悪霊
テンプレート:国際化 悪霊(あくりょう、あくれい)とは、悪しき霊。ただし、宗教によって異なる。
キリスト教
聖書には、イエス・キリストが悪霊を追い出し、やまいをいやし、また弟子たちに悪霊を追い出す権威を授けたと書かれてある。教父のテルトゥリアヌス、アウグスティヌスは、異教の神々は堕落した御使いである悪霊だと説明している[1]。カトリック教会には、エクソシスム、エクソシストがあり、プロテスタントでは悪霊追い出しと呼ばれる。サタンと悪霊は堕落した御使いという共通点があるが、サタンと悪霊は区別されている。この場合サタンは堕落した御使いの階級的頂点にある存在であり、悪霊はその手下を指している[2]。ウェストミンスター信仰基準は全人類の始祖がサタンの悪巧みと誘惑にそそのかされて罪を犯し[3]、堕落したために、人間は生まれながらにして怒りの子、サタンの奴隷であると告白する[4][5]。福音派はノンクリスチャンがすべて悪魔の支配下にあり、宣教の働きは彼らを悪魔の支配下から神の支配下に移すことであると定義する[6][7][8]。
比較宗教学
たたりをする死霊[9]を指す宗教もある。悪霊は、祟りや呪いによってわざわい(病気、不運など)の原因となると考えられているものである。
英語の「evil spirit」、ドイツ語の「böser Geist」など、あるいは悪魔、(善神に対立する)悪神などにあたる概念が「悪霊」と翻訳される。
呪術師、祈祷師などに、悪霊ばらい、禊(みそぎ)、祓い(はらい)を依頼するという習慣やしきたりは、東南アジア、インド、スリランカ、日本などのアジア、あるいはアフリカ、中南米など、世界各地に見られる。
キリスト教圏においても、植民地であった地域では、しばしば見られる。たとえば南米各地のインディオの風俗習慣の強く残る地域や、フィリピンなどにおいては、カトリックは各地域に古くからあった信仰(民間信仰)と習合している場合も多く、キリスト教の悪魔ではなく、その地域の信仰の悪霊がとり憑いたとされるときは、人々によってその伝統にそった儀式が行われている。
エホバの証人では、悪霊(あくれい)とは、神に反逆したみ使いで、悪魔サタンとともにエホバの崇拝に反対する霊者である。
出典
- ↑ 『神の国』
- ↑ ビリー・グラハム『天使』いのちのことば社
- ↑ ウェストミンスター信仰告白第6章「人間の堕落と罪、およびその罰について」
- ↑ ウェストミンスター小教理問答問い27
- ↑ 『ウェストミンスター信仰基準』新教出版社
- ↑ 『キリスト者の戦い』
- ↑ 『新聖書辞典』
- ↑ 尾山令仁『ローマ教会への手紙』羊群社
- ↑ 『広辞苑 第四版』『広辞苑 第五版』
参考文献
- 『神の国』アウグスティヌス
- 『組織神学』ヘンリー・シーセン 聖書図書刊行会
- 『宣教のめざす道-エキュメニカルと福音派の間-』ピーター・バイヤーハウス いのちのことば社
- 『キリスト者の戦い』マーティン・ロイドジョンズ いのちのことば社 ISBN 9784264005735
- 『悪霊を追い出せ!-福音派の危機を克服するために』奥山実 マルコーシュ・パブリケーション ISBN 4872071115
- 『聖書にみる霊の戦い』尾形守 マルコーシュ・パブリケーション社 2003年 ISBN 4938764741
- 『ニューエイジムーブメントの危険』尾形守 プレイズ出版 ISBN 4938764148
- 『異端見分けハンドブック』尾形守 プレイズ出版 1998年 ISBN 4938764342
- 『今日の宗教ブームと悪霊の働き』尾形守 いのちのことば社
- 『霊的戦いと教会の問題解決力』滝元順 地引網出版 ISBN 9784901634168
- 『霊の戦いの祈り』ピーター・ワグナー著 マルコーシュ・パブリケーション ISBN 9784872071122
- 『地域を支配する霊』ピーター・ワグナー編 マルコーシュ・パブリケーション ISBN 978-4872071146
- 『神の権威』前編、後編チャールズ・クラフト プレイズ出版ISBN 978-4-93876445-6,ISBN 978-4-93876446-3
- 『霊の戦い-その聖書的・包括的理解に関するナイロビ声明-』関西ミッション・リサーチ・センター
- 『新聖書辞典』いのちのことば社
- 小松和彦著『悪霊論 ― 異界からのメッセージ』筑摩書房[ちくま学芸文庫]。ISBN 4480083332