RER
RER(エール・ウ・エール)は、Réseau express régionalの略語であり、日本語では「地域急行鉄道網」と訳される、フランス語圏の公共鉄道網、及びその概念。大都市とその近郊を結ぶ路線で、フランスではパリとその近郊を結ぶイル=ド=フランス地域圏に存在し、他にリヨン近郊にも整備予定がある。ベルギーではブリュッセルで建設中である。スイスではいくつかの都市で同名の鉄道網が運用されている。
概念
郊外の既存、あるいは新設の鉄道路線を、市街地中心部の地下を通るトンネルによって繋ぎ、列車を直通させる形の都市型公共交通機関を指す、フランスで使用される概念である。 在来の郊外型鉄道との直通乗り入れ、それに伴う乗り入れ先の(大型の)地上線の車輌規格の採用などは、日本の地下鉄でなされている相互直通に同様のものを見ることができる。 しかし、短区間のサービスを並行するメトロが担当することにしたため、都心部に設置する駅の数を減らし高速運行を可能としていることが特徴である[1]。
RERに対比されるメトロは、路面の鉄道の立体化を意図して作られたため、短い駅間隔、市内のみの路線、急曲線区間の多さやそれに伴う小型車輌の使用などの点で、対照的である。
ドイツやスイスのSバーンはRERに類似したところがあり、特にスイスでは、ドイツ語でS-Bahnと呼ばれる路線がフランス語でRERと表記される場合がある。パリ以外では、現在計画中の段階ではあるが、ベルギーのブリュッセルへの導入が予定されている(後述)。
フランス
- RER (イル=ド=フランス) (詳細は当該項目参照)
- RER(リヨン近郊)
- 整備予定。現行では地域圏急行輸送TERローヌ=アルプ地域圏として運用されており、非接触型ICカードOùRA(ウラー)[2]の料金体系が整備されている。
ベルギー
ベルギーの首都ブリュッセルに、2012年を目標に、RERの導入計画がある。これは、1998年から10ヶ年計画で実施されているSTAR21と呼ばれる計画で、8系統のRERを新設するものである[3]。2000年時点で22億ユーロが投じられた。1991年当時のブリュッセル首都圏における朝通勤時間帯の鉄道シェアは30%(14万人)に過ぎないが、これを50%に引き上げることを目標としている。ブリュッセル郊外を基点としてナミュール、シャルルロワへの新線建設、都心での3線化、2階建て車両の投入が計画されている。スカルベークに高速列車、RER、空港連絡列車が乗り入れるターミナル駅を建設する予定もある。ブリュッセル空港駅から既存路線同士を結ぶトンネルの短絡線も計画されており、これが完成するとEU本部付近に駅が開設され空港から直通列車が乗り入れる[4]。
スイス
スイスではドイツ語圏のSバーンをフランス語圏でRERと呼ぶ。これらの路線はスイス国鉄を中心に、いくつかの他社路線と共同運行されている。
- Sバーンの名称を持つもの(ドイツ語圏)
- RERの名称を持つもの(フランス語圏)
ジュネーヴのRER
ジュネーヴのRERはRhône Express Regional(ローヌ地域圏急行鉄道)の略とされる。都市部をまたいで郊外から郊外を結ぶ路線ではないため、厳密にはRERおよびSバーンの概念に当てはまるものではないが、ジュネーヴの中央駅であるコルナヴァン駅を起点として以下の路線が近郊圏(隣国のフランスも含む)を結んでいる。またヴォー州州境やフランス国境をまたがずにジュネーヴ州内[5]を移動する場合は、RERもバスやトラムと同じ市内交通の切符で乗車できる。フランスにまたがる路線はフランス国鉄SNCFの地域圏急行輸送TERローヌ=アルプ地域圏のネットワークにも含まれ、上述の非接触型ICカードOùRAも使用可能である。
- ジュネーヴ・コルナヴァン - ラ・プレーヌ - ベルガルド=シュル=ヴァルスリーヌ(フランス、アン県)
- ジュネーヴ・コルナヴァン - ヴェルソワ - コッペ(ヴォー州)
