プロ市民
テンプレート:複数の問題 プロ市民(プロしみん)とは、以下のような造語である。
- 「自覚・責任感を持つ市民」(=プロ意識を持つ市民)を意味する造語。
- 一般市民を装い市民活動と称しているが、実質的には営利目的または別の目的を持つ政治活動家を指し、その行為を批判する際に用いられる2ちゃんねる用語。
発生
本来の意味
「自覚・責任感を持つ市民」としての「プロ市民」は、佐賀県鹿島市長の桑原允彦が考え出した造語であるとされ、鹿島市の総合計画にも見受けられる[1]。政治にもっと関心を持とう、地域密着型の活動を通しプロ意識を持って政治や地域活動に参加する市民になろうという運動や人々を指す言葉であったとされているが、ネガティブな使われ方としての「プロ○○(○○の部分には職業等の名前が入る)」という造語が使われることはこれ以前からも度々あったので、さほど特殊な用語ではなかった(総会屋の別名である「プロ株主」がその好例)。
この「プロ市民」は、以下で記述されている「プロ市民」との意味合い及び関係性は一切無い。
変質
2ちゃんねる用語としては、「左翼活動家の隠れ蓑」あるいは「市民活動で利権を得る者たち」を意味するレッテルとしての「プロ市民」がある[2]。つまり「アマチュアのふりをしたプロによる偽の市民活動」というような意味合いである。この言葉は2001年8月に匿名掲示板2ちゃんねるのマスコミ板に立てられた「市民団体にふさわしい名前を…」というスレッドにて誕生したとされるが、異説もあるテンプレート:要出典。また、こちらの「プロ」はプロフェッショナルの他にプロレタリアート、プロパガンダもかけているとの説もある。テンプレート:要出典
また漫画家の小林よしのりは、『新・ゴーマニズム宣言』において「プロ市民」という言葉を用いている。これは、彼が大きく関わった薬害エイズ裁判において、“原告支援団体が次第に労働組合や、日本民主青年同盟(民青)などの左派組織に乗っ取られ[3]、結果団体から追い出された挙句にバッシングまでされたためである”と主張している。この経緯については、『新・ゴーマニズム宣言スペシャル 脱正義論』に詳しい。その後、慰安婦問題などでの左翼活動家たちの暗躍を目の当たりにした小林は、「プロ市民」という言葉を多く用いるようになったテンプレート:要出典。
ジャーナリストの清谷信一は「プロ市民団体」と「普通の市民団体」をメディアはしっかりと分けて伝えるべきだとし、また「右翼団体」の抗議の場合は「右翼団体」として報道されるのに対し、「プロ市民団体」「左翼団体」は単に「市民団体」と報道される矛盾を指摘している[4][5]。
以下ではこの意味でのプロ市民について記載する。
捉えられ方
市民活動とは、政治についての知識をある程度身に着けている者、若しくは初心者が、問題意識を持って政治などについて議論や集会などの活動を行うものであるが、プロ市民という際、その活動者の活動を「特定グループに属する市民・党派や、特定のプロパガンダ、外国勢力などのために利益誘導の活動を行っているのであろう」とみなした者が否定的文脈において用いている。この「プロ市民」は、プロ株主の持つ意味合いに近い。
「特定グループに属する市民・党派や、特定のプロパガンダ、外国勢力などのために利益誘導の活動を行っている者」と捉えられる限りにおいて、職業的アジテーターや工作員のほか、職業として市民活動と関わる弁護士(特に人権派と呼ばれる弁護士)・政治家・学者であってもプロ市民とされることがある。なお、欧米諸国によく見られるように、政府の政権交代の度に政府上級官僚とNGOあるいはNPO幹部との間で大規模に人的流動が起きる社会では、社会のエリート層として受け止められている市民セクタのプロフェッショナルという階層が存在する。彼らは自らの主義主張と合致しない政権の時期にはNGO、NPOの幹部、専門性の高い部署の活動家として活動し、主義主張の合致する政権が成立すると、政府の上級官僚として迎え入れられて政府スタッフとして活動するテンプレート:要出典。また、政策立案・政策提言を行うシンクタンクもまた、こういった層による非営利団体により運営されている。
