ジュール・マスネ
ジュール・エミール・フレデリック・マスネ(Jules Emile Frédéric Massenet, 1842年5月12日 - 1912年8月13日)はフランスの作曲家。
オペラで最もよく知られ、その作品は19世紀末から20世紀初頭にかけて大変人気があった。現在も特に「マノン」、「ウェルテル」、「タイス」は頻繁に上演され、主要なオペラハウスのレパートリー演目となっている。「タイス」の間奏曲である「タイスの瞑想曲」は、ヴァイオリン独奏曲としても人気がある。
生涯
マスネはフランス、ロワール県モントーで生まれた。モントーは今でこそサン=テチエンヌの都市部の一地区となっているが、当時は辺鄙な小村であった。マスネは1848年、家族とともにパリに移り住み、1853年、11歳でパリ国立高等音楽学校へ入学した。 1862年、カンタータ「ダヴィッド・リッツィオ」(David Rizzio)でローマ賞を受賞、3年をローマで過ごした。初めてのオペラは1867年にオペラ=コミック座で上演した一幕ものの作品であったが、彼がチャイコフスキーやグノーに並ぶ賞賛を勝ちえたのはオラトリオ劇「マグダラのマリア」によってである。
マスネは普仏戦争に兵士として従軍し、その間作曲活動を中断したが、1871年に戦争が終わると、創作活動に復帰した。1878年からはパリ国立高等音楽院の教授を務めた。同音楽院での彼の教え子にはギュスターヴ・シャルパンティエ、レイナルド・アーンやシャルル・ケクランなどがいる。彼の最大の成功は、1884年の「マノン」、1892年の「ウェルテル」と1894年の「タイス」である。特筆すべき後の作品として「ドン・キショット(ドン・キホーテ)」があり、1910年にモンテカルロで初演され、ロシアの伝説的バス歌手フョードル・シャリアピンが主役をつとめた。
マスネはリヒャルト・ワーグナーのライトモティーフの技法を使用したが、これにフランス風の軽妙さと叙情性を加えており、甘美なメロディーとフランス的なエスプリが特徴である。ドライで真面目であったヴァンサン・ダンディは、マスネが「秘められた、ほとんど宗教的なエロティシズム」(un érotisme discret et quasi-réligieux )を用いていると批判しているが、生涯を通じてマスネは世界で最も人気のある作曲家であったし、その傑作には今日なお色あせない快活さと魅力がある。マスネは申し分のないメロディメーカーであり、まさに「舞台人」であり、よきにせよ悪きにせよ、誰が聞いても間違いなく彼の作品だとわかるような強い個性を持った、唯一的な芸術家であった。
オペラの他に、バレエ、オラトリオ、カンタータ、オーケストラ作品、また200以上の歌曲を作曲している。幾つかの作品は広範な人気をもち、今でも頻繁に演奏されている。例えば、バイオリン独奏とオーケストラで演奏される「タイス」の「瞑想曲」は殊に有名であるし、ピアノの練習曲としてよく用いられる、オペラ「ル・シッド」の「アラゴネーズ」や歌曲「エレジー」もよく知られる。
作品リスト
マスネのオペラ作品一覧も参照
オペラ
- 大伯母 - 1867
- バザンのドン・セザール - 1872
- ラオールの王 - 1877
- エロディア(Hérodiade) - 1881
- マノン - 1884
- ル・シッド - 1885
- エスクラルモンド - 1889
- マギ(ゾロアスタ教祭司)(東方の三賢人) (Le Mage) - 1891
- ウェルテル - 1892
- タイス (オペラ) - 1894 - (曲中のタイスの瞑想曲が特に有名)
- マノンの肖像 - 1894
- ナバラの娘 - 1894
- サッフォー - 1897
- シンデレラ - 1899
- グリセリディス - 1901
- ノートルダムの曲芸師 - 1902
- 天使ケルビム - 1903
- シェリュバン - 1905
- アリアーヌ(アリアドネ) - 1906
- テレーズ - 1907
- バッカス - 1909
- ドン・キホーテ - 1910
- ローマ - 1912
- パニュルジュ - 1913
- クレオパトラ - 1914
- Amadis - 1922
オラトリオとカンタータ
- David Rizzio - 1863
- Marie-Magdeleine - 1873
- Ève - 1875
- Narcisse - 1877
- La Vierge - 1880
- Biblis - 1886
- La Terre Promise - 1900
バレエ
管弦楽
- 組曲第1番- 1867
- 組曲第2番 Scénes Hongroises ハンガリーの風景 - 1870
- 組曲第3番 Scénes Dramatiques 劇的風景 - 1873
- 組曲第4番 Scénes Pittoresques 絵のような風景 - 1874
- 組曲第5番 Scénes Napolitaines ナポリの風景 - 1876
- 組曲第6番 Scénes de Féerie おとぎの国の風景 - 1881
- 組曲第7番 Scénes Alsaciennes アルザスの風景 - 1882
- Fantaisie pour violoncelle et orchestre - 1897
- Concerto pour piano et orchestre - 1903
関連項目
- モンテカルロ市街地コース - F1モナコグランプリの開催地。「マスネ」コーナーがある。