いかけてはならず、また席を離れないようホームページ上で呼びかけている[6]

しかしながら、実際には、防護ネットを外した札幌ドームでは09年には94件、10年には99件と毎年100件近くの事故が発生している。大きな事故事例としては、宮城球場で2005年に児童が頭がい骨陥没骨折する事故が、2008年に右目眼球破裂事故が起きている。また札幌ドームでは失明する事故が2007年と2010年に発生している。またメジャーリーグにおいては、少なくとも過去に5件以上の死亡事故が発生している。過去の事故においては、ボールが打球に当たってから到達するまで約2秒、注意喚起がなされてから0.5秒で直撃したために、相応の注意が必要である。

また、マスコットパフォーマンスや、試合中の飲食物の販売に気をとられる事もあるが、注意が必要である。球場ではアルコール等も販売しているが、ボールを回避できない程の飲酒は危険である。

アメリカの裁判事例においては、マスコットが観客の注意を逸らせたとして球団に責任認めた事例があるものの[7]、日本の裁判事例においては、売り子からビールを購入したことが契機となってボールから目を離したために発生した事故についても、自己責任であるとしている。[8]

日本ではファウルボールがスタンドに入る時は笛とアナウンスで注意されるが、アメリカではそのような注意がなく、自分での判断が求められる。

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:野球
  1. ボールが外野に到達しなければ、ボールが動いている間はフェアなのかファウルなのか確定しない。
  2. この場合、触れた瞬間のボールの位置を判断基準とする。プレイヤーや審判員等の位置は無関係である。
  3. 「36本打つとアウトになる」などというものは都市伝説であり、事実無根である。
  4. ただし、スローピッチソフトボールにおいては2ストライク後のファウルボールは3ストライクとなり、三振でアウトになる。
  5. テンプレート:Cite book
  6. 東京ドームシティ|野球情報|野球観戦時のお願い 2013年10月20日閲覧。
  7. Lowe v. California League of Professional Base-ball, 65 Cal. Rptr.105(4th Dist. Ct. App. 1997)
  8. 弁護士コラムvol.29 「ファールボールが直撃してけがをしてしまった場合の球団主催者の責任」 蔦尾健太郎