エミュー
エミュー(鴯鶓、学名:Dromaius novaehollandiae)は、平胸類(ダチョウ目)の鳥の一種。
オーストラリア全域の草原や砂地などの拓けた土地に分布している。周辺海域の島嶼部にも同種ないし近縁種が生息していたが、現生種の1種のみを除いて絶滅したとみられている。
形態
体高は約1.6m-2.0m程度、体重は40kg-60kg程度。鳥類の中ではダチョウに次いで高いが、体重はヒクイドリに及ばない。見た目はダチョウに似るが、ややがっしりした体躯で、頸から頭部に掛けても比較的長い羽毛が生えている。また、趾(あしゆび)は3本であり、先に丈夫な爪を備えている。幼鳥の羽毛には縞模様があるが、成長すると縞が消える。成鳥はオス、メスいずれも同様に全身の羽毛が灰褐色になるが、所々に色が剥げたり濃くなったりしている箇所があり、泥で汚れているかのように見える。エミューの羽は、鳥類では唯一2本が1対である特徴を持っている。
性格はヒトに対しては温厚であるが、雷・金属音・子供の甲高い声などに反応し走り回ることがある。犬などの動物に対しては警戒心が強く、場合によっては蹴りで相手を攻撃する。蹴りは、前方90度の範囲程度であれば容易に繰り出す。また、繁殖時期なると多少警戒心が強くなる。性別でみると、オスの方が比較的おとなしい。
鳴き声はオスとメスで違い、オスは「ヴゥー」と低い鳴き声を出し、メスは「ボン……ボボン」とドラムのような鳴き声を出す。メスの鳴き声は繁殖時期が近づく頃がもっとも盛んになる。
翼は体格に比してきわめて小さく、深い羽毛に埋もれているために外からはほとんど視認できない。ダチョウ、ヒクイドリ、レアなどと比べると、最も退化した形であり、長さは約20cm。先端には1本の爪が付いている。
卵はアボカドのような深緑色で、長さは10cm程度、重さは約550gから600g。産卵期は日照時間の短くなる11月から4月の期間(南半球では、5月から10月あたり)で、3日から5日の間隔で一度に1個ずつ産卵する。産卵数は、期間中に10-30個程度であるが、稀に40個以上産卵する個体もある。抱卵は10個程度の産卵後にオスが約2ヶ月間飲まず食わずで行う。孵化後2-3ヶ月間はオスが雛を外敵などから守るが、飼育下ではメスも参加することもある。
生態
食性は雑食性で、主に昆虫、果実、種子、下草などを餌にする。砂漠化しつつあるような土地でも生息可能で、繁殖力も強く基本的には丈夫な鳥であるが、この食性により、農地を荒らす害鳥として駆除の対象となったため、ダチョウ目の他の種と同様、頭数が激減している。
飼育
丈夫で飼いやすいためか飼育している動物園は多く、人に慣れやすく危険性も低いことから、入園者が直接触れられるようにしているところもある。
また、国内では1996年より、北海道下川町一の橋地区に個人により導入され、国内初の畜産を軸とした飼育が始まった。北海道下川地域には、同氏により1995年に試験的飼育が展開され、アメリカ・モンタナ州より生後6ヶ月のオス・メスのペアーが導入された。そのエミューペアーは現在13歳8ヶ月(2009年1月現在)であるが、繁殖を続けている。 1998年より国内での人工孵化および自然孵化に成功し、それ以降は純国産エミューの出荷も開始している。 近年では国内で広く飼育されている。
利用
- 肉は赤肉で美味とされる。皮下脂肪は動物油の中でも抜群に優れており、原産国オーストラリアの先住民アボリジニがブッシュ・タッカーとして長く愛用し続けている。
- ダチョウより攻撃性が低いことより、メガソーラーの雑草対策として飼育された事例もある[2]。
Sibley分類体系上の位置
Clements鳥類分類
出典
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ メガソーラーを救う草食動物たち 雑草モグモグ…発電量維持と経費削減に貢献 産経新聞 2013年10月20日(日)9時6分配信
関連項目
- エミュー戦争 - 西オーストラリア州で1932年に行われた野生動物管理作戦。テンプレート:Link GA