財産権
財産権(ざいさんけん、テンプレート:Lang-en-short)は、財産に関する権利の総称。
目次
意義
財産権には、物権、債権、社員権及び無体財産権(知的財産権)が含まれており、財産権に関する私法の一分野を財産法という。財産法は、現行民法典でも一大分野を形成している。私法上の観点については各項目を参照のこと。
財産権の保障
日本国憲法上、経済的自由権の一つとして保障されている(日本国憲法第29条第1項)。財産権の保障には、個人が現に有する財産の保障(具体的保障)と、私有財産制の保障(制度的保障)の二面性がある。憲法29条第2項で「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める」と規定していることから、第1項は単に法律で認められる財産権の不可侵を定めたものにすぎないとする見解もあるが、多くの見解は私有財産制を制度的に保障したものであるとみる。
財産権の制限
公共の福祉による制限
日本国憲法第29条第1項により不可侵性が保障されるが、公共の福祉により制限されうるとする(第29条第2項)。
- 規制の種類
- 内在的規制:他者の生命・財産を守る消極目的による当然に受忍されるべき規制
- 政策的規制:社会政策・経済政策上の積極目的による規制
- 判例
- 敗戦による在外資産接収は、憲法29条3項の適用対象外とする。
条例による制限
第29条2項は法律による制限を定めるが、条例による制限は有効か。判例は有効であるとし(奈良県ため池条例事件、最高裁判所 昭和38年6月26日大法廷判決)、この問題はほぼ決着済である。
補償の要否
損失補償は、特別の犠牲がある場合に認められるとされる。特別の犠牲とは、財産権における制約(公共の福祉のためのものなど)を超えて、特定の個人に財産権の侵害を加える場合をいう。特別の犠牲は諸々の要素を客観的・合理的に判断して決められる。
29条3項による直接補償の請求
法律が財産権を制限する場合、損失補償規定を欠いた法律はいかなる効果を持つか。
- プログラム規定説 - 憲法29条3項には規範的効力がないので有効(損失補償の請求はできない)。
- 違憲無効説 - その法律は憲法29条3項に照らし、違憲無効である(この場合、国家賠償法により賠償請求することになる)。
- 直接請求権発生説 - 規定がない場合は憲法29条3項に基づいて直接補償請求をすることができる。
現在の判例・通説は直接請求権発生説である(最高裁判所昭和43年11月27日大法廷判決)
正当な補償
憲法29条3項に言う「正当な補償」とはどのような補償か。これについては、2つの学説が対立している。
- 完全補償説 財産権の侵害には必ず完全な補償を要する。
- 相当補償説 補償は「合理的に算出された相当な額」で足りるとする。
判例は相当補償説に立つ(最高裁判所昭和28年12月23日大法廷判決)が、通常の土地収用法における土地収用の場合は完全補償を原則とする(最高裁判例 昭和48年10月18日)ため、学説の対立は、相当補償説が完全な額を要しないとする社会改革立法(例として、農地改革、経済の社会主義化など)はいかなる場合であるかという点になる。