トラツグミ
トラツグミ(虎鶫、学名:Zoothera dauma)はスズメ目ツグミ科に分類される鳥類の一種。学名の内種名のdaumaはインドの部族名に因んでつけられたもの。
分布
シベリア東南部から中国東北部、朝鮮半島などで繁殖し、冬季はインド東部からインドシナ半島、フィリピンなどに渡りをおこない越冬する。オーストラリア、ニュージーランドにも分布している。
日本では留鳥または漂鳥として周年生息し、本州、四国、九州の低山から亜高山帯で繁殖する。北海道には、夏鳥として渡来する。
形態
体長は30cmほどでヒヨドリ並みの大きさ。頭部から腰までや翼などの体表は、黄褐色で黒い鱗状の斑が密にある。体の下面は白っぽい。嘴は黒く、脚は肉色である。雌雄同色である。
生態
主に丘陵地や低山の広葉樹林に好んで生息するが、林の多い公園などでも観察されることがある。積雪の多い地方にいるものは、冬は暖地へ移動する。
食性は雑食。雑木林などの地面で、積もる落ち葉などをかき分けながら歩き、土中のミミズや昆虫類などを捕食することが多い。冬季には、木の実も食べる。
繁殖形態は卵生。木の枝の上に、コケ類や枯れ枝で椀状の巣を作り、4-7月に3-5卵を産む。
さえずりは「ヒィー、ヒィー」「ヒョー、ヒョー」。地鳴きは「ガッ」。主に夜間に鳴くが、雨天や曇っている時には日中でも鳴いていることがある。
人間との関わり
森の中で夜中に細い声で鳴くため鵺(ぬえ)または鵺鳥(ぬえどり)とも呼ばれ、気味悪がられることがあった。「鵺鳥の」は「うらなけ」「片恋づま」「のどよふ」という悲しげな言葉の枕詞となっている。トラツグミの声で鳴くとされた架空の動物はその名を奪って鵺と呼ばれ今ではそちらの方が有名となってしまった。
Sibley分類体系上の位置
日本国内の亜種
日本国内では本亜種 Zoothera dauma aurea (Holandre, 1825)のほか次の亜種が確認されている。
- オオトラツグミ
- 学名:Zoothera dauma major (Ogawa, 1905)、英名:Amami Thrush
- 奄美大島に生息する。天然記念物、絶滅危惧II類(VU)[1]及び国内希少野生動植物種(種の保存法)に指定されている。尾羽の枚数、囀りが異なるため、本種とは別種とする説もある。
- コトラツグミ
- 学名:Zoothera dauma horsfieldi (Bonaparte, 1857)、英名:Horsfield's Thrush
- 西表島から台湾にかけて分布する。情報不足[2]
脚注
- ↑ 鳥類レッドリスト (環境省)2006年版でのランク変更
- ↑ 鳥類レッドリスト (環境省)2006年版でのランク変更