ペデストリアンデッキ
ペデストリアンデッキ(pedestrian deck)とは、高架等によって車道から立体的に分離された歩行者専用の通路である。「歩行者回廊」「公共歩廊」とも言われる。大規模なものは広場の機能も併せ持つ。「ペデストリアンデッキ」という単語は、「車道を横断する」というよりむしろ「車道をはさんだ建物同士を連結する」という意味合いで用いられ、「横断歩道橋」とは区別される場合が多い。
「ペデストリアンデッキ」という名称は和製英語である。英語で pedestrian は歩行者を意味し、地下道なども含めて歩行者用通路全般を pedestrian walkway 、略して"pedway"(ペドウェイ)と呼ぶ。特に高架であることに注目した言い方としては、 elevated pedestrian deck や elevated pedestrian walkway などもある。
概要
ペデストリアンデッキは主に鉄道駅の周辺や超高層ビル付近などの人通りの多い箇所に、歩行者と自動車の通行を分離するために設置される。駅前再開発事業の一環として、再開発ビルと橋上化された駅との連絡のために新設される事例が多く見られる。
歩行者と自動車の通行分離は、1963年にイギリスで発行されたTraffic in Town(通称:ブキャナンレポート)に既に見られる。同レポートでは、建物と一体化されたペデストリアンデッキなどを提案している。
ペデストリアンデッキが建物に接続する場合、建物のメインの入り口がペデストリアンデッキの高さに設けられる場合が多い。例えば百貨店は、通常1階に設けられる売り場が2階に、地階の売り場が1階にそれぞれスライドする。鉄道駅の構造も橋上駅となり、改札口がペデストリアンデッキとおなじレベルに設けられる。反面、ペデストリアンデッキに覆われた地平階は地下のようになる。
ペデストリアンデッキは道路を横断するという機能で見れば横断歩道橋の一種と見なせるが、景観に合わせた意匠の配慮や都市計画上あらかじめ上下方向の連絡を織り込んでいることを考えると、道路交通における人道、車道の分離のみを前提とした横断歩道橋とは意味合いが異なる。隣接する建物に直接出入りできるようになっている場合が多く、この点では機能的に地下街に似ている。
日本の例
日本で初めて作られたペデストリアンデッキは、千葉県柏市の柏駅東口である。1973年に柏そごう(現:そごう柏店)開店と同時期に初の試みとして作られた。柏駅東口ではペデストリアンデッキのことを「ダブルデッキ」と呼んでいる(西口のものはペデストリアンデッキと呼んでいる)。2008年現在、柏駅東口のペデストリアンデッキは老朽化が進んでいるため、市が約11億円をかけ改修工事を行っており、2012年頃に完成する見込みである。
日本で最も規模の大きいペデストリアンデッキは仙台市の仙台駅西口のものであるテンプレート:要出典。東北新幹線開業前の1977年12月に完成し、その後、部分的に延長されてきた。デッキ上には樹木が植えられ、また駅前に立地する大型店と連結している。また、エレベーターが諸所で地上や、地下の仙台駅東西地下自由通路や地下鉄仙台駅のコンコースに繋がっており、多くの人で賑わうため、実質一階として扱われている[1]。ペデストリアンデッキの階段にはロードヒーティングが設置されているので、雪が降っても積もらずに融ける。
九州新幹線鹿児島ルートの全通開業に並行した博多駅・博多口側ビルの再開発(JR博多シティ)に伴い、同駅ビル2階部分に、博多バスターミナルと結ぶペデストリアンデッキを設置。また、大博通りに面する博多新三井ビル付近の歩道までデッキを延伸する計画となっており、2012年12月20日に開通した[2][3]。
横浜市の「はまみらいウォーク」は川を渡る橋であるが、横浜市による計画ではペデストリアンデッキとして構想された[4]。