しかし日本でいうプロ市民は、市民セクタのプロフェッショナルとしての活動をしているものではなく、政治活動目的あるいは新聞の紙面づくりのために活動しているものを指す。日本社会でこのような階層が成立せず、社会の非主流的異端者として揶揄される「プロ市民」概念が生じた背景には、近代社会の成熟の過程で官僚社会の閉鎖性が高まったこと、また第二次世界大戦後の政治・思想・言論の分野で戦勝者であり占領政策を通じて日本社会に強い影響を及ぼしたアメリカ合衆国の存在、東西両陣営の国際的対立、第三世界の錯綜した関係性の中で、複雑なねじれ現象(例えば反米ナショナリズムの要素の強い左翼に、近代国民国家的中央集権主義の要素を抱えた保守といった)をはらむ「保革対立」の構図が演出されていった歴史が深く影を落としている。一種の政治的アマチュアリズムと見ることもできる。
捉えられ方の問題
- ある活動を一部の市民・党派などのためではなく市民全体のためになると考える立場からは、活動を「偽の市民活動」と言われたに等しいことから、蔑称と捉えられる。
- 全市民のためになると考えられるような本来の意味での市民活動を行う者も混同してプロ市民と呼称される場合もあり、このような活動に関わる弁護士・政治家・学者もプロ市民と呼ばれるのは問題視される。
- 「プロ市民=左翼」というイメージがあるテンプレート:要出典が、業界団体、宗教団体、保守団体と称する右翼団体が資金面や人材面で支援する市民団体も多く、集会の開催、抗議電話や抗議メールや抗議デモを煽っている点など、手法としてはよく似通っている。
- そもそも政治団体に所属することや、デモや集会は民主政治のバロメーターであり、これらの者による不適切行動によるマイナスイメージを持つことは、個人の政治活動を衰退させることとなりかねない。要するに、一部の市民活動の名を騙り悪用する行為を行う事で、本来の市民活動を行っている市民の活動を阻害する恐れがあると言う批判もある。
- 市民活動とは無縁の活動を行っている者を中傷せんが為に「プロ市民」とレッテル貼りがされる場合がある。
- 相手の言葉尻をとらえて、さながら総会屋のごとく執拗に謝罪や賠償を要求するスタイルが嫌われた面もある。
以上のように、当初の定義から明らかに外れた目的でプロ市民と言う言葉を使用する者が増えたため、当初よりもさらに侮蔑の意味が含まれるようになっている。
左翼側は、在特会などの行動する保守を「プロ市民」であるとしている[6]。現に、在特会の正式名称は「在日特権を許さない市民の会」であり、自らを「市民団体」と規定している。
活動実態
- 市民活動(少なくともその一部)に対して懐疑的な立場の者は、発祥とされる2ちゃんねる外でも使用している。ネット上での使用例は多くあり、議員が運営するウェブサイトでも使用例が見受けられる。
- 『週刊新潮』(2007年3月15日号)に、2007年東京都知事選挙候補であった浅野史郎の支援団体(浅野史郎さんのハートに火をつける会)を「プロ市民」と評する記事が掲載された。
- 2005年、東京都杉並区で『新しい歴史教科書』採択にあたり、反対派市民団体による抗議行動が行われたが、警察庁は2005年の「治安の回顧と展望」において中核派が「『つくる会の教科書採択に反対する杉並親の会』と共闘して、市民運動を装いながら、杉並区役所の包囲行動、同区教育委員会への抗議・申し入れ、傍聴等に取り組んだ」と伝えた。また公安調査庁の「内外情勢の回顧と展望」では、この抗議活動に中核派が教職員組合などに対し、共同行動を呼びかけたものとしている。この抗議活動を見た清谷信一は、大型のラウドスピーカーや演説内容を用意周到に集まった彼らはまさに「プロ」であったと語っている[4]。
脚注
参考文献
関連項目
- 政治活動家
- 市民団体
- 市民活動家
- 2ちゃんねる
- 人権屋
- アマチュアリズム
- ネット右翼
- 行動する保守
- ノイジー・マイノリティ
- アストロターフィング(人工芝運動) - ティーパーティー運動
- イラク人質事件
- 反原発運動
- デモ
- シュプレヒコール
- 特定非営利活動法人
- ジャーナリスト
- 市民ジャーナリズム