ミナレット
ミナレットは、モスクに付随し、礼拝時刻の告知(アザーン)を行うのに使われる塔である。ミナレットはトルコ語のミナレ (Minare) に由来する西欧諸言語による名称で、アラビア語ではマナール (منار manār) あるいはマナーラ (منارة manāra) といい、光(ヌール)と同一語根の語であることから光塔と訳されることもある。南アジアではミーナール (مينار mīnār) とも呼ばれる。
歴史
起源については不明であるが、シリア地方のキリスト教の教会に付設されていた鐘楼を転用したとする説があり、また語源からシリア・エジプトの沿岸部にあった灯台や砂漠に立てられた目印の塔を起源とするとも考えられている。
8世紀頃から壮大なものが建設されるようになり、イスラムの権威を象徴する建造物とみなされて盛んに立てられるようになった。例えば、世界最大のミナレットであるデリーのクトゥブ・ミーナールはインドで初めてのイスラム王朝である奴隷王朝によって建てられ、マルウィヤ・ミナレットはアッバース朝のムウタスィムによって建てられ、オスマン帝国はコンスタンティノポリス(イスタンブル)の聖ソフィア大聖堂をモスクに転用した後、4本のミナレットを増築している。
現在では、集団礼拝のための集会モスク(ジャーミイ)には必ずミナレットが建てられるものとみなされているが、ミナレットをもたないモスクも珍しいわけではない。
構造
ミナレットは構造から角柱型(シリア・北アフリカ)と円柱型(トルコ・イラン以東)に大別される。多くは尖塔であるが、イラクでは螺旋状のものも見られる。円柱型の場合、直径はおおむね2 m程度で、内部は螺旋階段を持つ。
先端は円錐構造となっており、塔の中間以上の部分にはアザーンの唱手の立つ柵付きの台が、ひとつもしくは複数あり、アザーンの詠唱はここで行われる。ただし、現在ではアザーンはミナレットに取り付けたスピーカーによる放送によっていることがむしろ普通である。
- Kairo Ibn Tulun Moschee BW 7.jpg
イブン=トゥールーン・モスクのミナレット
関連項目
- クトゥブ・ミナール(インドにある世界で最も高いミナレット)
- ジャームのミナレット(アフガニスタンにある世界で2番目に高いミナレット)
- マルウィヤ・ミナレット(イラクにあるアルキメデス螺旋のミナレット)