- ジュネーヴ・コルナヴァン - ジュネーヴ空港
- ジュネーヴ発着の長距離列車も、その多くがコルナヴァン駅をまたいでジュネーヴ空港まで乗り入れて発着している。長距離列車も空港〜コルナヴァン駅間の移動は市内切符で乗車できる。
- ジュネーヴ貨物駅の一部を旅客用に開放した簡易停車所。1駅しか無く、ランシー到着後に操車場へ退避するため、車庫行きの性格の強い路線だが、拡張が予定されている。以下参照。
2012年より、それまでフランス国鉄の管轄であったターミナル駅のジュネーヴ・オーヴィーヴ駅(ターミナルとはいえ単線路線で規模は小さかった)と、国境を挟んだ隣町であるフランスのアンヌマッスを結ぶ路線を拡張する工事が着工しており、2018年竣工予定である。ランシー・ポン・ルージュからの路線を地下トンネルや掘割などでオーヴィーヴに連結し、コルナヴァン駅発着のRER路線として整備する。完成後はスイス国鉄とフランス国鉄の共同運行となり、従来の単線区間は複線化する。オーヴィーヴ駅および途中駅のシェーヌブール駅は19世紀からの駅舎をそのまま利用しながら、地下に新規の駅構造を拡張する。シェーヌブールの駅舎はこの工事に伴い30mほどの距離を工事用レールで移動して移築した。この他にジュネーヴ大学シャンペル病院前とカルージュに新駅が建設される。この工事はCEVA計画(コルナヴァンCornavin、オーヴィーヴEaux-Vives、アンヌマッスAnnemasseのそれぞれの頭文字を取った名称)と呼ばれている。フランス国鉄は2013年3月までシェーヌブールとアンヌマッス間の部分運行を行っていたが、4月以降は運休しシェーヌブール区間が工事に入った。これによりフランス側の途中駅アンビイー(盛り土だけの簡易停車所)は廃止された[6]。工事期間中は、地域圏の短距離バス[7]およびフランス国鉄が鉄道の代行として運用しているTERの長距離バス[8]が代行運転している。この路線開通により、ジュネーヴ - アンヌマッス間を経由して、スイス側はヴォー州のコッペやニヨン、フランス側はアヌシーやエヴィアン=レ=バンなどを結ぶ「RERフランコ・ヴァルド・ジュネヴォワ」(フランス、ヴォー州、ジュネーヴ州の意味)の計画が予定されている。
フランスのTERのうち、アン県はベルガルド=シュル=ヴァルスリーヌからジュネーヴを経由せず、つまりスイス国境をまたがずフランス国内で、ジェクス経由フェルネイ=ヴォルテールおよびディヴォンヌ=レ=バンを結ぶ鉄道路線(fr:Ligne de Collonges - Fort-l'Écluse à Divonne-les-Bains (frontière))があるが、これは1997年に鉄道運行が休止され、現在はTERのバスで代行運転している。これらの基礎自治体は実質的に国境を跨いでジュネーヴ都市圏を形成し、ジュネーヴに通勤するフランス側住民のベッドタウンとなっている。このうちジュネーヴ市内からジュネーヴ空港のすぐ裏手の国境を挟んだフェルネイ=ヴォルテールを経由してジェクスに向かう路線はジュネーヴ州立交通局TPG管轄のバスが走っている。またTERバス途中駅のサン=ジェニ=プイイにもTPGのバスが乗り入れている。ディヴォンヌ=レ=バンにはジュネーヴからのTPG深夜バスが走っているほか、コッペからニヨン市管轄TPNのバスも走っており、RER、TER、TPG、TPNが合わさってスイス・フランス国境地域一帯を結ぶネットワークを形成している。ニヨンからその近郊のエイサンまではヴォー州RERの管轄である貨物主体の短い鉄道路線が走っているが、かつてこの路線は1962年までは国境スイス側のクラシエを経由してディヴォンヌ=レ=バンまで通じていた。このため、ベルガルド、ディヴォンヌ、ニヨンを結ぶ鉄道路線を再開通し「RERフランコ・ヴァルド・ジュネヴォワ」計画に組み込むための「ジェクスレール」協会が2009年に設立された。[9]