ヴァンダリズム
ヴァンダリズム (vandalism) とは、芸術品・公共物・私有財産を含む、美しいものや尊ぶべきものを、破壊もしくは汚染する行為のこと[1]。器物損壊や美しい外観や景観を損なわす行為(景観破壊)、落書き、見苦しく愚かな建造物を建てる行為を含む。通常、器物損壊や迷惑行為として取り締まりの対象となる。平たく言えば文化破壊運動(ぶんかはかいうんどう)である。
目次
語源
西ローマ帝国を侵略し、ローマ市を略奪したゲルマン系のヴァンダル族にちなんで名づけられた。北アフリカに侵入してヴァンダル王国を築いたヴァンダル族は、455年にガイセリック王に率いられてイタリアに上陸、ローマを破壊した。
ルネサンスから啓蒙主義の時代にかけてローマは理想化されたが、そのローマを破壊したヴァンダル族やゴート族は文明に対する破壊者として負のイメージを持たされるようになった。英国の詩人ジョン・ドライデンは1694年にヴァンダルやゴートによる破壊を描いた『Till Goths, and Vandals, a rude Northern race, Did all the matchless Monuments deface』を書いている。
「ヴァンダリズム」という語は、1794年に、ブロワの司祭アンリ・グレゴワール(Henri Grégoire)が初めて使用した。フランス革命に続く恐怖政治の時代に多数の宗教芸術や建築物が破壊されたが、これをグレゴワールはヴァンダル族の野蛮な破壊になぞらえて「ヴァンダリズム」と呼び、芸術や建築の保護を訴えた。この用語はヨーロッパに広がった一方で、ヴァンダル族が破壊を好む野蛮な集団であるというイメージを増幅させることになった。
歴史遺産破壊運動
歴史上のヴァンダリズムで代表的な例が、城郭や神殿などの歴史遺産を破壊する運動である。この種のヴァンダリズムとしては、明治政府による神仏分離令を発端とした廃仏毀釈、紅衛兵の文化大革命による宗教施設の破壊運動、ターリバーンによるバーミヤン石仏の爆破が代表的である。
又、フランス革命や廃仏毀釈のように、歴史遺産破壊運動は、新政府が旧政府を倒した時に発生する例も少なくない。
落書き
最も頻繁に発生するヴァンダリズムは、記念碑や建築物の壁、鉄道車両などにペンキをかけたり落書きを行う行為である。公園の施設を破壊する行為も少なくない。
ヴァンダリズムは深刻な社会問題となっている。落書きや破壊行為の標的となるのは公共物(自動車道の橋脚やフェンス、堤防)、空き家、廃店舗、廃施設の壁やシャッターなどで、こういった落書きの蔓延は自治体、地域の風紀、治安の乱れを象徴するものと見なされることが多く、美化のために落書きの消磨に税金を投入することもある。
2008年6月、大阪ミナミのアメリカ村などで(2007年ごろ)落書きをして回っていた男に有罪判決が下った。また、やはり同じ月に、オーストラリアのグラフィティ集団がヴァンダリズムを目的として日本入国を図ったところを、東京入国管理局が阻止する事態があった。
2008年9月 - 10月に日本全国で電車に落書きをして回っていたスロバキアの美術家とハンガリーの大学生は器物破損容疑で送検された。被害にあった東急電鉄は損害賠償請求の検討を始めている(2008年11月現在において)[2]。
注
関連項目
テンプレート:Columnsテンプレート:Crime-stub- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 朝日新聞2008年11月29日社会面